メランコリック・ドリィムタワー

  • 2013.07.07 Sunday
  • 18:41


全年齢同人BLゲーム。憂鬱なる塔と五人の自殺志願者の物語。
題材は暗いですが、物語はあまり激情的ではなく、淡々と進みます。
登場人物が隠しているそれぞれの痛みをこちらが察するような感じです。
お値段以上の作品で、このクオリティで525円は破格だと思います。
ダウンロード販売が嬉しい。
繊細なテキストとグラフィックが独特の世界観を創りあげていて、
美しい作品の世界にどっぷり浸かることができました。

こちらの作品ですが、何と立ち絵どころか背景まで自作されていて、
おかげで静謐な塔の雰囲気を背景が壊さず、綺麗に表現されています。
キャラクターが喋る時もテキストウィンドウが吹き出しに変わる細やかさが
嬉しいです。その上スチルも豊富で、目の保養でした。
ユーザーインターフェースも画面を邪魔せず、センスを感じられます。

静かなトーンのBGMに、物語もどことなく淡々と進んでいくのですが、
抑えた雰囲気の中に各人の感情や思惑が蠢く様が伺えて面白かった。
こういう透明感のある作品ってすごく好きです。
「花帰葬」とか好きな方は、こちらさまも好みなのでは。

中盤までは全然BLな雰囲気がなくて友情ゲーっぽいのですが
きちんと萌えも詰まっている辺り侮れません。

タイトルから感じる印象そのままの作品です。
静かで繊細な感情のやり取りを楽しめるBLをお望みの方におすすめ。
これからプレイする方は、2Fの人に攻略制限がありますのでご注意。

以下ネタバレ感想。
篠崎 一夜
終始落ち着いているのが、却って彼の傷の深さを察せられて痛々しくも、
可愛くて好感の持てる主人公でした。
よく考えるとみんな揃って一夜に優しいのですが、それが嫌味じゃない。
というのも一夜がみんなの優しさにあんまり甘えようとしてないし、
他のキャラクターが優しくするのにもそれぞれ理由があって、
納得できるからだと思います。
自殺願望者の集団の中で、一夜が同性と恋に落ちてしまうのは
何となく背徳的で、「誰にも理解されない」感があって
それがキャラクターの孤独を浮き立たせていて、効果的だなぁと思いました。
一夜の、この全然あざとくないのに隙だらけな感じ、お見事だと思います。
攻略対象が一夜に惹かれてしまうのも頷ける。


藤堂 直人
やり取りが微笑ましくて可愛い二人。藤堂が手で書くときの描写が細かくて
萌え転がりました。コミュニケーションを丁寧に丁寧に描いてくれるのが嬉しい。
何となく一夜が藤堂に惹かれるのも分かる気がしました。
藤堂が一線を置こうとする様が寂しく、それでいて誠実さも感じられるから。

霧の中ではぐれた時、あれ、わざとやったんじゃないかって感じが
したんですけどどうなんでしょう。それとも藤堂は責任を感じただけ?
はぐれた時に一夜がどういう反応をするのか見たかったのかなと思いました。
自分を頼るのか、一人でも平気なのか、違った顔を見せるのか。
だからこそ独りぼっちになった途端に途方に暮れてしまう一夜に
藤堂は思いがけず焦って、罪悪感に駆られ、
守ってあげたくなったことで、自殺を思い留まったのかなと思います。
この子は強いわけじゃなくて、傷つきすぎて摩耗しているだけで
すごく不安定だったんだと思い知らされたというか。
彼の最優先事項は弟だけど、そこに一夜も加わってしまったのが
よく分かってすごく好きなシーンです。
だから冷静に塔に戻ると「一人でも大丈夫」と判断されて
藤堂ルートに入らない。お兄ちゃん気質め……

感情を抑える藤堂だからこそ、「君へ」の二周目要素を
目の当たりにしたときの破壊力が凄まじかったです。
あと藤堂が一夜をセントジョーンズワートに例えたときにはキュンとしました。
「邂逅」では、何となくぐだぐだお互いに甘えていくうちに
くっついていくのが萌えました。看病シーンは萌えた……!
弟のようなものだと思う、を言い訳に何をやらかしてるのか……!
この後「スプリング・メロウ」もクリアしたのですが
こいつマジどうしようもねえなと思いました。特にエンド3……ちょ、おま……
それ吐いちゃいけない類の嘘だろ……
さすが本編で「面倒な奴」と言われただけあって、一緒にいると疲れる人です。
まあそこがいいのかもしれない。
藤堂は一夜が少しでも立ち直る気配を見せるとふらふらすぐどっか行っちゃうので
一夜は遠慮せず、全力でぶら下がる勢いでいったほうがいいですね。
気持ちは分からなくもないんだけど一夜が可哀想としか……
幸せにしてやれよ……大事なものを放り出してでも奪った相手なんだからさ……


御影 亨
一線を引く藤堂に対して搦め手の御影。
純粋な一夜が説得力のありそうな御影を頼りにする気持ちも
分かるような気もする。盲目という、一見して一夜に
心理的アドバンテージがありそうに見えるのもうまいですよね。

塔エンドしか見れずにぐるぐる回ってしまったのですが、
攻略制限かかってたんですね。やられた。

作り物が嫌いだという御影。彼は人間が人形にしか見えず、
目が見えない塔での状況は救いだと言います。
その中で「生きている」感覚を与えてくれた一夜が特別で、
もっともっと一夜の色々な反応や感情を見たくて事に及んだと。
話しかけろよ。自己完結してしまうのがほんとストーカーで怖いです。

「終幕」では、神父の知恵で巨万の富を〜って、モンテ・クリスト伯に
なぞらえている通り、橘が御影を呼んだのは一夜を横取りされた挙句
濡れ衣を着せられたことへの復讐と、
御影の一夜への執着への共感と興味でしょうか。
ラグが自身を神父だと言っていることから、モンテ・クリスト伯は
橘以外にはいない。そして一夜はラグと契約を交わしたから
姫である橘の「一夜を手に入れる」という願いは叶ったと
解釈したのですが、ちょっと曖昧でした。「玩具」を見るまでは。

「終幕」に対して塔グッドエンド「玩具」では一夜がぐずぐずと
決断を遅らせたせいで御影の玩具になってしまう。
「利害が一致すればいいのさ」にぞわっとしました。
一夜逃げて超逃げてー!
しかし、橘の目的のひとつが、一夜を捕らえることだったけど
ただ、ラグは橘も一夜も好ましく思ってるからそれを良しとせず、
だから「姫を助けて欲しい」と一夜達に助けを求めた。
別の形で橘の願いを叶えられないものかと思って……ということでしょうか。
失敗して普通にラグと契約して塔に残るバッドエンドが「原点回帰」なので
橘の一番強い願いが一夜を閉じ込めること、なんだと思います。
でも橘には、理性や一夜への愛着とのせめぎ合い、
無実を証明したいという想いもあり、そこを汲んだラグが一夜を呼んで、
他のやり方を模索したんですね。他のキャラと恋愛関係になると帰れるのは
一夜という支えを得ることによって橘の大事な人が死なずに済むからだろうか。
それとも橘が脈なしと判断して絶望し、一夜を手に入れるのを諦めるから?

真相ではあの潔いふてぶてしさが御影らしいと思いました。
ストーカー怖い。

で、御影帰還ルート。
藤堂と御影の刺激的なやり取りにわくわくしました。
「おれはきらい」に吹いた。そらそうだ。
御影が「恐れ入った」わけだから、藤堂は御影の
予想外の部分で嘘を吐いたことが推察されます。
爆笑して、「何でわざわざそれを?」みたいなことを言ってたし
言わなきゃそれで済むものを言いに来たのに笑った。
多分、「俺が嫌い/苦手か?」的な質問だったんじゃないかなーと
思いました。それで、藤堂はノーで答えて、後で嘘だよ、と
言うことなんじゃないかなーと。それで一夜へのあの質問に
繋がっていくんだろうし。
帰還エンドで想いがあっさり実ってまたも幸運に恵まれてしまい、
興ざめした「消失」もいいですがやっぱり「幸福理論」が好きです。
「幸運を祈る」という遺書が御影の最初で最後の誠意だと思いました。
「影法師」は想いが実らず不幸でい続けることで一夜への執着が
強まるというどうしようもない感がいいです。
おまけの御影誕生日後日談がひどすぎてうっかり萌えた。一夜に対して鬼畜すぎる。


秋山 咲人
塔ルートで、咲人は他の人と違って明確に一夜の考えに反対し、
親身になって一夜を止めてくれるのが印象的でした。
それだけ一夜の歪みというか、絶望が浮き彫りになった気がします。
でもやっぱり、はっきり止めてくれるほうが嬉しいですね。
藤堂は多分、一夜の痛みに同調/共感しすぎてしまって
立場的にもどの面下げて止めればいいんだ、みたいなところがありそうだけど
咲人ぐらい「君を失いたくない」と訴えかけられるとやっぱり
それが一番いいんだな、という感じがします。
でもラグによって結局強制的に契約は行われてしまうのがまた……
咲人エンドの「望み」は、すごく幻想的で、綺麗で、切なくて好きです。
失った人達の悲哀と痛みを知るから追いかけられない咲人と、
咲人が大切だから連れていけない一夜と。
だから日常に戻ってラストシーンで、約束を守れて
良かったなあとしみじみ思いました。あのイベントがないと、咲人の中で
橘への罪悪感を踏み倒してでも一夜が大事、という感覚がはっきりしないだろうから。
何だかんだ、塔メンバーでは咲人エンドが一番お互い立ち直れそうな気もします。
痛みを共有する仲であり、お互いに必要としあえる仲でもあり。
咲人が一夜を支えに明るさを取り戻せば、一夜の心理的回復も速まりそうな気がします。
どこかの藤堂さんが相手だといつまでも不安に苛まれそうで良くない気がする。萌えるけど。
情景が美しいですし、場面的に盛り上がるし、咲人ルートが一番好きです。
塔ルートは哀愁があって、彩りの鮮やかさが物悲しくてすごく好き。


古賀 瑠璃香
女の子ルートは嬉しい。BLゲーには女の子ほとんど出てこないので
もっと増えて欲しいと思います。
咲人との恋愛相談っぽいやり取りにキュンと来ました。
一夜が瑠璃香に一方的に嫌われてるのに、橘は嫌われてないのを知って
ちょっとイラッとするシーンが可愛い。KOIだよね!(・∀・)ニヤニヤ
そして「それやっぱ惚れてるよ!」 に萌えた。
こういう感じすごく好きです。みんなに観察されてる感が面白い。
でもこの場合、恋愛にうつつを抜かしているうちに他のキャラに
勝手に動かれてしまうのがちょっと寂しいですね。
しかも両想いエンドがない……だと……! まさかの……!
でもある意味、グッドエンド1は究極の愛という感じがします。
一緒に死ぬ相手に、男性にも関わらず一夜を選んだって、深い意味があるだろうし。
それが瑠璃香にとって大きな救いにもなったはずだから。
あと、グッドエンド2のほろ苦い感じも萌えました。


ラグ
正直よく分からない存在なのですが……御影の伯父さんが想像した
「死神」、あるいは「死」そのものかな?
死神みたいな俗世的なものと一緒にするな、と言ってたので
死を象徴するもの、とかそういう感じでしょうか。
あくまで御影の伯父さんが想像した存在っていうのがミソですね。
じゃないと御影に似てるとか、同族嫌悪的な部分に説明がつかないので。
死に対する御影の伯父さんの考え方から、実際に生まれたのがラグかなと思います。

「Endless Dream」はスチルの気合いの入れっぷりが眼福でした。
とても物語的な美しい終わり方で、個人的にお気に入り。
死に魅入られた人間が死を追い求めても、死が終焉である限り
「死」を体現する存在とは決してめぐり逢えない。
死に魅了され、慈しまれ、一緒にいるには「死」を夢見続けるしかない。
だからこそ「Endless Dream」なのかな、と解釈しました。
求め続けることでしか関係性を保てないって、すげー切ないですね。


真相ルート
これが一番すっきりしたルートだったので、一夜は
塔メンバーの誰とも恋愛関係にならずにみんなでわいわいしてるのが
一番だなと思いました。御影の死を以って果たされた約束は
伯父さんの仕業だろうと思います。他にいなさそうだし……
「死神に愛されてるから殺されない」も印象的でした。
なんというラグエンド。

橘が人形展で御影の伯父さんの気持ちを理解してしまい、
一夜にその衝動を向けてしまったことが橘の憂鬱の原因で
御影がああなってしまったのもそうなので、すべての元凶は
御影の伯父さんということで……塔でみんなが色々奪われてたのも
気付いてはいけないものに気付いてしまい、それによって
世の中に絶望し、自殺衝動が芽生えるから奪われてたんですね。
咲人は色の見え方による他者との認識の差、藤堂は音楽への憧れと逃避、
御影は人間と人形が同じに見える絶望、
瑠璃香は男性に性的欲望を抱かれてしまう女としての体。
一夜は元々自殺につながる記憶すべてを忘れてたから奪うものがなかった。
それにしても一夜の家族を奪った御影が皮肉にも
一夜を助けることになったのが何とも言えず……
橘は勝手に完全な被害者だと思ってたので、真相には
びっくりしました。続編では橘を攻略できるみたいなので
すごく楽しみです。


多田野 仁志
本作の最萌。彼はすごく癒しだった。多田野が出てくるとほっとするので
攻略できて良かったです。後日談の一夜誕生日SSでもすげー
気が回る感じで良い奴だなあと思ってたんですが、
その優しい多田野が余裕を失くして怒るのにキュンと来た。
すっごい萌えました。やっぱり親友は最高です。
自分が傍にいるのに死に惹きつけられてしまう一夜に
マジギレするシーンと、夜の道路のやり取りとかも萌えた。
やっぱり一夜は多田野じゃないとダメな気がします。
多田野は距離感の取り方がすごく印象的で、最初は
それが彼の優しさなのかと思ってたんですが、まさかの片想いに
のたうち回りました。だから御影にキスされたと相談すると
誰も誘わずに一人で帰っちゃうのかお前……!
一夜の親友であることにすごくこだわってて、
その立ち位置を脅かしそうな行動を取らないようにと
過剰なほど距離を取っていた涙ぐましい努力にキュンとしました。
でも一夜は割と押しに弱いと思うよ……!!
多田野誕生日SSでは幸せそうで良かったです。
すごい萌えたんですが派生が少なくて辛い。
でも、一夜の「お前が恋人になったら誰が親友になるんだよ」も好き。
親友には恋人には出来ない親友の良さがあるんですよねー!
そしてそんな親友多田野に一夜がすごく気を許してる感じがして
萌え転がりました。それが分かってたからこそ、多田野も
身動きが取れなくなってたのかもしれない。多田野には幸せになって欲しいです。
続編では多田野ルートあるんでしょうか。ぜひ欲しい。
コメント
こちらのフリー作品はやってますが、同人はプレイしてなかったです!
またDLしてみます(*´ω`*)
同人だと、最近プレイした「ここはまどろみの底」と「王様の蝶」が面白かったです。
商業だとノーサンキューが気になってるんですけどw
  • 流音
  • 2013/07/09 6:13 PM
流音さんこんにちはー!
どちらも名前だけ知ってて気になってたんですが
面白いですか!!それは俄然気になってきました……!
ノーサンキューは私も気になってますw
主人公のお馬鹿っぷりが潔くて良いですよね!
  • 大樹@管理人
  • 2013/07/10 10:50 AM
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