刀剣たちが部隊規則を新入りに伝えていく散文

  • 2015.03.03 Tuesday
  • 14:13
オールキャラ、完全な自己満足です。審神者は存在していますが描写はありません。
見ようによっては恋愛要素と思しきところがありますが、相手を限定しておりませんのでそれぞれお好きにご想像ください。歴史や口調はあいまいです。
なお、オチはありません。繰り返す、オチはありません。
当本丸での禁止事項

一、無益な殺生(小動物・人・刀剣を含む)
一、窃盗(街で物を入手するときはお金が必要です)
一、決闘、及び私闘。それに伴う抜刀、戦闘暴力行為
一、借金
一、撤退命令の無視
一、味方の批判
一、許可なく本丸から出ること(遊びに行くときは外出許可を得てください)
一、時空跳躍、未来、歴史、本丸、味方、敵などに関する機密情報の漏洩

注意しても改められないときは刀解の対象となります。
みんなで仲良く、協力しあって過ごしましょう。


===


初期刀:加州清光
「これが隊規ね。分かったよ、主。まあ今は俺しかいないけど。……あ、そうなの? りょーかい。んじゃ、俺が次に来た刀剣にこれを説明してけばいいのね。後で主がちゃんと理解できてるか確認するんじゃないの? ――だと思った。問題ないよ、局中法度と同じだし。任せといて」



加州清光 → 愛染国俊

「俺が加州清光。ま、よろしくな。それでこれがウチの局中法度――ま、決まり事ってヤツ」
「えー、なんだよソレー。めんどくさいんだけど」愛染国俊は嫌そうに眉を寄せる。
「文句言うなっての、そんな難しくないから。いいか? ちゃんと聞けよ――」
加州清光は禁止事項を説明すると、愛染国俊を見た。愛染は迷い込んだ野良猫にきらきらした眼差しを向けている。
「……おい。ちゃんと聞いてたか? 二度は言わないからな。あとコレ、次の刀にお前が教えるんだぞ」
「えっ!? あーうん、ちゃんと聞いてたって! バッチリ! 次のヤツにも言っときゃいいんだろ? 任せとけって! なあ、もう行っていいか!?」
「後で主が確認するからな!」
「わかってるって! おーいネコ、待てー!」愛染国俊は駈けていった。
「大丈夫かよ、アイツ……」
加州清光の呟きは耳にしないまま。


愛染国俊 → 薬研藤四郎

「俺っち、薬研藤四郎だ。よろしくな」
「オレは愛染国俊! よろしく! そうそう、殺しダメだって! あとはテキトーに判断しろよな!」
「ん? ああ、そうか。分かった」頷く薬研に満足すると、愛染はおやつの話に切り換えた。

◆処分|愛染国俊:審神者による呼び出し。薬研藤四郎、加州清光より詳細な説明を受ける。



薬研藤四郎 → 今剣

「――ってわけだ。どうだい、なにか分からないところはあるか? 今剣」
「はい、よくわかりました! だいじょうぶですよ! それをぼくがつぎのかたなにおつたえすればいいのですね?」
薬研藤四郎の問いに、今剣は元気に頷いた。
「ああ、そうだ。ま、仲良くやろうや」
「はい! やげん、おわったならいっしょにあそんでください! あいぜんにかくれんぼをならったんです!」
「おお、いいぜ。内番も終わったしな。じゃあ、愛染と加州清光も呼んでくるか」
「あるじさまはあそんでくれるでしょうか?」
「よし。声かけるか」
「わあい、やったぁ! みんなであそびましょう!」


今剣 → 前田藤四郎

「――だそうですよ! ぼくたちがなかよくして、あるじさまのいうことをきき、かってにそとにでなければだいじょうぶ!」
今剣はえっへんと胸を張り、前田藤四郎は神妙な面持ちで頷いた。
「教えてくださってありがとうございます、今剣どの。規則はきちんと守ります。その話を次の方にお伝えできるよう、後で主君に確認をしておきますね」
「まえだ、ぼくのことはいまのつるぎでいいですよ! ぼくたち、おともだちなんですから! さあ、けまりをしましょう!」
前田藤四郎は顔を輝かせると大きく頷き、今剣と連れ立って駈けて行った。


前田藤四郎 → 宗三左文字

「――と、以上です。宗三左文字どの」
「……はぁ」宗三左文字は気だるく頷く。その様子に、前田藤四郎はやや不安な表情で口を開いた。
「あの、なにか不明点がありましたか。主君に確認をしたのですが……」
「いえ――ありませんよ。ありがとう、前田どの」
宗三左文字は大儀そうに言うと、横を向く。
「では、次の方へお伝えしてくださいね」
「え?」
「お時間をいただきましてありがとうございました。失礼いたします」
前田藤四郎は丁寧にお辞儀をすると、踵を返す。
「ちょっ、え? 聞いてませんよ、待ちなさ――……ああ、行ってしまったか」
宗三左文字は軽く息を吐くと、眉根を寄せ、落とすように呟いた。
「まったく、面倒な……。どうせここでも、僕は籠の鳥でしかないのに……」


宗三左文字 → 鶴丸国永

「わっ! どうだ、驚いたか!?」
「――なにをしてるんです、鶴丸国永」
「いいだろう、これ。万屋で主に買ってもらったんだ」
「……馬鹿らしい」
「なんだ、つまらん反応だな」鼻メガネを外し、鶴丸はうろんげに宗三左文字を見る。
「ずいぶんとつれないじゃないか。俺が来てからもう数日だぞ。挨拶ぐらいしたってばちはあたらないぜ」
「……」
「で? 俺は加州清光に、宗三左文字から話を聞くように言われたんだが?」
「ああ、……そうでしたね――…………。…………………………はぁ」
「どうした?」
「忘れてしまいました」
「は?」
「ですから、忘れました。加州清光にでも聞いてください。それじゃあ、僕はこれで」
「はぁ!? おい待て、宗三左文字!」
宗三左文字はその声を無視すると、鶴丸国永を残し、さっさとその場を後にする。
「――あいつめ。仕方ないな。……加州清光にでも聞いてくるか。あっと驚くような話が聞けるといいんだが」
鶴丸は頭をかくと、再び鼻メガネを装着して加州清光を探しに行った。


◆処分|宗三左文字:審神者による呼び出し。加州清光が面倒がったため、鶴丸国永は前田藤四郎より詳細な説明を受ける。なお鼻メガネは今剣に好評だった模様。


鶴丸国永 → 平野藤四郎

「わっ!!」
「うわぁ!?」
「ははっ、驚いたな!」
愉快そうに姿を現した鶴丸国永に平野は表情を引き締める。
「なるほど、いついかなるときも油断せぬよう、心構えが大事なのですね! 勉強になります」
「……ああいや、そういうわけじゃないんだ。すまんすまん。平野、実は君を探していたんだ」
鶴丸国永は軽く平野の肩を叩くと、「本丸には決まり事があってな、」と語りだした。
「――ってことらしいぜ。で、この話は平野が新入りに伝えるんだぞ。驚いたか?」
「はい、承知いたしました! 教えてくださってありがとうございます、鶴丸国永さま」
「俺のことは鶴丸でいいさ。さあ、堅苦しい話はこれで終いだ! 遊ぼうぜ、平野!」
「えっ。ですが僕は、内番が――」
「いいっていいって! さあ、今日は缶蹴りだ!」
鶴丸国永は平野の腕を引くと、短刀たちとひとしきり缶蹴りに興じたのだった。

◆処分|鶴丸国永と平野藤四郎:内番をこなさなかったため次の日は二人で内番。加えておやつ抜き
(後でこっそり前田藤四郎と薬研藤四郎に分けてもらった)


平野藤四郎 → 小夜左文字

「――とのことです。僕の説明で、分からないところがあれば質問してください」
「……」
「あの、小夜左文字どの……?」
「――それは、復讐にどんな関係があるの」
「えっ……いえ、復讐には関係ないかと思われますが……」
「ないの」
「はい、恐らくは」
「そう……」小夜左文字は考えこむように視線をさ迷わせてから、頷いた。
「分かった。命令があるまで殺さなければいいんだね」
「は、はい……そう、……なのかな……?」
「じゃあ……僕、馬当番だから……」
「あ、はい! それじゃあ、また後で」
小夜左文字は頷くと、去って行った。


小夜左文字 → 蜂須賀虎徹

「あの……」
「ん? なんだい?」
「……決まり事があって……」
小夜左文字はつっかえながら、説明を終えた。
「……ということだから……、命令があるまでは、殺さないで……」
「――? なるほど。よく分かったよ、ありがとう」
蜂須賀虎徹は小夜左文字の頭を撫でる。
小夜左文字は戸惑ったような顔をしてから、ぺこりとお辞儀をすると、踵を返した。
「それにしても、いつかは味方を手にかけなければいけないのか?
 平和な本丸だと思っていたんだが……。
 命令とはいえ、気が乗らないな。一応、誰が怪しいのか主に確認しておこう」
蜂須賀はゆううつそうに言うと、自室に戻っていった。

◆処分|小夜左文字:審神者による呼び出し。


蜂須賀虎徹 → 秋田藤四郎

「――ということらしいんだ。分かったかい?」
「はい、分かりました、蜂須賀虎徹さま! ご親切にありがとうございます!」
「いや、いいんだ。なにか分からないことがあれば、いつでも俺を頼ってくれ」
和やかに決まり事の説明を終えると、蜂須賀虎徹は金の鎧をきらめかせながら、颯爽とその場を後にした。


秋田藤四郎 → 大和守安定

「――ということなんです」
「……」大和守安定はむっつりと黙りこんでいる。
「あ、あの……? すみません、僕の説明、わかりにくかったでしょうか」
こわごわと秋田藤四郎が訊ねると、大和守安定は「ああ、ごめん」と笑みを浮かべた。
「それ、黒猫もだめかな。だって、獣じゃない。それにほら、不測の事態もあるだろうし。そういうときは斬ってもいいよね」
「え……だ、だめだと思いますが……」
秋田藤四郎は眉を下げる。
「でも、向こうが攻撃してきたならいいでしょ?」
「い、いえ……あの……」

「い い よ ね ?」

「う…………、は、はい……」
「そう、良かった」

◆処分|大和守安定:審神者による呼び出し。黒猫の殺害を禁じられる。


大和守安定 → 五虎退

「――ってことなんだって。分かった?」
「は、はい、すみません」
「なんで謝るの?」
「いっ、いえっ、すみません!」
「??? ――まあいいや。新入りにちゃんと伝えるんだよ。じゃあ僕、行くね」
「……あ、あのっ!」
「うん?」
去ろうとした大和守安定を震え声で呼び止め、五虎退は精一杯の勇気を振りしぼって言った。
「あ、あの……、加州清光さまにお伺いしたのですが……、あの、お願いです。
 僕の虎はどうか食べないでください、あの、何でもしますから。お願いです。この通りです」
五虎退は土下座して頼み込んだ。傍に虎たちが寄り添い、無垢な瞳で大和守安定を見上げる。
「……」
大和守安定はたっぷり五秒ほど黙り込んだ後、口を開いた。
「……ねえ、ちなみに、加州清光にはなんて聞いたの」
「へっ? は、はいっ。大和守安定さまはきょうぼ、いえ、大変凛々しくていらっしゃるので、小動物を見かけたら斬らずにいられないから用心するようにと、」
「おいテメェ加州清光!! 出てこいやオラァ!!!」
「ひぃっ、すみません、すみません! 僕が悪いんです、すみません!」

◆処分|大和守安定と加州清光:審神者による呼び出し。私闘禁止を破り抜刀したため、本丸中の雑巾がけを命じられる。


五虎退 → 骨喰藤四郎

「……ということらしいんです、すみません」
「ああ、分かった」
「そ、そうですか。よかったぁ」
五虎退はふにゃりと笑う。
「ところで、その虎……戦闘のとき、邪魔にならないか」
「えっ!!? す、すみません、虎くんたちにはちゃんと言っておきますので、どうか一緒に戦わせてください、お願いします、すみません!」
「ああ、すまない。邪魔じゃないならいいんだ」
言うだけ言うと、骨喰藤四郎は虎を撫でて去って行った。


骨喰藤四郎 → 歌仙兼定

「――だそうだ。新たな刀にも伝えておいてくれ」
「ああ、分かったよ。ありがとう。しかしこの規則……」
「なんだ」
「少し不足だと思わないかい? どうせなら、皆の身だしなみや立ち振る舞い、礼儀作法も決めるべきだよ」
「……そうか」
「君はどう思う?」
「興味がない。じゃあ、これから出陣だから」
言い捨てると、骨喰藤四郎は歌仙兼定を一顧だにせず立ち去る。
「……うーん、もっとみんなにも雅に振る舞ってもらったほうがいいと思うんだがなぁ。主に提案してみるか」


歌仙兼定 → 山伏国広

「――ということなんだ。覚えたかい」
「カッカッカッ! 規則の順守、これもまた修行!」
笑う山伏国広に、歌仙兼定は軽く頷き、
「そうかい、それはなにより。ところで君、そのハチマキのことなんだが、少し汚れているし、雅に欠けるね。
 頭襟(ときん)ならもっと良いものを見立ててあげられるよ」
「これは歌仙どの、心遣い、痛み入る。しかし、拙僧はまだ修行の身であるゆえ。ハチマキで充分なのである」
「そうか、これは失礼した。気が利かずに申し訳ない」
「いやいや、お気になされるな。また今度、茶でも飲もう。それでは、拙僧はこれにて」
「ああ。とっておきの茶を点てよう」
二人は丁寧に礼をすると、その場で別れた。


山伏国広 → 乱藤四郎

「カッカッカッカッ! 新たな仲間を歓迎すること、これもまた修行である」
「ねえ、おじさんなぁに〜? ボク、ゆっくりしたいんだけどなぁ」
乱藤四郎は退屈そうに言うと、じろりと山伏国広を見た。
「そう言うな。良いか、本丸には決まり事があるのである」
「へぇ、そうなんだ。どういうの?」
「それは――」山伏国広は規則を説明した。
「――というものだ。質問があれば、なんでも申されい。拙僧がお答えしようぞ」
「ふうん……」乱藤四郎は髪をいじりながら答えると、山伏国広に向き直った。
「ねえ、おじさん。その目元の朱は、自分で入れてるの?」
「カッカッカッカッ! 無論、これも修行のうちである」


乱藤四郎 → 鳴狐

「――って決まりなんだって〜。ねえ、ボクの話、ちゃんと聞いてた?」
「もちろんでございますとも!」
鳴狐は頷き、肩に乗っていた子狐が尻尾を振る。
「いやはや、ありがたいですなぁ〜。この私めも、本丸にいる間は安心というわけですな」
「どうかな。わかんないよ?」
「へっ?」
乱藤四郎はにんまりと笑みを深め、
「実はね、ボク見ちゃったんだ〜。こないだてれびでね……狐の毛皮を羽織ってる人がいたの!
 未来ではね、それがおしゃれなんだって。だから子狐くんもいつか……」
「ひぃっ……、な、なんと……」
「まあ、ほとんどふぇいくふぁーっていうニセモノの毛皮みたいだけど……、ってあれ?
 鳴狐? どこ行っちゃったの〜?」

◆処分|乱藤四郎:審神者による呼び出し。鳴狐と共に小狐の誤解を解く。


鳴狐 → 鯰尾藤四郎

「あっ、鯰尾どの! こんなところにおられましたかー!」
「お、なになに? 俺に用事〜?」
「はいっ! 実は、本丸にはいくつかの決まり事がございまして、僭越ながら、私めが鳴狐に代わってご説明申し上げようかと」
「ふうん、そうなんだ。どういうの?」
「はい、それは――」
鳴狐の肩で、子狐は喜怒哀楽を交えながら決まり事の説明をした。
「……というものなのでございます!」
「へええー、そんなのあったんだ、知らなかった。教えてくれてありがとう」
「いえいえ、お安い御用でございますぞ!」
「でも良かったぁ。それさ、本丸に女人を連れ込むのは、アリ、だよね?」
「へっ……」
ぽかんと口を開ける子狐に、鯰尾はにやりと笑う。
「いやいや、冗談冗談! でもホラ、町娘といい仲にならないとも限らないし……なんてね」
鼻歌交じりに鯰尾藤四郎は去って行った。
「な、鳴狐……、どうしましょう。私めのせいで、この本丸が爛れた事態に……!?
 はっ、しかし確かに禁止されてはおりませぬ。鯰尾どのが正しいのでしょうか!?」
鳴狐は子狐を撫でると、その場を後にした。
「うう……、しかし、女人を本丸に連れ込むのは風紀上、いかがと……いや、しかし、確かに客の来訪は禁じられてはおりませぬ……」
子狐の呻きだけを残して。


鯰尾藤四郎 → 堀川国広

「俺は鯰尾藤四郎、よろしく。それで、本丸には決まり事があるから、説明したいんだけど」
「あっ、それって局中法度じゃない?」
「うん? 何それ?」
目を輝かせる堀川国広に、鯰尾藤四郎はわずかに首を傾げる。
「隊規でしょ。一、士道ニ背キ間敷事――ってやつ」
「ああ、そんなに堅苦しいわけじゃないよ。だって女人の連れ込みも大丈夫なくらいだし」
「えっ、そうなの。うーん、主さんがいいなら、僕が口を出すことじゃないけど……」
堀川国広は目を丸くしてから、複雑そうな表情になった。
「まあ、実際にやったことはないけどさ。でも禁止されてはいないでしょ」
「それもそうだね。教えてくれてありがとう」
二人が朗らかに笑い合い、その場を去ったのだった。


堀川国広 → 山姥切国広

「やあ、兄弟――って、僕が言うのは不快かな。僕は本物かどうか、定かじゃないし」
山姥切国広は自嘲する堀川国広に対して首を横に振ると、ぽつりと呟く。
「俺なんか所詮は写しだ。堀川のことをどうこう言える立場じゃない」
「い、いや……。うん、違う話をしよう! そうだ、本丸には局中法度があるんだよ」
「なんだそれは」
山姥切国広は視線を堀川に投げる。
「本丸での決まり事。この話を、兄弟が新しい仲間にしてあげてね。――へへっ」
「なにがおかしい。俺が写しだからか」
「まさか!! 違うよ、兄弟!」
堀川国広は驚いて否定した。照れたように続ける。
「そうじゃなくて、僕、説明できてうれしいんだ。土方さんはどんな風に言ってたかなって思って」
「……前の主か」
「うん、そう。ええとまずは、ひとーつ!」
堀川国広は土方歳三の声、振る舞いを思い出しながら説明をする。
「――どう!? 僕、うまくやれてた!? ……って、分からないよね。
 兼さんがいてくれればな……。ああ、加州清光と大和守安定に訊いてみようかな」
「……俺はよく分からないが」
山姥切国広は迷いながら口を開くと、「威厳があった、と、思う」と言った。
「本当!? 僕、トシさんみたいだった!?」
「あ……、ああ。多分……」
「へへっ、やった……! 兼さんが来るまでにたくさん練習しとこう。そうだ、あとね、兄弟」
「なんだ……」
「女人を連れ込むのは大丈夫みたいだよ」
「……。……俺なんかと寝たがる物好きがいるとは思えないが……まあ、分かった。ありがとう、……兄弟」
「……! うん! じゃあ、後でね!」
堀川国広は上機嫌で手を振り、山姥切国広のもとを後にした。


山姥切国広 → 和泉守兼定

「来たか。あんたに、説明しなくちゃならないことがある。本丸での決まり事だ」
「おっ、局中法度だな!?」
和泉守兼定は思わず身を乗り出した。
「局中法度なら今でも暗唱できるぜ! ひとーつ! 士道ニ背キ間敷事――」
「い、いや……おい……」
和泉守兼定は、山姥切国広の控えめな呼びかけが聞こえないかのように声を張り上げ、局中法度を言い終えた。
「――どうだ!? これだろ!」
「い、いや……堀川国広に聞いてたものはそれだが、そこまで厳しくはない」
「へえ、そうなのか?」
「ああ。女人を連れ込むのも問題ないそうだ」
「はぁ? そりゃまあ、屯所に女人を連れ込む奴もいたこたぁいたが――俺ぁ、好かねぇな」
和泉守兼定は眉を寄せる。山姥切国広は「俺が決めたわけじゃない」とそっけない。
「じゃあ、伝えたからな。今度の刀にも、ちゃんと教えてやってくれ」
「おう、任せな! バッチリ局中法度を叩き込んでやるからよ!」
山姥切国広は頷くと、白い布を翻して戻って行った。


和泉守兼定 → へし切長谷部

「よーし、よく聞け新入隊員! これから局中法度の説明を始める! ひとーつ! 士道ニ背キ間敷事――」
へし切長谷部は眉間にシワを寄せながら、和泉守兼定の話をひと通り聞き終えた。
「――ってわけだ、よ〜く心得ておけよ!」
「……質問がある」
「おう、なんだ!?」
「条文に背いた者は切腹なのだな」
へし切長谷部の問いに和泉守兼定は大きく頷く。
「おう、無論だ! まあ、心配しなさんな。なんせ殺さなければいいんだ。ついでに女人を連れ込むのも、所帯をもつのも、遠征中の買い食いも自由だってんだからな、規則は緩〜いほうだぜ。それに比べて俺たち新選組は――」
「ま、待て」
「なんだよ。これからがいいところだってのに」
不快そうに和泉守兼定は眉を上げるが、へし切長谷部はそれどころではないといった様子で追いすがる。
「今なんと言った。遠征中の買い食いはとにかく、女人を連れ込み、所帯をもつことも可能なのか」
「らしいぜ」
和泉守兼定は大きく頷く。
「では……、殺生でなければ良いのだな。主に仇なす者あれば、死なない程度に痛めつけるべしと」
「さあ? まあ、そうなんじゃねえか? 味方を斬らなきゃいいんだからよ」
「ほう……。これは良いことを聞いた。主の意に沿わぬ者がいれば、手足の一本や二本、落としてくれよう」
「おおこわ。ま、ほどほどにしとけよ」
和泉守兼定はへし切長谷部を見ると、興が削がれたといった様子で「じゃあな」とぞんざいに声をかけ、去っていく。
残されたへし切長谷部は不気味な笑みを浮かべていた。


へし切長谷部 → にっかり青江

「今から、本丸での規則を説明する。これは主命であると心得よ」
「はいはい、なんだい」
「……にっかり青江。なんだその態度は。主命を請けるのだ、背筋を伸ばせ」
へし切長谷部の厳しい声もどこ吹く風といった体で、にっかり青江は腕を組む。
「まあまあ、長谷部くん。そんなにカリカリするもんじゃないよ。それで、主はなんて?」
「フン……。まず、武士らしい行動をする必要があるそうだ」
「――はあ。武士らしく、ねえ」
「詳しくは知らん。和泉守兼定から説明を受けた。それから――」
へし切長谷部はひと通り説明を終えた。
「――ということだ。あと、女人を連れ込み、所帯をもっても良いらしい。遠征中の買い食いも問題ない」
「へえ、ずいぶんと自由なんだねぇ。それじゃ早速、今晩から誰か迎えるとしようかな」
「好きにしろ」
意外そうに言うにっかり青江に、へし切長谷部はどうでもよさそうに受け合う。
「もうひとつ、主に仇なす者は死なない程度に傷めつけていい」
「ああ、殺さなければいいんだね」
「そうだ、殺さなければいい」
「分かったよ。ありがとう、長谷部くん」
「新しい刀にはお前から説明するように。以上だ」
へし切長谷部は言い終えると、青江の答えも待たずにさっさと背を向ける。
にっかり青江はその背を見送った後、考えるような素振りをして、「主からはそんな印象は受けなかったけど……人は見かけによらないよね。それとも、長谷部くんが純粋なのか、どっちかな」と言った。


にっかり青江 → 陸奥守吉行

「ああ、陸奥守吉行くん。ちょっといいかい」
「おお! わしに用があるがか?」
陸奥守吉行は快活に笑って立ち止まる。
「うん、そうなんだ。君と僕の二人きりで、内緒話をしたくてね」
「おう、なんじゃ。わしが力になれることじゃったら、なんでも言っとぉせ」
「――、うん、君はいいやつだね」
にっかり青江はうんうんと頷いて笑みを深めた。
陸奥守吉行はきょとんとしたが、すぐに「うっはっは! 褒めてもなにも出せんぜよ!」と笑う。
「実は、規則があるらしいんだ。それで――」
青江はひと通り説明した。
「それで、他にもね。なんと、女人を連れ込んであんなことやこんなことをしてもいいそうだよ」
「な、なんじゃと……」
ごくりと陸奥守吉行は唾を飲んだ。
「それだけじゃない。主は衆道にもご理解が――」
「お、おお……」
「だから、春画も――最近は絵が動いて、ますます卑猥に――なんとタコも――」
「な、なんと……」
陸奥守吉行の耳元で青江はひそひそとささやく。
気がつけば、陸奥守吉行はそわそわと落ち着きのない様子で、頬を赤らめていた。
「い、いやあ……、意外じゃったのぉ……。あの主が……そがなことまで……」
「うんうん、良い主をもてて僕らは幸せだよね。でもね、主もきっと言いにくいから僕たちに伝言を頼んでるんだと思うんだ」
「な、なるほどのぅ」
「他には、武士らしく行動して、主に仇なす者は死なない程度に拷問するように、だって」
「そがなことまで……。致し方ないのう」
「どうだい? ――秘密を守れるかい?」
陸奥守吉行は呆然とした様子だったが、神妙な面持ちで頷いた。
「分かったぜよ。わしも男じゃき、秘密は必ず守っちゃるきに」
「うんうん、よろしくね。新しい子にも、ちゃんと教えてあげてね」
「うっ……。わ、分かったぜよ……」
陸奥守吉行は顔をひきつらせながら、頷いた。


陸奥守吉行 → 同田貫正国

「お……、おう、同田貫の。すまんが、ちっくといいか」
「ああ? なんだよ」
もじもじする陸奥守吉行を不気味そうに見ながら、同田貫正国は足を止めた。
「じ、実はの……。本丸には、規則があっての――」
陸奥守吉行は説明を始める。
「――あァ!? ンだよ、そりゃあ。俺たちは刀だろうが。武士らしくもクソもねえっての! 大体、女だの買い食いだの、挙句の果てに拷問だぁ? ナメてんのか?」
「い、いや、知らんぜよ。わしもそう聞いたきに」
おろおろする陸奥守吉行に、同田貫正国は「気に入らねえ」と吐き捨てた。
「ちょっとあいつに話つけてくるわ」
「な、なんじゃと!? いやこれは、秘密で、」
「ンなこと知るか! 規則を秘密ってなんだよ、意味が分からねえ!」
同田貫正国は足音も荒く審神者のもとへ向かい、抗議した。

――そうして。


◆処分|鯰尾藤四郎、へし切長谷部、和泉守兼定、にっかり青江:審神者による呼び出し。
 数時間の説教の後、五時間の正座。
 加えておやつ抜き(堀川国広が分けようとしたが、見張りを任せられた短刀たちに見咎められて没収。堀川国広も後に付き合いで正座する)。


===

当本丸での禁止事項

一、無益な殺生(小動物・人・刀剣を含む)
一、窃盗(街で物を入手するときはお金が必要です)
一、決闘、及び私闘。それに伴う抜刀、戦闘暴力行為
一、借金
一、撤退命令の無視
一、味方の批判
一、許可なく本丸から出ること(遊びに行くときは外出許可を得てください)
一、時空跳躍、未来、歴史、本丸、味方、敵などに関する機密情報の漏洩

▼追加
一、男女問わず連れ込み、ひと目につく場所での淫らな行為
一、許可なく所帯をもつこと
一、拷問を始めとした暴力
一、公序良俗に違反するあらゆる行為

注意しても改められないときは刀解の対象となります。
みんなで仲良く、協力しあって過ごしましょう。


===


同田貫正国 → 江雪左文字

「――だとよ。いや、あんときはひどかったぜ……」
「はぁ……」
心なしかげっそりした顔をしている同田貫正国に、江雪左文字は気のない返事をした。
「あの……」
「なんだよ」
「この……、項目の……、所帯をもつ……とは……?」
「うるせえな、なんでもねえよ。念のためだ、念のため。ま、そういうこった。ちゃんと伝えたからな」
「? ……ええ……。分かりました……」
「おう。じゃあな」
江雪左文字が頷くのを見てから、同田貫正国はさっさと立ち去った。


江雪左文字 → 燭台切光忠

「この世は、悲しみに満ちています……」
その一言から江雪左文字の話は始まる。
燭台切光忠は初めのうち、正座をして神妙に聞いていた。
「空気が、嘆きと悲しみに……」
「和睦の道を模索するべきと……ですから、無益な殺生は……」
「我々が背負っているのは、自分の命だけではなく……」
「よって、我々は刀剣として……また、こうした心構えを……」
(これ、いつまで続くのかな……)と心中でぼやきながら、燭台切光忠は我慢強く話を聞く。

燭台切光忠が解放されたのは三時間後のこと。

あまりに長かったので話の内容はおぼろげである。
江雪左文字が戦いたくない、ということだけはひしひしと伝わってきた。
後に光忠は審神者に確認を取って事なきを得る。


燭台切光忠 → 厚藤四郎

「やあ、初めまして。僕は燭台切光忠、よろしくね」
「オレは厚藤四郎だ、よろしくな」
「本丸を案内するよ。そうそう、いくつか決まり事があってね――」
燭台切光忠は規則の説明を終え、厚藤四郎に向き直った。
「どう? なにか質問はあるかい?」
「いや、大丈夫だ。ありがとうな。それにしてもさ……」
「なんだい?」
「所帯だの、連れ込みだのって……大将はオレたちを信用してないのか?」
厚藤四郎は口をへの字に曲げる。
その様子に燭台切光忠は笑みを誘われ、
「いやあ、それは――なんか、いろいろあったみたいだよ。最後の四項目は後で付け加えられたものらしい」
「へえ……」
「それより、案内が終わったらお茶でもしよう。良いカステラ――、甘味が手に入ってね。君の兄弟たちもお待ちかねだよ」
「そいつは楽しみだ」


厚藤四郎 → 獅子王

「早速だけど、本丸には規則があるんだ。じゃ、説明するぜ」
「おうっ!」
厚藤四郎は規則を思い出しながら説明する。
「――って感じだ。分かったか?」
「ああ。ま、普通に過ごしてれば問題ないんだろ?」
「そりゃそうだけど、新しいお仲間にはあんたがちゃんと説明してくれよ」
「分かった分かった。そんなことより厚、あれはなんだ?」
「ん? ああ、あれは――」


獅子王 → 大倶利伽羅

「ようっ、俺は獅子王だ!」
「放っておいてくれ。慣れ合うつもりはない」
朗らかに笑う獅子王を一瞥して、大倶利伽羅は背を向けようとした。
「待て、待て待て待てって!」
「おい、離せ」
腕をつかまれ、大倶利伽羅が顔を歪める。獅子王は気にした様子もなくにやりと笑い、
「なんだ、とっておきの昼寝場所を教えてやろうと思ったのになぁ」
「自分で見つける。俺に関わるな」
「うわっ、なんだよ! まてよ、説明しなきゃいけないんだって!」
「はぁ?」
「本丸の規則! 決まり事があんの!」
大倶利伽羅は眉を寄せ、舌打ちした。
「うわっ、なんだよその態度、感じ悪いぞー。禁止事項を破ったらなあ、おっそろしいことが起こるんだからな!」
「……なんだ」
「おっ、聞く気になったか?」
いたずらっぽく笑う獅子王に、大倶利伽羅はうんざりした表情を隠そうともしない。
「いいから話せ」
「まあまあ。それでだ、決まり事を破ったら、なんと! くすぐりの刑が待ってるんだぜ!」
「……………………」
「それで決まり事っていうのは――まあ、あれだ。みんなと仲良くすることだ!」
「………………………………」
「みんなと仲良くしないとこの獅子王さまにイヤというほどくすぐられるんだ。お前のその仏頂面をにっこにこにしてやる。なに、簡単だろ?」
「なんなんだその日和った決まりは……。従う義理はないな」
大倶利伽羅は獅子王を振り払うと、その場を後にした。
「えっ!? あ、待てって! 嘘に決まって――なんだよ、冗談が通じないヤツだなぁ」
獅子王は困り果て、大倶利伽羅を探しまわったが避けられたためしばらくして大倶利伽羅探しに飽きてしまい、そのまま審神者に報告した。


◆処分|大倶利伽羅と獅子王:審神者による呼び出し。その場で軽くお説教の後、釈放。


大倶利伽羅 → 岩融

「――おい。……おい!」
「おお、この俺に用か? すまんな、見えなんだ」
がははと豪快に笑う岩融に眉を寄せ、大倶利伽羅は「伝令だ」と短く言った。
「主からか?」
「ああ。本丸には規則がある。聞いたら次の新入りにはあんたが言え」
「ほう。つまり、俺の前の新入りは貴様か」
「――だったらなんだ」
大倶利伽羅は声を低くする。対する岩融は気にした様子もなく、大倶利伽羅の肩を叩いた。
「がははは! そう力むな! 俺も貴様も主の刀の一振り、仲良くやろうではないか!」
「やめろ、俺は一人で……っ」
「はっはっは!!」
次に岩融は、ばしばしと思いっきり大倶利伽羅の背中を叩く。
加減のない力につんのめりそうになるのを大倶利伽羅は気合で踏みとどまった。
「チッ、お前な……!」
「よしよし、聞いてやろうぞ。俺を楽しませてくれるんだろうな?」
「おい、やめろ離せ!」
「遠慮するな、茶でも飲め!」
岩融に放り込まれるようにして大倶利伽羅は部屋に引きずられていく。
ついに逆らうのが面倒になった大倶利伽羅が、酒を出してきた岩融と飲み始めるまではすぐだった。


岩融 → 鶯丸

「おう、貴様が新たな刀か! 俺は岩融、よろしく頼むぞ!」
「鶯丸だ、どうぞよろしく」
鶯丸は軽く頭を下げる。岩融は豪快に笑った。
「はっはっは、そう固くなることはない! 俺は本丸での決まり事を伝えに来ただけだ」
「規則があるのか」
「おうとも! しかと聞けよ!」
「それなら、茶でも飲みながら話さないか」
「おお、名案だな。よかろう!」
岩融と鶯丸はお茶をしながら和やかに言葉を交わした。


鶯丸 → 一期一振

「こちらだ、一期一振。普段、この茶室には歌仙兼定か俺くらいしか出入りしなくてね」
「お気遣い、痛み入ります」
鶯丸は一期一振を茶室へと誘った。
「作法は合っていると思うが、まあ、所詮は真似事だ。口に合えばいいが」
「そんなことはありません。堂に入ったものですよ、鶯丸どの」
「はは、そう言われるとこそばゆいな。しかしその口調は止してくれ、同じ刀剣同士だ。ここに主はいないことだし」
「――ではお言葉に甘えよう、鶯丸」
「そうだ、そのほうが茶も美味い」
鶯丸と一期一振はひとしきり和やかに茶を楽しんだ。
「そうそう、忘れるところだった。実は呼び出したのは、説明することがあるからなんだ。本丸には決まりがいくつかあってね」
「そうか、手間をかけてすまないな」
「なに、構わない。一期一振は落ち着いているから、大歓迎さ。他の刀と来たら、茶室でも大暴れだからな」
「はは、分かる気がするよ」
「だろう? で、決まりというのが――」
鶯丸は規則を説明した。
「……ということなんだ」
「ありがとう、よくわかった。しかし、無断で所帯をもつな、とは……」
「ああ、可笑しいだろう? 主は俺たち刀をなんだと思っているのやら」
鶯丸はくすくす笑いながら茶菓子をつまむ。一期一振は思案の後、
「弟たちがいたずらをした結果でなければいいんだが」と呟く。
「まさか。しかし、まあ、そうだな。誰かの悪ふざけかもしれないな」
「後で主に、それとなく聞いてみよう」
「結果が分かったら教えてくれ」
「心得た」
一期一振は微笑み、茶に口をつけた。



一期一振 → 石切丸

「――という、決まり事があるのです」
「そうだったのかい。丁寧にありがとう、一期一振」
「いえ。なにかあればお声がけください。それでは、私はこれで」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
「はい、なんでしょう」
立ち去ろうとした一期一振に、石切丸は言う。
「勝手に所帯をもつな、ということは、許可があれば所帯をもっても良いということかな」
「はい?」
「いや、婚姻となれば私が執り行うことになるのかと思ってね。
 気になるじゃないか。そういう前例があるのかい?」
「ああ、そのことですか」
一期一振は笑いをこらえながら言った。審神者から聞いた事の顛末を思い出したからだ。
「実はそれは、他の刀剣の悪ふざけのせいで追加されたものなのですよ。
 しかし、婚姻ですか。どうだろうな」
「なに、作法は心得ているからね。いざというときは任せてくれ」
「それは頼もしい限りですな、石切丸どの」
ちゃめっ気をにじませる石切丸に、一期一振も笑って頷いた。


石切丸 → 御手杵

「――と、こういうわけさ。僕の説明、わかりづらくなかったかい?」
「いや、そんなことはないさ。悪かったな、石切丸」
「構わないよ」
微笑む石切丸に、御手杵はほっとしたような顔をした。
「しかし、訊いてもいいか?」
「ああ。この項目だろう、婚姻だの拷問だの」
「そうそう、なんだこりゃ。なあ、ここだけの話、良い仲になってる奴らがいるのか?」
「さあ、僕はそういうことには疎いから、なんとも」
石切丸は困ったように眉を下げる。
「とにかく、次の刀には君が教えてあげてくれ。よろしく頼んだよ」
「ああ、助かったよ」
「そうだ、御手杵。誰かと盃を交わしたくなったら、僕が執り行うから声をかけてくれ」
「お、俺!? いや、俺は……」
「照れることはないさ。はっはっは」
陽気に笑うと、石切丸は呆然とする御手杵を残して去って行った。


御手杵 → 次郎太刀

(確かに良い仲になれる相手がいればという話はしたが)と、声に出さずに御手杵はぼやいた。
「なんだい、アタシの顔になにかついてるかい?」
「いや、なんでも。本丸の規則を説明しに来たんだ」
「えぇ〜? いいじゃん、そんな細かいことはさぁ」
次郎太刀はあからさまに嫌な顔をした。そんな話を聞くなら酒でも飲みたいといった様子だ。
「まあ、すぐ終わるからよ」
御手杵は手早く説明をした。
「――ってわけだ。……これでいいのか?」
「アタシに訊かれてもねえ。でも、いいねえ、コレ」
「は?」
「婚・姻……。いいねぇ、夢があるじゃん!」
「お、おう……。そうだな。石切丸が良い仲の相手がいれば婚姻の儀をやってくれるって言ってたぞ」
「やだ、本気かい? あっはっは、こりゃ愉快だ。じゃあ御手杵、どうよ、アタシは」
「え……はっ!!?」
次郎太刀の顔は赤らんでいて、目も座っている。完全に酔っていた。
分かっていたのに、つい硬直した御手杵を見て次郎太刀は吹き出す。
「あっはっは!! やだ、なんだいその顔! こりゃ傑作だ!」
「なっ、お、からかうなよ!」
「引っかかるのが悪いって! ほら、飲もうよ、お酌してやるからさぁ」
「ったく……」
御手杵は肩を落として大人しく酒を注いでもらう。
「で、どうなのよ、実際」
「なんだよ」
「意中の人はいるのかい? アタシ、応援しちゃうよ?
 あーでも、次郎さんに惚れちゃダメだよー? 火傷するからね?」
「心配しなくても、アンタみたいなデカイヤツ誰が――」
次郎太刀から殺気があふれでた。ひゅっと喉が鳴る。
本能的恐怖を感じ、御手杵は慌てて取り繕った。
「いや、アンタみたいなキレイどころじゃ釣り合わねえや」
「あらやだ、そ〜お? ほらほら、もっと飲んで♪」
「は、はは……はは……」
結局、御手杵は流されるまま次郎太刀と酒盛りを始めたのだった。


次郎太刀 → 蛍丸

「規則?」
「そうなんだよ、よくお聞き」次郎太刀は規則の説明をした。
「それからなんと、結婚できるってさ!」
「へぇ〜、そうなんだぁ」
蛍丸は感心したように頷いた。目には好奇心の光が宿っている。
「で、誰と誰が結婚するの?」
「さあねぇ。アタシもまだ把握できてないんだけどさぁ。
 でも、怪しいんじゃないかな〜って奴らはいるよ」
「えっ、ほんと? だれ?」
思わず蛍丸は身を乗り出した。
次郎太刀はにやりと笑い、
「実はね、御手杵のヤツのアタシを見る目線が、なーんかやらしいっていうか……ねぇ」
「へえ〜! すごいや。御手杵のこと、ちょっと見直したよ」
蛍丸は深く頷いた。
「俺、応援するからね」
「やだぁ、アタシは御手杵のこと、なんとも思ってないよぉ?」
「そうなの? なんだ、つまんない」
蛍丸は頬をふくらませた。
「だからさ、蛍丸も好きな人ができたら、ちゃーんと次郎さんに報告するんだよ」
「うん、分かった。よくわかんないけど」


蛍丸 → 太郎太刀

「ね、太郎」
「なんですか、蛍丸」
「御手杵はね、次郎のことが好きなんだって」
「は……?」
太郎は数秒、静止した。何度かまばたきをして、「御手杵が、次郎を、ですか」と繰り返す。
「うん。でも次郎は、興味ないんだって」
「はぁ……、そうですか。それはまことですか、蛍丸。次郎太刀にからかわれているのでは」
「えー」
蛍丸は面白くなさそうな顔をした。
「俺、御手杵のことすごいって思ったのに」
「いえ、確かに……御手杵が本気なら、疑うのも失礼ですね。道ならぬ恋ですから」
「でしょでしょ!? ねえ、俺たちで協力して二人をくっつけてあげようよ」
蛍丸は身を乗り出した。太郎太刀は「はぁ」と気のない返事をする。
「しかし、まだ次郎太刀のいたずらという可能性も」
「もー! 分かった、じゃあ俺、訊いてくる!」
「あ、蛍丸! 行ってしまいましたか……」
風のように消えた蛍丸を追うことはなく、太郎太刀は嘆息した。

その後、御手杵が全力で否定し、次郎太刀が爆笑したことは言うまでもない。

処分|蛍丸:規則の説明を忘れていたため、審神者から呼び出し。
   次郎太刀:悪ふざけはほどほどにするようにと訓戒を受ける。


太郎太刀 → 蜻蛉切

「私は太郎太刀。これもなにかの縁です。以後お見知りおきを」
「自分は蜻蛉切。しかしここは、のどかで良い場所ですな」
蜻蛉切の微笑に、太郎太刀も口元を緩ませる。
「ええ。短刀たちが走り回っている姿は、心が和みます。
 ――さて、お呼び立てしたのは、本丸での決まりについてです」
「おう、これはありがたい。お頼み申す」
蜻蛉切は居住まいを正した。
「本丸ではまず――」
太郎太刀はすらすらと規則を述べると、「以上です」と締めた。
「なんと、拷問を禁じられているとは。主は慈悲深き方とお見受けする」
「暴力沙汰が本丸で起こらないのは、ありがたいことです」
「気が休まりませんからな」
蜻蛉切は生真面目に頷いた。


蜻蛉切 → 子狐丸

「子狐丸どの」
「おう、なんじゃ。私はぬしさまのところに向かう途中なのだが」
「すまぬ。本丸での規則について、自分が説明の任を受けたのでな」
「そうか。して、規則とは」
「ああ、それは――」
蜻蛉切は詳細かつ丁寧に説明した。
「なんと。それはまことか」
「まこと、とは」
「婚姻じゃ。婚姻ができるのか」
「は……、さあ、自分には、なんとも」
「面妖なことじゃ。刀を相手に、婚姻とは」
子狐丸はくつくつと喉を鳴らすように笑う。
「それに、『ひと目につく場所での淫らな行為』……とは。
 まるで、ひと目につかなければ良いとでも言いたげではないか」
子狐丸の目が怪しく光る。蜻蛉切は後ずさりたくなったが、自制した。
「あいわかった。すまぬな、蜻蛉切」
「ああ――いや。では、自分はこれで」

処分|子狐丸:暴走のため、油揚げなし


子狐丸 → 三日月宗近


「三日月の」
「これは、子狐丸どの」
呼び止められた三日月宗近は目を細め、軽く会釈した。
「ちょうどよい。三日月に説明をせねばならぬことがあったのじゃ」
「そうか。――して、話とは」
「実はな、本丸では婚姻ができる。
 また、ひと目につかぬ場所なら淫らな行為にふけってもよいそうだ」
「はっはっは、子狐丸よ、まだ昼間だぞ」
太陽は中天に差しかかっていた。三日月宗近は可笑しそうに子狐丸を見る。
「なんじゃ、夜ならば良いのか」
「まあ、想いが伝わるのは良いことだが――
 爺ゆえ、どうもはっきりとした口説き文句には慣れぬな」
三日月宗近は鷹揚に笑った。
「む、聞き捨てならんな。この子狐丸、本気を出せばこんなものではないぞ」
「爺をからかうのはよせ。そのような台詞は、意中の相手にでもささやいてやるといい」
「つまらんのう。慌てた顔でも見れるかと思うたものを」
子狐丸は口をとがらせる。三日月はその様子を見て、ころころと笑った。
「なに、年季が違うというものよ」
「仕方ない。ぬしさまのため、まじめに説明するとしよう」
子狐丸は規則の説明を適当にした。
「――と、大体こんなところじゃ」
「あいわかった。手間をかけさせてすまぬな」
「なに、構わぬ。ぬしさまのためよ」
「しかし、婚姻とはな」
三日月宗近は上品に笑い、
「主は、それで俺たちに気を遣ったつもりか?
 はっはっは、かわいいところがあるではないか」
「ぬしさまのお心配りじゃ。ではな、三日月の」
子狐丸はそう受け合うと、颯爽とその場を後にする。

その背を見送って、三日月宗近は「よきかな」と呟いたのだった。
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