神学校 -Noli me tangere-

  • 2011.11.06 Sunday
  • 17:36

18禁BLADV。PIL/SLASH渾身の三作目。
舞台は幾度目かの世界大戦後の英国。神学校に通う敬虔な優等生マイケルはクリスマスの日に心浮き立たせて実家に帰ったが、両親と妹は何者かにより殺害されていた。理不尽な運命にマイケルは犯人への復讐と神への呪詛に燃える。その上犯人が見つからず憤るマイケルだったが、実家の壁に残された謎のマークの手がかりが通っていた神学校にあることが判明し、家族を殺した犯人を突き止めるためにマイケルは冬季休暇の後神学校に戻る。そしてマークの謎を追ううちに悪魔崇拝の秘密結社に関わりがあることが判明し……という感じでストーリーは進んでいきます。

攻略対象は親友の癒し系少年セシル、厳しい監督生レオニード、不良学生ニール、無邪気な双子の弟のガビィ、気さくで生徒に人気のあるオーガスト神父の五名。テーマは「背徳」。
システムは快適で、グロテスクモードのON/OFFスイッチがある親切設計です。グロモードをオフにしていてもCG達成率などに影響がないのも嬉しいところ。CG鑑賞、ムービー鑑賞、音楽鑑賞、シーン・エンディング回想、ボイス保存機能が完備され、至れり尽くせり。

ボイス保存機能は特に嬉しかった機能です。コンフィグでは文字の表示速度テスト用にキャラが喋ってくれます。起動のたびにそれぞれのキャラが時間帯に合わせたセリフで出迎えてくれ、ゲーム終了時もそれぞれのセリフで見送ってくれます。
ちなみに豆知識ですが、通常は同じキャラが出迎えて見送ってくれるのですが、コンフィグでテストすると出迎えてくれたキャラを違うキャラに切り替えることが可能です。BGMも情景によく合っていました。

グラフィックはシナリオの世界観にぴったりで美しいです。立ち絵が充実しており、CGと比べてキャラの顔が違う、ということもありませんでした。
イベント時のCGはもちろん、本作は演出が凝っていてグラフィックがホラー要素を容赦無くもり立ててくれます。効果音の使い方もよく計算されていて、具体的には夜中に一人でプレイしてると段々こわくなって後ろを確かめたりトイレに行けなくなっちゃうレベルです。
ちなみに、私は極度のチキンでネットの都市伝説を読んだだけでビビッて眠れなくなるレベルだということを付け加えておきます。
それはともかくBGM、演出の妙、そして声優さんの熱演、素晴らしいグラフィック、そして充実のシナリオすべてがこの作品の完成度を高めています。

そしてこの作品、何よりもシナリオの完成度が素晴らしいの一言です。伏線がちゃんと張り巡らされており、しっかり回収してくれるのはもちろん、どのキャラのルートも充実しています。捨てキャラどころかどのキャラもメインを張れるのでは。ひとつのルートで各キャラを深く掘り下げていくので満足感が違います。
だからといってマイケルの問題がおざなりになるようなこともなく、キャラごとに違うアプローチでマイケルと関わっていき、そしてそれがそれぞれ自然な流れでした。脇役キャラもどれも魅力的です。
そして大事なことなのですが、この作品は恋に落ちる過程の描写がものすごく丁寧です。マイケルと攻略対象の恋を甘酸っぱい気持ちでこれでもかと楽しめます。

公式で発表されたテーマは「背徳」でしたが、この作品の真のテーマは別ににあると思います。それはぜひプレイしてみて感じていただければ幸い。
本作は真っ向から「信仰とは何か?」「祈りとは何か?」「赦しとは何か?」ということをひとつひとつ問いかけ、それに対する答えが非常に丁寧かつ、偏り過ぎずにキャラごとに提示されるのが印象的でした。
「信仰」という難しいテーマに真っ向から誠実に向き合い「神学校」という舞台で描ききっています。ただ単に「やっぱり神は人間を救わないよね」という安易な帰結ではなく「信仰」というものの本質を丁寧に示し、かといって押し付けもせずにごく自然な形で収束させていくシナリオ展開を見せてくれたところは圧巻の一言です。
聖書や歴史背景をかなりの時間かけて調べたのであろうことが察せられるだけあり、世界観が完全に出来上がっています。つまり何が言いたいかっていうとすっげー萌えたってことです。ニール愛してる。FD発売決定おめでとうございます!以下ネタバレ感想。
マイケル
掠れたような声で話すマイケルは何もしなくても妙な色気に溢れていると思います。中の人の演技力が半端ないです。家族を喪った後の、いつも何かを堪えているような低い声の演技が見事。声だけでマイケルの激しい怒りが見えてくるようでした。レオニードルートのマイケルは感情の波が激しくて微笑ましく、ニールルートのマイケルは笑うことが多いので嬉しかったです。セシルルートのマイケルは、あの抑えたような感じの声がずっと続くので正直堪んねえなという感じです。

セシル
友愛から恋に発展するセシル。セシルのあふれるような優しさは、セシルの重すぎる過去に起因するものでした。この二人はにゃんにゃんしているところが非常に可愛らしいです。やばいです。マイケルとセシルを見ていると、じゃれている子猫を眺めているような温かな気持ちになります。優しくて慈愛溢れるセシルがマイケルを癒していく描写が素敵でした。最後でどっちが受か攻か決めるところで「別にどっちでもいいんだけどなあ」なセシルと大喜びしたりあれ!?おかしい!!とかなってるマイケルが可愛かったです。あと、隠しキャラルートでマイケルを見守るセシルも実に良いです。セシルの慈愛がマイケルの傷を少しずつ癒し、そこでマイケルが窮地に陥ったセシルを今度は引っ張り上げる、というシナリオがいいですね。
心中エンドも哀しくて、すごく美しい情景で好きです。

レオニード
マイケルからの感情として敬愛から「こいつ放っておけない」に変わっていくレオニードルート。マイケルの「おきてください、レオニード」という、敬語なのに呼び捨て!うっは萌える!と感じさせてくれたルートでした。中の人も良い仕事をしています。レオニードルートはマイケルが無理やり抑え込んでいた感情を少しずつ呼び覚ましてくれるルートで、レオニードと一緒に支え合いながら立ち上がっていく感じが萌えました。人の支えになることでマイケルも自分の存在価値を見い出していく、っていうのがいいですね。レオニードも過去の一件のせいで自分の感情を凍らせていたので、マイケルと共に少しずつ自分の中で凍らせていた感情を溶かしていくようなシナリオがとても良かったです。「自分を取り戻していく」という、依存するだけでなく立ち上がる強さを教えてくれるシナリオでした。

ニール
親愛から恋愛に発展していくニールルート。最初から刑事さんか何かなんじゃないかと思っていたのですが、牧師さんでした。包容力が半端ないです。ニールに少しずつ惹かれていく描写がとても丁寧で、一生懸命なマイケルがすげえ可愛いです。そりゃ、ニールだってぐらっと来るだろう……。ところで、ニールってマイケル以外にはそんなに優しくないと思うのですが、ニールが最初からマイケルにだけ特別同情的だったのはやっぱり、「親を亡くした」という事実があるからこそですよね。昔の自分に重ねあわせたからこそ放っておけない。
ニールルートでは、人の痛みが分かるニールのさりげない優しさや、言葉が特に響きました。人の痛みは、やっぱり死ぬほど痛めつけられたことがないと分からないよな、というのがレオニードとの対比になっててすごく良いです。痛みが分かるから死ぬほど甘やかすニールと突き放して自分で立ち上がれ出来るだろ?と促すレオニード、一緒にがんばろうと声をかけるセシル。キャラごとにアプローチが違ってていいですね。他の二人と違い、同性愛が一番罪悪感を覚えさせる二人なのでどうなることかと思いましたが、マイケルが成長して乗り越えていくというラストがとても良かった。ニールはマイケルに昔の自分を重ね、同情心からマイケルを構うようになるのですがその過程で段々本気になっていくのが見えてにやにやしました。墓場での喧嘩は実に良いですね。マイケルのニールへの親愛は実は家族愛だったんじゃないかとも思えるのですが、あの予言のせいで親愛が恋愛に変化してしまい、そしてそれをニールは何となく察して止めようとするけどマイケルの可愛さに抗えないという実においしい展開。クッソ萌えた。ありがとうございました。

オーガスト神父
「赦し」を描ききった壮絶なシナリオ。マイケルのオーガスト神父への敬愛を、無理やり恋愛に捻じ曲げていくのがうあああああってなりました。ラストシーンのあの場面は、マイケルがオーガスト神父を赦すのかそうでないのかというのを、ものすごく分かりやすく示してくれて鳥肌が立ちました。深いシナリオです。
人間の持つ「原罪」をオーガスト神父は「悪の種子」と言っていましたが、それに飲み込まれてしまった弱い人間は永劫に赦されないのか、という問いにひとつの答えを出してくれたシナリオでした。オーガスト神父は道徳心のありかを信仰に求めていたんだなあと思うと余計に味わい深いです。オーガスト神父は自分の中に眠っていた「悪の種子」に一瞬でも支配され、罪を犯してしまったことで、きっと死ぬほど苦しんだのだと思います。そしてそれまで人の明るいところ、美しいところだけを盲目的に信じていたのだろうオーガスト神父にとって、成長が止まり他人の考えが読めるようになったことは絶望以外の何物でもありません。低い場所から落ちたなら擦り傷ですみますが、高いところが落ちると場合によっては死に至るように、オーガスト神父は人間の中にある美しさと醜さの落差に打ちのめされてしまったんですよね。オーガスト神父は本当に高潔な人物だったんだろうなと思います。だから、人の醜さや汚さを目の当たりにしてあそこまで歪んでしまったのだと思うと悲しいです。「神様」を心から信じていたオーガスト神父にとって、いざ自分が堕ちてしまった時にどこからも救いがもたらされなかったことが余計にオーガスト神父を狂気に走らせてしまったんだろうなあ。そのどん底からは自力で這い上がらなければならず、その自分の中に眠る力を教えてくれるのが「神様」という存在であって、物理的にどうこうしてくれる存在ではないということを誰も、本当の意味でオーガスト神父に教えてやれなかったのだと思うと切なくてならないです。ラザラス神父でさえ救いきれないぐらい、オーガスト神父の絶望は深かったのだろうと思うと余計に。闇に堕ちてなお、光に焦がれてやまないオーガスト神父がマイケルに救いを求めた理由も分かる気がします。あの約束は、子供にしかできない。大人になるとあんな約束できないです。でもオーガスト神父にははっきりとした約束が欲しかったんだろうなあ……。
あそこまで堕ちたからこそ自分は神に見捨てられたんじゃないか、自分はもう二度と赦されないのではないか、という恐怖に囚われてしまったんでしょうね。そしてその地獄の苦しみから一番簡単に逃れる方法って、「もうどうでもいいや」と投げてしまうことなんですよ。だからオーガスト神父はずぶずぶ堕ちていく。どこまで堕ちたら自分は裁かれるのか、と自問自答しながら……考えれば考えるほどオーガスト神父のルートは切なくて哀しくて、深いルートです。あのラストシーンでマイケルによって赦しがもたらされる、というのが好きです。

ガビィ
涙なしでは語れないガビィルート。いつも俯瞰で眺めていて、あまり会話に参加しないところがすごく気になっていたのですがやはり……と真実に呆然としました。序盤からそんな感じはあったのですが、何でだよぉおおおお。鬱々としたシナリオの中でガビィの明るさには何度も救われただけに、余計に寂しかったです。ガビィはマイケルの中で好きだったけど諦めなきゃいけなかったもの、友人たちの長所であり憧れているところなどを寄せ集めた存在というのが素敵ですね。ガビィは本当にマイケルにとって救いとなる存在で、それはマイケル自身の中にずっとあった、というシナリオが本当に優しくて大好きです。ガビィルートは恋愛なしでも読み応えがあって涙なしでは語れません。マイケルが友達みんなの手を借りて、自力で立ち直っていくというシナリオも良かったです。トリを飾るのに相応しいルートでした。

ラザラス神父
この作品で絶対に見逃せないサブキャラの一人。闇に堕ちてしまったオーガスト神父の対比となる光の存在であり、神父=偽善者、というだけで終わらせないというのがこの作品の素晴らしいところです。本物の聖職者とはどういうものかというのを見せてくれました。ラザラス神父のオーガスト神父への友情は泣けます。しかも多分それだけじゃないところにも泣けます。ラザラス神父の慈愛と、人を赦す心には感銘を受けました。どのルートでも心からマイケルを心配して力になってくれるのがいいです。ていうかほんと、ラザラス神父は人として尊敬します。

ミスター&ミセス・マコーリー

不憫なマコーリー夫妻。特にミスター・マコーリーはいい味出しています。ミスター・マコーリーの不器用な優しさに、作中ハラハラしている際に何度もほわっとさせられました。

ジャック
ジャックルートはどこですかあああああああああああああああ!!!!!
何この子、超可愛い。超可愛い。ガビィルートではジャック、ロバート、ジュシュア、ベンジャミンと協力して悪魔に立ち向かっていくのがいいですね。ホモに走らなくてもマイケルにはその強さがある、というシナリオが好きです。ジャックルートといいましたが、ジャックにはホモに走らないで可愛いお嫁さんでももらって幸せな牧場主になってもらいたいです。

アベル
アベルの抱える闇が本気で洒落にならないレベルで、悲しくなりました。だからオーガスト神父に付け込まれたんだろうなあ……。アベルにとっては自分にとって明確で具体的な救いの手段を始めて示してくれたのがオーガスト神父だったからこそ、あそこまですべてを捧げてしまったんだろうなと思うと切ない。この強かさで世間の荒波を乗り越えていってほしいです。ラザラス神父がアベルを気にする辺りも好きです。

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