だから、探すなって。

乙女恋愛ADV。人気作品のDS版です。タイトルの通り、大人気の新撰組面々と恋に落ちようぜというゲームです。当然、攻略対象は近藤勇、土方歳三、沖田総司、藤堂平助、斎藤一、山南敬助、山崎蒸、永倉新八、原田左之助、あとは才谷梅太郎という人物も合わせて総勢11名と何とも豪華。新撰組のイケメンと共に戦いながら恋に落ちる疑似体験にはもってこいです。主人公は女性隊士として壬生浪士組に参加することに……というところから物語はスタートします。

金髪の近藤勇に銀髪の沖田総司、そして山崎蒸がまさかのオカマという衝撃のキャラデザにドン退きしてしまった方も多いかと思いますが、シナリオは史実に沿ったまともなものでした。
「新撰組？　近藤勇と沖田総司と、あと誰だっけ」的なお嬢さんをターゲットにしたであろう今作のスタッフが、いかに新規顧客のハートを掴むべきかと頭を悩ませたのだろうと思うと、ぽんと肩の一つでも叩いてあげたくなるもの。乙女ゲームで「新撰組？歴史モノか〜何か難しそう」と思われたらおしまいなのです。銀髪イケメンの沖田総司（＆石田ボイス）なんてありえねえことはみんな分かっています。
だから明らかにワックスで毎朝スタイリングしてますよね？みたいなイケメンのお兄ちゃん相手に「さすがは侍」とか主人公が感心していても突っ込まずに生温くスルーしてあげるのが優しさというものなのです。分かっていてそれでも敢えてそうせざるを得なかったという大人の事情なんて……そろそろどうでもよくなってきましたね。中身の感想に入ります。

結果的にその試みは見事に成功したといえます。つまり、面白かったのです。
問題のキャラデザはシナリオを進めていけばそのうち気にならなくなります。そういうものだと割り切って楽しんでしまうが勝ちです。主人公が女性隊士として加入する下りも、一応シナリオ内でそれなりにつじつまを合わせてくれています。会津公の義理の姉という後ろ盾を持つ主人公が剣の道で身を立てたいと願い、結果的にまだまだ肩身が狭かった壬生浪士組が会津藩のエライ人の頼みを断れるはずもなく、「まあそのうち辞めるだろう」と主人公を迎え入れることになるという流れです。多少の無理矢理設定はご愛嬌。
ここで、山崎をオカマにした理由に納得がいきました。つまりもう新撰組内に「男だか女だかよくわかんないけど仲間」である山崎がいるからこそ、新撰組の男どもは「女なんだけど男の成りをしててそれなりに剣の腕も立つ」主人公を「まあ、何かもうどっちでもいいか」と迎え入れやすくなる土壌が整っていたわけです。

主人公はキャラが立ちすぎて鼻につくこともなく、かといって流され系というわけでもなく、ちょうど良いバランスでした。無個性主人公というと聞こえは悪いですが、主人公に主義主張が強くあるわけではないのでユーザーが共感しやすい可愛い子です。欲を言えば、主人公の髪型はもっと凛々しい感じが好みでした。

さてシナリオですが、キャラの口調が「マジで〜」など若干違和感を誘うところはあるものの、その甲斐あって読みやすいです。辞書機能など専門用語や歴史に疎いユーザーに配慮した作りも好印象。
ただ、それでもやっぱりいまひとつ分かりづらい……。自分が歴史にそれほど明るくないので、幕間に難しげな説明が来るとついつい読み流してしまうからかもしれませんが。
始めから新撰組について知識がある方なら問題なく楽しめると思います。

基本的に史実に忠実なので後半に進むにつれ仲間がバタバタと死んでいきます。そのあっけなさがまた何とも言えず無常感を誘うという……。新撰組がキラリと光る流れ星のような存在だったことを切々と感じることができます。だからこそ今でも人の心を引き付けてやまないのでしょうね。
史実通りだからこそ、「え、ここで！？」という唐突な場面でまさかのエンディングを迎えることもあり、それがまた良い。まあ、乙女ゲームなのでエンディングでご都合展開が発生することもありますが、何もかも史実のまま進めたらやりきれないだろうという配慮なのだと思います。実際、ご都合展開に心情的には救われました。乙女ゲームやってんのに鬱になったらもう現実に帰ってこれなくなる気がします。ちなみに、ご都合展開が発生しないキャラもいます。

キャラごとに重要イベントが違うので、例えばかの有名な池田屋事件を説明だけですっ飛ばしたりすることもあり。まあ、壬生浪士組〜新撰組の終焉まで全てを追っていくので、全部のイベントが発生していたらいつまで経っても終わらないので仕方がありません。個人的にはプレイしやすかったです。

これをきっかけに新撰組に興味を持ってみるのはいかがでしょうか。ちなみに、偉そうに色々語っていますが自分も歴史にそれほど詳しいわけではないので、今作でかいつまんで説明してくれたおかげで色々と学べました。以下ネタバレキャラ別感想と追加イベント攻略。