ファタモルガーナの館

  • 2013.07.01 Monday
  • 01:15
ファタモルガーナの館
Novectacle (2013-01-25)売り上げランキング: 208

西洋浪漫サスペンスホラー、全年齢・一般向けADVゲーム。

美麗でゴシックなグラフィック、
精妙な筆致で綴られる重厚なシナリオ、
作品を彩る雰囲気たっぷりの豪奢な音楽。
すべての要素が合わさってひとつの芸術作品としての風格を漂わせている、
紛うかたなき傑作です。制作者の皆さんの情熱がひしひしと伝わってきました。

まさに同人だからこそ出来た作品で、利益重視の商業作品で
このクオリティを出すのは難しいでしょう。

物語は古ぼけた屋敷で「あなた」が目覚め、
翡翠の目をした女中に出逢うところから始まります。

以下、公式より引用。

「あなた」は時代と場所を超えた四つの悲劇を目撃する。
これらを物語として終えてしまうのか、あるいはその先を求めるのかは……
「あなた」次第だ。

しかし、どこかの誰かはこう言うだろう。

「他人の悲劇だから耐えてこられたんだよ」


人間の弱さ、醜さ、欲望、憎悪、そして強さをもあますところなく描ききった作品でした。
悲劇、悲劇の連続なので鬱ゲーではあるのですが、不思議と読後感は爽やかで、
晴れ晴れとした気持ちになります。

完成度が非常に高く、文句をつけるところがほとんどない、プレイして損のない名作。
特にシナリオは、大胆な構成もさることながら様々な謎と
巧みな伏線回収の数々にはゾクゾクするようなカタルシスを感じました。

本作はネタバレを一切見ないでプレイするのを強くおすすめします。

また、音楽が非常に素晴らしいので、公式の推奨する通り、
ぜひイヤホン・ヘッドホンでプレイしてみてください。

ファタモルガーナの館

以下ネタバレ感想。
DLsite.comでダウンロードしてプレイしました。DL課金って便利ですね。
もっとDLサイト流行ってくれないかなー。

【第一章】

・メル
メルには結構共感してしまう。彼はただ弱いだけで、悪い子じゃないんですよね。
彼のように恵まれた生まれ育ちをして、何となくへらへら優しい振りして
うまくやってきた人って、土壇場には弱いものだろうから。
それにしても最後、白い髪の娘への一言にはおののきました。
でもあの醜さは、きっとメル自身も気付いていなかったものだと思います。
自分がどう感じているのか、己の醜さに向き合うことすらして来なかったんだろうと
思うと、あそこで初めてそういう自分に気付いてしまうのって相当きついはずなので、
何となく同情してしまいます。まあ、ドンマイ!(軽めに)
メルは一山乗り越えた後で、ようやく落ち着きのある青年になれるだろうと
思います。神父は案外彼に合っている気がする。
他人にあるべき規範や道筋を用意してもらったほうが、彼は楽だろう。

・ネリー
かわいくて好きです。わがままは寂しさの裏返しでもあったんだなーと。
最終章では仲良くなれて良かったです。
ネリーはお兄さまから離れたほうがいいような気もします。
彼女のわがままを笑って受け止められる包容力のある人か、
もしくはやっぱりメルのように言うこと聞いちゃう人がいいのか。
メルとネリーはお互いに精神的なメリットを多く得られる関係性でありながら
お互いに「王子様」「お姫様」フィルターを通しているため
どちらも本質を見ていない、というのが皮肉が利いていていいなと思います。
最終章エピローグ後の展開が気になる二人です。

・白い髪の娘
メイド姿かわいいよーーーー!
ちょっと優しくされたぐらいでメルを憎みきれなくなるのが
白い髪の娘たるゆえんというか。

・ヘイデンさん
優しいおじいさんで、心が温かくなりました。
それにしてもメル父はゴミクズだとしか……
貴族にはありがちな話なんだろうけども。
ヘイデンさんが彼女との触れ合いを通して慰められている部分も
大きかったんじゃないかと思います。

【第二章】

見事に引っかかりました。
いやーやられた。全然気付かなかった。

・「獣」
あまりの惨さに胸が悪くなりつつ、手際良く手伝ってしまう女中さんに
感心したのも束の間、後半では真相が明らかになって愕然としました。
でもヘイデンさんに心を守る術を事前に教えてもらっていて良かったとも思います。
彼はとても気の毒な人だな、と感じます。やってることは外道そのものですが。
罪悪感がないわけでもなさそうなので(例え相手を想った罪悪感ではなかったとしても)、
心のままに生きるのが社会に反するという在り方がただひたすら哀れです。
そういう風に生まれついてなければ良かったのに、と誰よりも彼が感じているだろう。
だから「鎖」を得て、知識として道徳観を身につけておくのが最善なのだと思います。
例え彼が人を愛することはないのだとしても、鎖となる人に安らぎを得ていたのは
確かなのだから。

・ポーリーン
あまりの最期に開いた口が塞がらない想いでした。
ポーリーンは本編でも言われている通り「盲信」の人で、だからこそ
彼とうまくやれるんだろうと思います。ポーリーンは彼の愛を疑ってはならないから。
彼が彼女を愛しているわけではないように、ポーリーンにとっても実は
相手が実際に自分を愛しているかどうかは問題ではないのだと思う。
彼が自分を愛してくれているだろうと、そう信じられさえすれば。
最終章でのマリーアの説明があまりに的確で、さすがだなと思いました。
そりゃ、反りが合わないだろうな。ポーリーンも割と自分の世界だけで生きてる人だし。
そう考えると実にお似合いのカップルです。
彼が鎖となる人を必要としていて、特別で、大切にしているのは確かなんだから、
知らなくてもいいことってあるよね。
願わくば他の「鎖」が彼の前に現れることのないように。

・ハビ
ぶっちぎりでかわいそう。一体誰が彼を責められるのか。
ポーリーンへの片想いもただただ不憫でしたけど、でももしも
ポーリーンがハビと一緒に帰ってれば、成長した後に
いけなくもなかったと思うよ。

・白い髪の娘
ショートもかわいいよーーーー!!
ポーリーンぐらい盲目か、白い髪の娘ぐらい博愛精神がないと彼の相手は無理だろう。
しかも実際に白い髪の娘が盲目で出てくるというのがもう……

【第三章】

・ヤコポ
愛すべきツンデレ馬鹿野郎。公式でのあまりのいじられっぷりに
制作者の愛を感じてしまうのですが、彼には少し複雑な思いがあります。
ヤコポって土壇場で、例え緊急避難的な場面でも、
自尊心の低さゆえに 愛する人<<自分の見栄、体裁 を
取ってしまうんですよね。他人よりも自分を守る方向に動いてしまう。
そんで失った後に「愛してたんだ」とか知らねえよって感じですし。
白い髪の娘とすらうまくいかないなんて、ヤコポが女と付き合うなんて
不可能なんじゃないかと思います。
ヤコポはとても自分勝手な人なんですよね。例えそれが弱さのためであっても。
こういう、生きてる時に優しくしなかったくせに死んでから大騒ぎするような男って
あんまり好きになれない。北方水滸伝の林冲みたいな。扱われ方は雲泥の差ですが。

彼は自分の利益のために他人を蹴落とすことに罪悪感を覚えない人でもあり、
その業がことごとく愛する人や自分に返ってきてるので、いい加減にしろと
言いたくなりました。だから最終章での「彼女」の対応もとても納得できるものだった。
安易にヤコポとのハッピーエンドにしないのが本作の素晴らしいところです。
いや、だってねえ。無理だろ。
これこそまさに「他人の悲劇だから耐えてこられたんだよ」ですよ。

・白い髪の娘
ドレスがかわいいよーーーー!!!
フェナキのおもちゃで喜ぶ白い髪の娘の愛らしさは異常。
そりゃヤコポも骨抜きになるって。白い髪の娘のあまりのいじらしさ、
そして最後の手紙は本当に胸が痛くて、泣いてしまった。

・マリーア
今回はすぐに気付きました。私、マリーア嫌いじゃない。かなり好きです。
マリーアには強烈なシンパシーを感じてしまいます。
マリーアの憎しみは致し方ないと思うし、あれで友情を信じられてしまう
ヤコポがちょっとアレだと思います。夢見がちですよね。
娼婦姿のほうがイキイキしていて、あちらが彼女の本質なんだろうなと
思えました。それにしてもヤコポとは本来気が合うはずなのに、
因業のせいでどうあっても憎みあうようになってるのが泣かされる。
最終章では仲良く出来て嬉しかったです。


【第四章】

演出には偶然気付いて、びっくりしました。
システムをも最大限利用した演出にゾクゾクした。
第四章のミシェルが異様に優しくてヒーローで、後で笑いました。

第四章は悲劇として、非常に美しい物語ですよね。
触れると枯れて死んでしまう蝶とか、ファンタジックで、物悲しくて。
生々しさが一切ない。まさにおとぎ話。
出来すぎなところがすごくうまい仕掛けになってていいなと思いました。

・ミシェル
絶句というほかない。彼のこれまでの苦しみや哀しみは筆舌に尽くしがたいし、
想像を絶するもので、見ていて胃がキリキリしました。
も、もうやめたげて……!
ミシェルの心の中のツッコミとか思っていることに思わず笑う場面もあり。
ジゼルとのやり取りが好きです。バカップル全開でも許せる。
まあ、女中姿はグッと来るよな。

・白い髪の娘
ヒロインの鑑ですよね。ジゼルが太陽なら彼女はまさに月のよう。
その儚さだと、ミシェルの心を引っ張り上げるところまでは
いかないかもしれないなーと思いました。慰めは得られても、
強くなるところまでいけない気がするので、ミシェルはやっぱり
ジゼルじゃないとダメなんですよね。
ここで、白い髪の娘が「私はただ、魔女と呼ばれている人の、想いを知りたい」
語るのが、そしてそう書き換えたのがモルガーナなのがまたなんとも言えない。

・ジゼル
ただひたすら気の毒なのですが……彼女は運が悪かったんですよね。
めぐり合わせというのかな。彼女の明朗な明るさが呼び寄せるのは、
むしろ悪いもののほうが多かった。灯りに惹かれてしまう蛾のような。
それにしてもミシェル父は外道ですね。まともな死に方をさせたくなくなります。
あそこでモルガーナにあれだけ煽られて呪わなかったミシェルはすごい。
半ば意地になってたのかなと思います。

【第六章】

少しずつ歪んでいく彼女と、何の罪もない人を
ひたすらいびるモルガーナ、段々と魂が摩耗していく
あの人が見ていて痛々しかったです。

【第七章】

ディディエとジョルジュとの束の間のやり取りに救われました。
その後はドーンと落とされて、すごく辛かった……

・ディディエ
単純実直な人だから、エメの色香の前にはひとたまりもなかったんでしょう。
ご愁傷様というか、ディディエって物事をそのまま受け止めてしまうのかも
しれませんね。裏があるとは思わないというか。
あんまり女の汚い部分とか見たことなさそうですし……
ミシェルの最期で、表にしなくてもディディエの哀しみや苦悩は推察できたので
気の毒というほかない。嫌な役回りですよね。ジョルジュにも責め立てられて……
ディディエは断れなかったんだろうと思います。様々なしがらみがあって。
でもさー、ミシェルの様子を見に行くぐらいしたって良かったんじゃないかと思うんですよ。
きっとエメにうまいこと丸め込まれたんでしょうが……ミシェルの傍にいるエメに近付くのが
怖かったのかもしれませんね。きっとディディエは、エメに対して本気だっただろうから。

・ジョルジュ
後悔のあまりああなっちゃうとか、ジョルジュも晩年は相当
精神状態がやばかったんじゃないかと思います。本編でも言われてたかな。
彼は軽薄で考えなしな人ではあるんだけど、不思議と憎めない魅力的な
キャラクターでしたね。ミシェルを受け入れられるのは、ディディエよりも
ジョルジュみたいな柔軟な人だろうとは思います。
絵を描いたことをあれだけ後悔したのは、遺品整理で引き裂かれた絵を
見たからかもしれない。あれをやったのはミシェル以外にはいないのだから。
様々な要因が絡みあって、不幸を呼んでしまったんだろうと感じます。
最期のシーンはうるっときました。

・エメ
あまりの外道っぷりに絶句。しかもこの人、お咎めなしとか……
ミシェルに侮辱されたのがよほど腹に据えかねたんでしょうか。
それにしても、自分がやってることを理解してないようなやばさを感じました。
憎まれっ子世にはばかるって奴ですか。
こういう女がのうのうと幸せになってしまうのって、分かる気がするけどやるせない。
エメは本当にディディエみたいな人が好みだったのかもしれません。
ジョルジュみたいなのは軽薄そうで印象が良くなかったのかも。

【最終章】

すべての要因が明らかになって、二人のやり取りを見ながら
臨んだ最終章は楽しかったです。

・モルガーナ(ネタバレなので反転してください)
良くも悪くもまっさらな子なんだろうと思います。
恋を理解できるほど精神が育ちきってないような、無垢な清廉さを感じました。
だからこそ他人を憎悪するときもどこまでも転がり落ちていく。
ついには自分の生きる意味だった「聖女」を枷と感じてしまい、
彼女の持つ全ての善性切り捨ててしまったのも、両立するのが
耐えられない苦しみを生んだからで……きっと、最初は三人を
許そうとしたはずなんですよ。だけど憎んでしまい、憎む人間的な自分は
「聖女」には相応しくなくて、また苦悩してしまう無限ループ。
というか、この状態で許そうとすると余計に憎くなるんじゃないでしょうか。
でも頑張って頑張って頑張って、色々理屈をつけて、やっぱり許せなかった。
それは仕方のないことだと思う。彼女はあまりに高潔な自分を求めすぎてて、
人間としての自分を受け入れられなかったんだと思います。
ミシェルに語りかけるモノローグも凄まじくて鳥肌が立ちました。
モルガーナ視点だと、確かにあまりにもあんまりだった。これは恨む。
大天使ミカエルとしてモルガーナの行いの尊さを祝福したミシェルに
聖女たらんと自分を律するあまり壊れてしまったモルガーナが
どれほど救われたことか。あのシーンは心が震えました。
モルガーナはとても清廉な精神を持つ子で、だからこそ転落も真っ逆さまだった。
憎んでしまう人間としての自分と、聖女たらんとする自分が両立できない。
とてもしんどい生き方を自分に課してしまった子で、見ていて不憫です。
モルガーナとくっつけるとしたら、正直ヤコポよりもメルのほうが
まだ可能性があると思う。想いの深さはヤコポのほうが深いとしても、
奴は愛する人にろくに優しくしないですから、伝わらないだろ……
最後のモルガーナの出した結論にはすごく納得できたし、
ミシェルに縋ろうとする様子が可愛かった。ディディエの「魔女」に
おののいてしまう様子が歳相応で微笑ましかったです。
そういうシーンじゃなかったんですけど。
彼女には「ただの人間である自分」を受け入れるところから
始めていって欲しいです。


【エピローグ】

最後もそうですが、その一歩手前のスチルがとても綺麗で、
思わず見とれてしまいました。
白い髪の娘の最後のシーンが、あまりにも聖女らしすぎて、彼女が
そういうものだと分かっていても切なかった。哀しすぎる……。
でもそうあるべきでもあり……本当に切ないです。

【終わりに】

英語化とか中国化とか、グローバルに展開していきそうで実にめでたいです。
舞台がフランスですし、どのキャラクターも人間味があるので
向こうでも受け入れられると思います。萌え絵じゃない
絵画のような美しいグラフィックも、外国人にとっては入りやすいんじゃないでしょうか。
広まって欲しい気はしますが、あまり有名になるのも寂しいような、
複雑な心持ちです。好きなアイドルを見守るファンの気持ちが分かったような。

濃密で楽しい時間でした。この作品を世に生み出してくれて、
本当にありがとうございました!
プレイ中はファタモルガーナの館の世界観を夢にまで引きずってしまい、
結構のたうちまわったのですがそれも良い思い出です。
良い物語に触れ合えて、上質で素晴らしいひと時でした。
これから霧上のエラスムスとセブンスコートをプレイしようと思います。
ああ、本当に楽しかった!
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