絶対階級学園~Eden with roses and phantasm~
人間が社会的な生き物である以上、差別的感情からは決して逃れられません。
ときには健全な自尊心や自信ですら、差別的感情と結びつくと大きな悪影響を及ぼす。
恋愛の業や醜さも描いたとても興味深い作品で、大変楽しんでいます。
例えそんなつもりがなくても、立場を変えれば自分のなにげない発言が
差別的発言になることもある。
「自分は善良な精神をもっていて、絶対に間違えず、差別なんかしない」と
思ってる人がいたら、それはとても危険な考えです。
世の中の大抵の人間は自分に迷惑が及ばない限りはそこそこ善良なのに、
不都合が発生したり生理的嫌悪感を刺激されたりすると驚くほど残虐になります。
もちろん、自戒を込めています。
大体、今の日本でも、例えばコンビニの店員などはお弁当を買ったら「温めますか?」と
訊いてくれますよね。しかし、コンビニの店員さんは正直、私が弁当を温めようが
そのまま飢えて死のうが限りなくどうでもいいわけです。
コンビニの店員さんが質問をするのは、それが仕事であり、報酬を得ているから。
それは、この学園に通う生徒と、あまり変わりないのではないでしょうか。
生徒たちは階級に応じた振る舞いをすることで点数をもらい、
やがて「上の階級に昇格する」という報酬を得ています。
ゲームではわかりやすく極端な表現をしているものの、属性、役割、立場によって
相手を色眼鏡で見てしまうことは、どこにでも起こりうることだと考えます。
本当に人を自分と同等の権利立場をもつ人として敬意を払い、尊重できているのか。
いろいろと考えさせられました。
有名どころですし、ぶっちゃけオチにも関わってるんじゃないかと想像していますが
スタンフォード監獄実験や
ミルグラム実験があります。
「アイヒマンはじめ多くの戦争犯罪を実行したナチス戦犯たちは、そもそも特殊な人物であったのか。それとも家族の誕生日に花束を贈るような平凡な愛情を持つ普通の市民であっても、一定の条件下では、誰でもあのような残虐行為を犯すものなのか」
現在において差別的ではないとされている発言でも実は相手は傷ついていて、
しかし相手は自分たちが少数派であり、大多数の共感を得られないことを知っているから、
息を殺して沈黙を保っているだけであるのかもしれません。
もうひとつ思い出したのは、とある高校で起こった実話を
映画化した「ザ・ウェイブ」です。
THE WAVE ウェイヴ [DVD]
1969年、とある高校で行われた、“独裁制"をテーマとした授業。
教師は、やる気のない生徒たちに困った末、クラスを独裁国家に見立てた
心理実験のような授業を始める。
初めは誰もが嫌悪感を示すが、今まで経験したことのないクラスの一体感に魅せられていき…。といった内容です。
この映画の肝は、生徒の誰もが「独裁制」を嫌悪し、理屈ではダメだと分かっていたのに
気がつけばおもいっきり煽動されていたということでしょう。
人間は社会的な生き物である。よって環境に適応しようとする。
しかし、それにより環境によって容易に洗脳される。
人間はそもそも、意志が弱い生き物なのかもしれません。
前提として、被害者意識をもつあまり被害者意識をよすがにするのは健全ではありません。
しかし、我々にできることは、常に自問自答を繰り返しながら理性的に振る舞い、
例えどれほど嫌いでいけ好かない奴であろうとも、
相手が法を犯していなかったりこちらに危害を加えていなかったりする場合、
嫌いな属性を持つ人たちが自分の知らないところでも、
例え目の前にいたとしても、勝手に同等の権利を享受し、
勝手に幸福になることを許容せねばならないと
みずからに言い聞かせることぐらいなのです。
以下微妙に
ネタバレ。
※今のところ、七瀬十矢の薔薇/石ころ、加地壱波の薔薇ルート攻略済です。