蝶の毒 華の鎖

  • 2011.10.10 Monday
  • 23:17

18禁乙女、大正ロマンADV。アロマリエ入魂の三作目。
舞台は大正七年の帝都東京。野宮子爵家では一人娘である百合子のために誕生日パーティーを開催する。だがそれはあちこちから借財を重ねた上でようやく開催された宴だった。
由緒ある華族の野宮子爵家だったが財政危機に陥っており、一人娘の百合子が財力のある伴侶を得る必要がある。
この誕生日パーティーは百合子のお披露目会兼婚約者探しの意味があるのだが、百合子は園丁の真島にほのかな想いを寄せており、パーティーにはいまいち気乗りしないままだった――という感じでストーリーは始まります。

攻略対象は肉食系な成金、草食系お兄様、癒し系な園丁、無口系なハーフの執事、ツンデレ眼鏡幼馴染の五名。濡れ場はシナリオもシステムも気合が入っており、効果音のオンオフが設定できます。

シナリオ回想やCG回想、エンディングリストなど必要な機能もひと通り揃っていてシステム面は快適。
また、グラフィックも非常に美麗で、特にキャラクターの表情がいいです。
グラフィックからキャラの感情がダイレクトに伝わってきます。

シナリオ全体からそこはかとなく色気が立ち上り、耽美な雰囲気に包まれています。
時代設定に沿ったキャラクター設定がなされているのもポイント。
設定が活かされていて、キャラの生い立ち、顔立ち、口調、性格、性癖すべてにひもづけられている点が魅力的です。

例えば、華族であるお兄様はゆったりとした口調で喋りますが成金の実業家である斯波はせかせかと早口です。声とシナリオがうまい具合に相乗効果を生み出し、こういった些細な点がキャラクターをイキイキとさせています。
何気ない描写も丁寧で、選択肢にもセンスが光ります。大正ロマンの世界に思い切り浸れるはず。本作はハッピーエンドも用意されていますが、
主にバッドエンドでその真骨頂を発揮します。情念、という単語がこれほど似合う作品もそうないかと。フルボイスですが、主人公の声はありません。
ビターな乙女ゲーを味わってみたい、乙女ゲー玄人さんにぜひおすすめしたい作品。

以下ネタバレ感想。
百合子
体臭の描写で妙にドキドキしてしまいました。お嬢様なのに嫌味がなくて可愛いです。こんな子に好かれたらもうどうしようもないと思います。そう思うと、お兄様はむしろ今までよく頑張ってきたな、としみじみしました。

斯波
バッドエンドを見ないと斯波の百合子への想いの深さはわからないという憎い演出。選択肢も敢えてミスリードを促すことでユーザーが一番最適な順番でルートを攻略できるようになっているという素晴らしい演出でした。目に見えるものしか信じない、お金の力で成り上がってきたリアリストな斯波ゆえに百合子をお金で手に入れようとしますが、当然そんな態度は百合子に反発されるだけで、というお互いの心情がすごく分かるだけあってシナリオに没頭してしまいました。斯波ルートはじれったくてやきもきさせられました。百合子に対する強引で性急なアプローチの理由も納得がいって、当て馬役になりがちなのですがぜひ斯波ルートで想いを遂げてほしいと思います。「女探偵」エンドもいいですが、バッドエンド「後悔」があまりにも切なすぎました。「座敷牢の恋人」も斯波の執着や情念が見えて好きです。斯波というキャラや価値観、ものの考え方なども首尾一貫していて大好きです。お兄様が励ましの言葉をかけたと聞き、それは斯波さん相当だったんだろうな……と思いました。

お兄様
終始背徳的で耽美、禁断の恋、という怪しくも色っぽい雰囲気が漂っていたシナリオでした。いかにも貧乏を体験したことのない若様という感じで発言も一貫していて、生気に満ち溢れている上に苦労人ゆえリアリストな斯波とは対照的に、地に足のつかないことばかりを言っており、いつふっと消えてもおかしくない空気のあるお兄様に「こいつ放っておいたら自殺するんじゃ……」とハラハラしました。予想通りルートによっては知らないうちに知らない女と心中とかするので目が離せません。百合子と無事うまくいって良かったです。藤田ルートでのお兄様が可哀想。百合子とは本来結ばれてもいいはずなのに運命の悪戯で生涯「お兄様」でい続けなければならない、おまけに絵も描けないとなったらあそこまで自暴自棄になるのも仕方ないような気もします。外で働くこともできない華族の若様の仕事があれか……と思うとお兄様ルートは良かったね、という気持ちになりました。バッドエンド「つがいの蝶に」は情景が目に浮かぶようで哀しくも美しいラストでした。

秀雄
DTってのがどういうことか見せてやるよ!見ろ!!これがDTだ!!とばかりに濡れ場でも通常時でもDTの魅力をこれでもかと見せてくれたシナリオでした。まるで秀雄にそれしか魅力がないような言い草ですがもちろんそんなことはありません。バッドエンド「白」の悲恋ぶりが切なくて良かったです。バッドエンド「うそつき」も秀雄の陰湿なところがモロに出ていて良かったです。「秘密の共犯者」でお兄様によりとんだとばっちりを受けたのを見た時はさすがに良心が痛みました……お兄様の前では秀雄なぞ蛇に睨まれた蛙です。わかってる、秀雄が悪いんじゃない。周囲が濃すぎるだけなんだ。一番最初に秀雄を攻略したのですが、最初で良かったと思います。二人でキャッキャしてるのに和みました。

藤田
ハーフであるという設定を=巨根に結びつける技ありの一撃。加えてまさかの母乳好きという18禁でないと表現できない設定はお見事というほかありません。その性癖が藤田の生い立ちとも密接に関連しています。藤田のバッドエンド「永遠の下僕」もぶっちぎっています。もちろん、ふるってんな、と唸るポイントです。藤田は執事であり、家令にまで取り立ててくれた子爵に恩義を感じているためしょっぱなから一家のお嬢様に手を出すなんてことはありません。惹かれあってもぎりぎりでどうにか踏み止まろうとするので百合子と一緒にやきもきしました。おまけに藤田は出自の件で散々な目にあってきている上、女をお兄様に寝取られたことがあり、すっかり臆病な性格になってしまっているので藤田ルートは百合子側から全力で押していく形になります。が、一度くっつくと藤田の隠れた性癖が出るわ出るわ。でもきっとこういうのもアリなんだと思います。

真島
ネタバレを一切見ないでゲームにとりかかったので普通に騙されました。百合子(野宮家)の幸福は真島の不幸を土台にしているので、真島の執着、憎悪、情念はすさまじいものがあります。何せ百合子が序盤でミラクルに次ぐミラクルをあれだけ起こしても、いわゆるハッピーエンドとされるエンディングでは百合子に真実を伝えないという形になるのが……少しでも真島に頼ろうとするともれなくエンディング「悪人」ですよ。恋情を「なかったこと」にするという。どういうことなの。真島の背負う業の重さ、そして最悪なのがそれが真島に一切責任がないというのが悲しすぎる。
だって「もう復讐とかやーめた!俺は愛に生きる!」という選択をするまでに、真島は大きすぎるトラウマを乗り越えなければいけないわけですよ。それが、真島の出生理由のトラウマと真島と百合子が結ばれるとガチ近親相姦になってしまうという事実……ハードルがあまりにも高すぎるだろ……。そのために真島の百合子への思慕、恋慕は歪みに歪んで憎悪と執着に変わってしまいます。エンディング「おかしなお姫様」では復讐を成し遂げ、百合子をこれ以上ないくらいの不幸にまで貶めます。百合子を穢すのを見ることで復讐しているつもりで、でも真島の中に残る百合子への純粋な恋情が悲鳴を上げ、だからといってこれまで生きているうちに貯めこんだ憎悪のやり場がなくて止めることもできないという……でも続けても真島の中の憎悪は膨らむばかりなのでは……生まれながらに恵まれた身分だった百合子への嫉妬や憎悪もあれど、こうなってしまった理由すべてに対する憎悪がどんどん膨らんでいくのが……!
そこまですべてを憎悪しているのは、真島が憎悪しなければ生きていけなかったからなのだと思うとうぁあああーってなります。子爵への憎悪、そして実の両親への憎悪、運命への憎悪が真島を駆り立てていったわけです。復讐のために、いつしか真島は悪の道に入ってしまいます。「一度死んだ身だから、罪悪感なんてなかった」と真島は言うのですが、人は自分の生きる道を自分で選んでいるのですよ……!!生きようともがく間に真島は復讐のために自らどんどん悪の道に入っていき、やがてその「罪悪感のなさ」から「悪人」になってしまう。ベストエンド「秘めた想い」でも、別に真島は改心したわけじゃないというのがすごい。ただ、復讐よりも百合子を優先しただけ。それだけなんですよね。だから「百合子をできるだけ傷つけないようなやり方で百合子を手に入れよう」とは思うんだけど、「百合子のために足を洗ってまっとうな人間になろう」とはならないんですよ。きっかけは復讐だったかもしれないけど復讐のためなら何も闇の世界にとことん身を落とす必要ってなかったはずなんです。でも、真島はその道を選ばなかった。そして「闇の世界でのし上がった」ことに対して欠片も罪悪感がないんですよね……。このキャラクターが最初から最後まで一貫していて、価値観にブレがないのはさすがです。真島は徹頭徹尾、「悪い男」なのが印象的でした。
真島は百合子を好きになればなるほど地獄が待っている、という構図がすごかったです。攻略キャラのうち、誰と百合子が結ばれても真島のトラウマを刺激するってほんとにどういうことなの。この人に萌えとか言えないよ。真島の中のブラックボックスがあまりにもどろどろしすぎてるよ……!真島ルートは噛み締めるほど苦くて、でもそれこそ阿片のような妙な中毒性があります。
斯波エンド「後悔」で斯波を殺害するための薬の手配をお願いするシーンでは、しれっと普通に渡していて、そこで真島の感情がまったく読めなくて、ごく冷静なところで真島は本物の悪人なんだと痛感して恐ろしくなりました。百合子が憎悪に塗れていくのを見て真島は何を思うのかと考えると……しかも百合子の不幸は全部真島の演出によるものなんだぜ……。きっと「妹を穢す」ということに感じるものがあったとしても「斯波を殺害する」という点に罪悪感は欠片もないんだろうな……。

全キャラのルートを通して真島をあらゆる側面で見ていくことになるのですが、少しずつそれぞれのキャラの心情が見えてくるので周回プレイ余裕でした。昼ドラのような容赦ないドロドロ恋愛をたっぷり堪能しました。
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