死神と少女 夏帆の感想ともうひとつ

  • 2014.05.22 Thursday
  • 00:44
死神と少女


ナチュラルに夏帆ちゃんの感想を忘れてました。
あと、もうひとつの考察です。

以下ネタバレ感想。
<私の大事なお人形さん、そして親友>宮沢夏帆
死神と少女 応援中!

夏帆は窮地に陥ったときに、紗夜が自分を庇ってくれたことに
恩義を感じて、紗夜に懐くようになります。
夏帆は紗夜の絶対的な味方であり、紗夜の代わりに怒り、泣いて、
望まれるままに笑い、心配してくれる子です。

夏帆は口振りから察するに、両親から愛された子であり、
素直でまっすぐな気質ですが、上手に演技もできる非常に賢い子です。
一見して夏帆のほうが紗夜に懐いてべたべたしてるようでいて、
実はフタを開ければ夏帆のほうが紗夜のためにそう振る舞っていたと
明らかになる展開は秀逸でした。

傷つけられるのを恐れて心を閉ざす紗夜を、
感覚的ではあれど夏帆は敏感に察しています。
だからこそ、紗夜が拒む意志を少しでも見せれば深入りしません。
そして、紗夜が楽だと感じられる言動を意識的に選び取ります。
紗夜が好きだから助けたいけど、紗夜が助けを望まなければ
「明るく楽しい親友」として一歩引いてくれる、実はとても大人びた子です。
こうした処世術を身につけられたのは、夏帆もかつて孤独で、
プライドの高さゆえに人に素直に近づけない気持ちを理解できるからでしょう。

他人に対して一方通行で純粋な好意を示すのは、実はとても勇気のいることです。
誰だって嫌われるのが怖いに決まっています。
ツンと澄ましてるだけで人が集まってきてちやほやしてくれるなら
それに越したことはありませんが、現実でそんな展開はない。
遠野紗夜も、美しいから脈略なく告白はされますが、
夏帆に出逢う前の友人はゼロでした。
幼少期から人懐っこい性質か社交的な人ならともかく、
夏帆は明らかにそういう要領が良いタイプではありません。
それも紗夜は皆から遠巻きにされている、「お高く止まったお嬢さん」です。

でも夏帆は気にしません。周りからどう見られようと、
「紗夜ちゃん紗夜ちゃん」と無邪気に慕う素振りで接します。
それが一番、紗夜にとって受け入れやすいと分かっているからです。
夏帆にそれが出来て紗夜は出来ないのは、夏帆は両親の愛を一身に受けて育ち、
今も良い関係を築けているからに他なりません。
あと、夏帆は根が素直なのだと思います。

料理を教えてくれたり、代わりに夏目くんにビンタしてくれたり、
夏帆の存在は紗夜と読者にとって最後まで心強く、救いとなるものでした。
紗夜が夏帆の友情に気付き、自分が夏帆を「お人形さん」として閉じ込めていたのだと
悟ってから、夏帆のためを想ったつもりで夏帆の気持ちを無下にしたことで、
ぎくしゃくしてから仲直りする展開はすごく良かったです。うるっとしました。
夏帆ちゃんは料理も裁縫もできるし、天真爛漫で夏目くんとのコンビも可愛いです。


さて、もうひとつは紗夜の継母である白雪と実母である椿姫についてです。

遠野紗夜を取り巻く二人のお姫様
<白雪姫コンプレックス>遠野 白雪
<カメリアコンプレックス>遠野 椿姫

「鏡よ、鏡……」と遠野白雪が鏡に語りかけるシーンと名前からして、
明らかに遠野白雪は「白雪姫」をモチーフにしています。

で、心理学用語には「白雪姫コンプレックス」という言葉があります。
参考:白雪姫コンプレックスとは

書かれている通り、白雪姫コンプレックスとは
母親の娘に対する憎悪を意味する概念を指します。

また、白雪姫は母娘の確執を描いていて、
「美貌」を巡る老いていく一人の女と若い女の対立の物語です。
「処女雪」なんて言葉がある通り、真っ白な雪は処女性と
無垢なるものの象徴でもあります。これは遠野白雪の気質を表しています。

けれど生きとし生けるものは皆、老いるもの。
若くて無垢なる白雪姫は、やがて王妃のように老いる日が来る。
遠野白雪という名前は、白雪姫の物語にある通り、美貌への執着によって
若い娘を虐待する母親を表しています。

遠野白雪は確かに、最初は紗夜に優しかったかもしれません。
直接的には紗夜に手を出してもおらず、暴言を吐いてもいない。
けれど、「子どもに罪悪感を起こさせてコントロールする」
「親としての責任を果たさない」
ことも虐待のひとつです。
娘をある日突然無視して、目の前で自殺して見せる。
母親ができる最大限の虐待です。遠野紗夜は避け出した継母の愛を得ようと追いすがり、
ご機嫌を取ろうと必死になるあまり不安でいっぱいになります。
そうして自殺されてから事実、遠野紗夜の心には消えない傷が残りました。
遠野紗夜は「自分が美しいことは罪深い」と認識してしまいます。

遠野白雪は大人になりきれなかった子どもでした。
親としての責任を果たせず、いつまでも子どものように
庇護者を求め、それを夫から得られなかったがために紗夜を間接的に虐待します。
結婚して親になったのに最後までお姫様気分から抜けだせず、
自分で自分の人生を良くしようと努力することは一切なかった。
これが遠野白雪が紗夜にした心理的虐待です。

<カメリアコンプレックス>遠野 椿姫

続いて、遠野白雪の対となる実母、遠野椿姫です。
心理学用語には「カメリアコンプレックス」という言葉があります。
参考:カメリアコンプレックスとは

カメリアコンプレックスとは、不幸な女性を見ると救いたくなる男性心理を指し、
まさに遠野父(名前忘れました)を表します。
遠野紗夜は本当に遠野父の娘だったのか、それはわかりませんが遠野父は受け入れます。

アレクサンドル・デュマ・フィスの古典、「椿姫」の主人公は
高級娼婦マルグリット・ゴーティエです。
ここではオペラ版を参照します。オペラ版:椿姫の名前はヴィオレッタ。
処女性の白雪姫とはここでも対となります。
そして、オペラの「椿姫」はLa traviata(ラ・トラヴィアータ)、
直訳すると「道を踏み外した女」という意味があります。

娼婦は美貌を盾に春を売る商売です。
実際に遠野椿姫が娼婦だったかどうかは描かれていませんが、
遠野椿姫が美貌を利用してのし上がるタイプの女だったことは間違いありません。

遠野椿姫の遠野紗夜への虐待は分かりやすいものです。
言葉の暴力で継母に懐く紗夜をいじめ抜きます。
もともと自分が遠野紗夜を養子に出したのだから
紗夜が継母を慕うのは当たり前です。
気になったのは、遠野椿姫の遠野紗夜へのいじめ方が
なんというか、本当に子どものようだったことです。
「あんたなんて嘘つきじゃない!」のあたりとか。
描かれ方は真逆ですが、つまりは遠野椿姫もまた、
大人になりきれないお姫様気分の子どもでしかなかった。

マルグリット・ゴーティエ/ヴィオレッタは恋人への愛のために
身を引く高潔さがありますが、遠野椿姫にそうした殊勝さは
受け継がれなかったようです。

椿姫(マルグリット/ヴィオレッタ)は、アルマン/アルフレードと
愛し合いましたが、アルマン/アルフレードの父親から
高級娼婦である過去を咎められ、アルマン/アルフレードの妹の
縁談に差し障りがあるため別れるよう告げられ、
恋人のために泣く泣く別れを選択します。

遠野父が遠野家の名前を得るために遠野白雪と結婚したことから見て
遠野椿姫は家格がなかったために捨てられたと見ることもできます。

ただ、どうにもイメージが悲劇のヒロイン:椿姫と結びつかないので、
ここでは青年アルマン/アルフレードだった遠野父が
年若き実業家だったことから、遠野父を見てみます。

遠野父は自分のことしか考えられない人です。
原作と同じように、アルマン/アルフレードは恋人が高級娼婦であり、
色々なしがらみがあることが理解できません。
そのため、愛を貫けないマルグリット/ヴィオレッタを詰ります。
父親に騙されるパターンもありますが、いずれにせよ
アルマン/アルフレードは目の前の物事を表面的にしか
見ることができない人物です。なぜマルグリット/ヴィオレッタが
別れを告げたか、普通ならちょっと考えれば分かることなのに、
自分の気持ちでいっぱいいっぱいで相手を思いやる余裕がありません。
恐らくこうした気質が、そのまま遠野父に受け継がれています。

遠野父は甲斐性がなく、王子様からは程遠い存在です。
遠野白雪の誤算は遠野父が金を稼ぐことしか能のない男だと見抜けなかったことで、
遠野椿姫の誤算は遠野父が思った以上に紗夜を愛していたことでしょう。
一家離散になったのは、遠野紗夜をどうでもいいうざったい存在と
思っている遠野椿姫に、遠野父が反発したからではないかと考えています。
で、遠野椿姫が金食い虫で嫌になったからとか?この辺りは想像です。
遠野父と遠野椿姫はどっちも自分のことしか見えないあたり、
お似合いだと思うんですが。

遠野白雪も遠野椿姫も、「大人」を引き受けて、
「親」という役割を果たす覚悟がない子どもでした。
いつまでもいつまでも自分だけが愛されることを望む、
いわば自己愛の塊で、そう考えると遠野父もそうですね。
であるならば、「死神と少女」は自己愛性人格障害者
取り巻かれ、虐待の連鎖に巻き込まれた<お姫様>遠野紗夜の物語で、
自己愛性人格障害と虐待の連鎖からの脱却を目指すことが目的だったのかもしれません。
参考:自己愛性人格障害とは

以上で、「死神と少女」の考察は終わりです。
なにか思いついたら書くかもしれませんが、
とりあえずこれで区切りをつけたいと思います。
ありがとうございました。
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