紫影のソナーニル -What a beautiful memories-
- 2013.05.31 Friday
- 03:42
紫影のソナーニル -What a beautiful memories-
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Liar-Soft (2010-11-26)
ライアーソフトのスチームパンクシリーズ第五弾。男性向け18禁。
シリーズ作品ですが、単体でも楽しめます。
PSP化が決まったとのことで、じつにめでたい。
男性向けですがかなり少女漫画チックな雰囲気があり、
乙女ゲーユーザーさんにもぜひおすすめしたい作品です。
特に上の二人に惚れた方は体験版をプレイする価値あり。
主なモチーフは「不思議の国&鏡の国のアリス」「オズの魔法使い」、
そして「クトゥルフ神話」「はてしない物語」。
さて、本作は体験版である第一章をプレイした時点で
ある程度、真相のからくりが分かるように出来ています。
勘の鋭い人はすぐに分かるかと思いますが、
そもそも心理描写がメインなので謎解きは重要ではありません。
また、文体に相当癖がありますので、商業らしい平明達意な文章を
お望みの方は避けたほうが無難です。
詩的な文章でひたすら反復と体言止めが多く、助詞は行方不明になるし、
同じ描写を韻を踏んで何度も何度も繰り返すので
慣れないとうんざりするかもしれません。
この辺り、クインロゼの文体がいける人は問題ないと思うのでおすすめ。
あちらよりは、かなり詩的に洗練されている文章です。
展開も陰鬱なので、好き嫌いがかなり分かれる作品だと思いますが、
好きな人はすごく好きだと思います。
そもそもちょっと癖のあるゲームを好むユーザーしか
ライアーソフトには集まって来ないようなイメージがあります。
ライアーソフトは「Forest」しかプレイしていませんが、
あちらほど衒学的ではなくても、色々な知識を試されます。
また、演出面で「Forest」を意識しているような感じがしました。
ただ、文体はまどろっこしいものの、テーマや作品の主張は
かなりストレートで分かりやすいです。
モチーフにしている作品をひねっている様子もなく、
代表的な作品や有名人が多いので、考察はさほど難しくありません。
まあモチーフがどうこうとか考えずに素直に物語に身を任せたほうが
感動は大きいような気もします。
主人公は女性二人。
愁い顔で廃墟を進んでいくエリシア・ウェントワースと
戸惑いながら地下世界を歩むリリィ・ザ・ストレンジャー。
ストレンジャーはそのまま、<異邦人>を意味します。
トップ絵の女の子はリリィのほうです。
褐色のイケメンはリリィの傍に寄り添う車掌、A。
このトップ絵がツボに入った方は特におすすめ。
舞台は二十世紀初頭、蒸気文明の発達したニューヨーク。
五年前の大消失によってニューヨークに住んでいた300万の住人が
一夜にして消え失せ、ニューヨークは廃墟と化します。
エリシアは恋人の影を求め、立入禁止区域として閉鎖された
ニューヨークに多脚式歩行鞄と共に単身足を踏み入れ、
マンハッタンを目指します。
一方のリリィは記憶をすべて失くし、目覚めたら地下世界に。
何が何だか分からないものの、「紫影の塔を目指さなければ」という
衝動に突き動かされて、Aに導かれながら紫影の果てを目指します。
OPのイントロからサビにかけての疾走感が神ががってる。
以下ネタバレ感想。