死神と少女 日生光ルート感想

  • 2014.05.07 Wednesday
  • 05:12
死神と少女


幻想物語アドベンチャー。
名作の誉れ高い本作、プレイに相当の集中力と覚悟が必要な気がして
なかなか手を出せなかったのですがようやくプレイできて嬉しいです。

美しいレースを重ね合わせたような繊細なグラフィック、
同じくクラシカルで上品な音楽、
そして内に秘める澱を感じさせながら、あくまでも優美で詩的なシナリオは
この作品を象徴するテーマ「Under the Rose」そのもの。

……と、作品にすっかり呑まれてる状態ですがとても楽しんでます。

ネタバレ感想を始める前に、乙女ゲームをプレイすることについて
色々と考えさせられました。

よく勘違いされますが、乙女ゲーで超絶かっこいいメンズが
お姫様である主人公を颯爽と救ってくれて
ちやほやしてくれる作品なんてごくごくまれで、
大体がもやしメンタルのイケメンが
「僕もうダメだよぅ、過去色々あってくじけちゃいそうだよぅ」
弱るのをカウンセリングし、介護し、彼らにさながら母親のように尽くし、
ときには躾ける様を恋というオブラートで綺麗に包みつつ、
主人公が育てて引っ張ってあげる展開がほとんどなのですが、
さすがは「死神と少女」、格の違いを感じます。

そんな世の保守的な乙女ゲーに一石を投じる日生光ルート、
見事に心を持っていかれました。

公式の推奨攻略順で進めていく予定です。

以下ネタバレ感想。
日生 光
死神と少女 応援中!


「恋は盲目」なんて言葉があります。

人は誰かに恋をするとき、果たして、真に目の前にいる人を見ているのか?
あなたは一体、「誰」に心を奪われているのか?

名前なのか、身分なのか、顔なのか、声なのか、その人を取り巻く要素なのか、
あるいは心地良さを与えてくれる都合の良さなのか?

あなたが好きだと想うその人は、本当に実在する人物なのか?
ひょっとしてあなたは、心の中の理想像を目の前にいる人に
投影しているから、夢中になれているだけなのでは?

自分の中で生み出された幻想に夢を見る、それこそが恋。
であるとすれば、日生先輩ルートは紛れもなく恋物語です。

声優さんが声を低くしたときは、日生先輩が真実を語っているとき。
この演じ分けがかなり明確なので、分かりやすくて助かりました。
たとえばコスモスの丘で
「そんなの、君と一緒にいたいと思ったからに決まってるだろ」
とはっきり言ったところは、日生先輩の真実なのですよね。
コスモスの丘の「これで、手向けになったかな」も、
日生先輩は両親にと思わせておいて、実際に意味するところは
日生(本物)への手向けだと解釈しました。
日生(本物)が持ってきた薔薇を紗夜の前で握りつぶす、
それがなにを暗喩するのかは明白です。

日生先輩は、二章の「ユメミルセカイ」で
「夢見ることが分からない」と言いました。
日生先輩は夢なんて見ない。何故なら夢を見てたら演じられないから。
彼は根っからのリアリストで、いついかなるときも人を騙し通すことを
考え続けなくてはいけないから、役柄に取り込まれたりはしない。
いつも冷静。それって、すごく孤独なことでもあります。

恋が夢を見ることであるなら、日生先輩の『嘘』はなにを意味するのか?
日生先輩に兄の代替品として夢を見る紗夜。
でも、日生先輩は紗夜に夢を見てはいない。彼は夢を見ません。
理解できないとすら言います。
なら紡がれる言葉は、意味のないように思えるそれは愛なのか?
嘘が悪だとするならば、日生先輩が捧げるものはなんなのか?
愛は正しくなければいけないのか? 正しくない愛は愛ではないのか?

息を吸うように嘘を吐く日生先輩は、「嘘を吐く」技能以外、なにも持っていません。
でも日生先輩は紗夜に恋をして、日生先輩なりの愛を与えようとしたのですよね。
愛とは人に見返りを求めずになにかを与えたいという気持ちだとしたら、
なにも持っていない日生先輩が唯一与えられるもの(=「愛」)、
それは日生先輩が誰からも盗まず、奪わずにみずから手に入れた『嘘』しかない。
だって日生先輩はそれしか持っていないのです。だから『嘘』しか紗夜に捧げられない。
日生先輩が誠意を見せようとなると紗夜に嘘を吐くしかない。
それも出来るだけ美しく、紗夜の心を救うような、優しい嘘を。

この哀しさがとてもロマンティックで、堪らないです。ぐっと来ました。
愛する人のために優しい嘘を吐くことを肯定するかどうかをこのシナリオは問うているのです。
日生先輩が望むならいくらでも騙されてあげるよ、と思わせてくれます。

で、日生先輩の愛を、紗夜が理解できるかどうかが物語の結末を変えます。
日生先輩の嘘(=愛)を承知の上で嘘の中でともに生きるのか、
日生先輩の嘘(=愛)を受け入れられずに「真実」だと信じて日生先輩に盲目的に騙されるのか。

私は婚約エンドの日生光は日生先輩(偽)だと思いました。
「薔薇についた余計な虫を退治する時に刺で引っ掻いちゃったみたいだ」
このセリフがなんか日生(本物)っぽくないのと、
(本物日生は直情的な印象を受けたのと、薔薇の手入れなんか絶対しなさそう。
 だって出奔前は部屋の片付けだってしなかったのに……)
あとは声優さんの声が、日生先輩(偽)のほうじゃないかなぁ……と思ったので。
でもこのエンディングはプレイヤー(=紗夜)の解釈に任されるのがうまいですね。
日生先輩の愛(=嘘を吐く)を信じられるかどうか。

「僕の会いたい人はね。いないんだよ、お嬢」
日生先輩はこの『いない』を『他界している』と思わせたけど、
彼は決して嘘を吐いたわけじゃないのですよ。
日生先輩は会いたいと想うほど執着する人が『いない』と言ったのです。
木を隠すには森の中とばかりに、日生先輩は
いくつもの嘘に真実を紛れ込ませることで、それでも紗夜に
出来うる形で自分を訴えようとしてて、その厄介な回りくどさが
いとおしいと想ってしまったらもう負けなのです。惚れたほうが負け。

日生先輩の真実に触れるには彼の嘘を暴くしかないのに、
日生先輩が捧げられる愛は『嘘』以外にない。
そんな大きな矛盾を抱えた人だから、日生先輩は良いですね。
嘘を暴きすぎると離れていくし、
騙されるだけだと日生先輩とは永遠に断絶されたまま。
このどうしようもない感に萌えます。

あとクッキーのところで烈火のごとく怒るシーンも良いです。
せっかく手に入れたささやかな、しかも期限付きの幸福を
こんなクソどうでもいいことでぶっ壊されそうになったわけですからね。
日生先輩が我を忘れて怒るのもむべなるかな。

日生先輩は確かに面倒な人だけど、日生先輩の嘘が分かるのは
プレイヤーが物語における傍観者だからだというのも、また皮肉で良かった。
夢見る紗夜ちゃんに辛い真実なんて教えず、優しい嘘を吐き続ける。
日生先輩の「愛」に紗夜ちゃんも、自分もすっかり心を奪われてしまいました。
それでこそ盗賊です。

もともと「盗賊とお姫様」というモチーフがものすごく好きで、
FF9のジタガネとか本当に大好きなんです。
だからこそ日生先輩ルートはものすごく萌えた……萌えつきた。

あと、忘れちゃいけないのは紗夜ちゃんですね。

今のところ、良くも悪くも女の子らしい子だと思っています。
そのヒステリックなところも、愚かしくて依存的で
小鳥のように弱いのにプライドだけは高いところも私は好きです。
なんだか哀れでいとおしい。

紗夜ちゃんは日生先輩に恋をしたわけではない、というのも
またとんでもないですね。乙女ゲー全否定。でも、恋物語なのです。
何故なら紗夜ちゃんは日生先輩を依存対象である兄の代わりにしただけだから。
日生先輩を見て、日生先輩の真実に触れて惚れたわけじゃない。
この兄の存在が、既にあまりにも曖昧で、嫌な予感を禁じ得ないのですが
それはともかくとして、日生先輩は兄の代わりなのです。

公園のベンチで話したときに、日生先輩は紗夜を全肯定する存在になった。
その『嘘』こそが日生先輩の愛で、紗夜はそれに縋ったのですよね。
紗夜は日生先輩を『必要』だと言います。いないと不安で、『必要』。
どこからも日生先輩が好き、という気持ちは感じられません。
紗夜が日生先輩を求めるのは、日生先輩が紗夜を肯定する『嘘』を与えるから。
だからあっという間に身体を許してしまうのも、
いかにも依存的な紗夜ちゃんらしくて、自然な流れに思えました。
全肯定してくれるから自分のすべてを捧げてしまう。

乙女ゲーじゃありえないことではあるけど、
身体の結びつきに依存してしまう女って
興味深い題材だと思うんだけどなあ、個人的には。

話を戻します。
日生先輩は恐らく、紗夜のそうした愚かしさや弱さを
愛おしんでいるのだろうなと思います。
だって嘘は人を騙すためのものだから。
人を騙すことが日生先輩の自己確立法だから。
嘘を見破られたら、日生先輩はなにも捧げられなくなってしまう。
だから共通ルートだと代わりに『真実』となりそうな本を置いて
去ってしまうのですよね。
最初に共通ルートを見たのでうああああってなりました。
ああもう……!!好きだなあ、日生先輩。夢中です。

……まだ1ルートしかやってないのにここまで書くなんて
これから先どうなるのかちょっと不安ですが、
次は桐島先輩、行ってきます。
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