大正×対称アリスepisode3 感想

  • 2015.10.07 Wednesday
  • 04:52
大正×対称アリス episode3 通常版


真相編。

無条件にこの作品を賞賛する記事をご希望の方は、
ご期待に添えない可能性が高いのでご注意をば。

以下ネタバレ感想。
白雪
『大正×対称アリス』応援中!


初めに言っておくと、白雪ルートで無駄な要素はありません。
どのシーンも物語として必要不可欠であり、白雪を表現するために
百合花と白雪の対話、そして白雪の過去を丁寧に説明しています。

それを踏まえた上で、敢えて言います。
退屈なルートでした。

一緒に来てくれる赤ずきんは可愛かった。
赤ずきんが付き添えるのは、赤ずきんと白雪がほぼ同時期に出来た人格ゆえでしょう。
しかしそれゆえに赤ずきんと白雪に相容れない部分があるのは皮肉。

話を戻します。

退屈というのは、どうやら【湖の畔】がキーワードになっているためか
シンデレラ、赤ずきん、かぐや、グレーテル、白雪と5ルートを通して
湖の畔で似たようなイベントが発生するためです。
魔法使いさんも対話イベントがありますが、少し毛色が違うので除外するとしても、5ルート。
以下にわかりやすく書き記してみました。
※他のルートはスキップを駆使してざっと見ただけで、
隅から隅までチェックしたわけではないので抜けがあるかもしれません。

シンデレラ:湖の畔で対話
叶わぬ将来の夢を語ってキスをする、シンデレラの魔法の最期

赤ずきん:湖の畔にてお弁当であーん、膝枕
赤ずきんが将来の話を言いかけて止める、
クライマックスでのネタばらしも湖の畔

かぐや:お昼休みデートであーん、遅めの夕飯
クライマックスで月に帰る帰らないのやり取り

グレーテル:回想で膝枕、叶わぬ将来の話
グレーテルから百合花の額へキス

白雪:会話、手作り料理のあーん、膝枕
白雪との会話はほぼずっと湖の畔にて

魔法使い:会話
湖を海に見立てて白雪と赤ずきんが遠くに行きたいと思ったのであろうという会話、
「魔法使いと百合花(ヒロインちゃん)の気持ちは同じ、まるで一つの心のように」

湖の畔での膝枕、食べ物あーん、叶わぬ将来の話。
これらが物語として、作品として重要なのは分かっています。
ここまで被ったからには意図されたイベントであると考えるのが自然です。

恐らくはアリステアが百合花の外見に「いいね!」したのが湖の畔だったのでしょう。
膝枕も、手作り料理のあーんも、叶わぬ将来の話も
アリステアと有栖百合花がしたものと推測できます。
すると、エピローグで、これらのイベントの総括が
行われるであろうということは容易に予想がつくわけです。
逆になかったらびっくりです。これまでのキャラのイベントは
背景予算削減とライターさんの萌えシチュを書いただけ、というわけではないと信じたい。

そしてそれらのイベントを目の当たりにしたとき、自分は正直、こう思ってしまう。

またかよ、と。

似たようなイベントばっかり何度も見せられて、いい加減に飽きました。

物語として各要素がうまく散りばめられていて、伏線が張り巡らせてあり、
どのシーンでも物語として必要な場面を描いているからといって、
面白いとは限らないと痛感しました。
もう少し、白雪ならではのエピソードが見たかった。
白雪の代わりを『母様』がやってるからでもあるのですが。

また、白雪ルート魔法使いルート共に文体がさらにくどくどしく、
説明調になってくるのもやや食傷気味。
単語の言い換えに補足的な、真相を暗示する意味があるのはわかります。
しかし心理学を用いてキャラ解釈まで長々とされるのは、正直辛いものがある。
見れば分かるようなことまでくどくどくどくど、制作者の意図を説明されると息苦しい。
価値観の押し付けをされているような気持ちになってきます。

白雪ルートでの『母様』は、現実の母を王子さまとして救済できず、
(役立たずの)お姫さまでしかなかった自分を責める白雪の心の表れです。
今回の白雪は、無垢な白雪姫と、姫の美しさに嫉妬する后の一人二役なのが面白い。
また、鏡よ鏡…のシーンで、唯一の理解者だった猟師さんが出るのは
ほろりと来るものがありました。しかも猟師さん(鏡)めっちゃ優しい。

白雪はお姫さま(ヒロイン)である百合花を愛しく想う気持ちと、
嫉妬する気持ちの間で激しく懊悩します。

母にお姫さまとして愛されたい。
だけど王子さまでありたい(=お姫さまへの褒め言葉「綺麗」「可愛い」への嫌悪)

王子さまとお姫さまの両立は成り立ちません。
白雪は王子さまかお姫さま、どちらかを選ばなければならない。

母に愛されるお姫さまであるためには、
自主性をもって人を救う王子さまを諦めなければならず。
だけど、お姫さまである百合花へ、王子さまとして恋い焦がれてもいる。

それと同時に、すべてをぶちまけたいという衝動と、
皆のために辛い記憶を封じ、夢の中で引きこもろうとする意志。

アンビバレントな感情に苦しむ白雪。
その心の表れが美味しいアップルパイが腐ったアップルパイに、
蝶から蛾への変化として示される比喩はゾクゾクしました。
眠る白雪姫を見守る七人の小人役を他のキャラが努めるのも、うまい設定ですね。

ほかにも、リボンの結び方のシーンは良かったです。
お姫さまとして何事も諦めていた白雪が、初めて挑戦し、成功したリボン結び。
みずからの手でなにかをやり遂げた達成感。
お姫さまに良いところを見せたい王子さまとしての気持ち。
その大切なリボン結びを、
白雪の中にある、お姫さまでなければならないという強迫観念の象徴である
『母様』に解いて直されてしまう(=王子さまの否定)。
失望の中、それでもお姫さまに甘んじる白雪。
自主性をもちたいと望みながら、そうした自主性を
みずからの手で(=白雪の分身でもある『母様』)阻害する白雪の姿は痛々しく、
見ていて胸が痛かった。

しかし、現実世界のアリステア母も、夫は高飛びするわ借金だらけだわ、
挙句の果てにアリステアは解離性人格障害を発症するわで、
心からお気の毒というほかありません。かわいそう。
うまくやれなかったけど、アリステアの母は頑張ったと思います。
この辺りの外国人への奇異の目は大正時代っぽいですね。
ようやく大正時代らしきものが出てきました。

現実世界で起こった出来事が、夢としてのエッセンスが加えられて
表現されているようなので、これまで他キャラルートで起こった出来事も
現実世界で似たような事件があったと見て良いでしょう。
その結末を変えることが百合花(ヒロイン)の使命だった。
現実世界で有栖百合花(リアル)は誰も選べなかったものの
夢の世界で愛を分割した……と、こう書くと本当にすごい力技ですね……。


魔法使い
『大正×対称アリス』応援中!

魔法使いルート冒頭でのアリスは率先して行動し、
主導権を握るようになっていて、これまでの救済によって
アリスの人格が補強され、意志が芽生えたと受け取れます。

気になったのは、冒頭で「この物語の主人公は、他ならぬ貴方」と
明言されていることです。

今のところ主人公は有栖百合花(リアル)に操られた百合花(ヒロイン)のような気がしますが
わざわざ書いてあるからには、選択を下すプレイヤーが主人公でいいのでしょうか。
その辺りはエピローグ待ちですね。

魔法使いルートで、百合花(ヒロイン)はほかの人格との出逢いを
うれしいと同時に悲しかったとも書いているのが、
有栖百合花(リアル)の率直な気持ちといえそう。
あとは、ほかのキャラが百合花ではなく「ありす」と呼ぶのが象徴的です。
つまり、この百合花(ヒロイン)は、彼らにとっての
百合花(ヒロイン)ではない、と表されている。

また、「君は魔法の鏡?」という白雪の問いに、魔法使いさんが答えず
笑ってごまかしているところも印象的。
魔法使いさんは自身の役割に自覚があるゆえに。

魔法使いさんとの恋愛はまさに綱渡りの恋でした。
お互いに押しては引いて、相手の腹を探りあう姿が面白かった。

今回、白雪ルートは鏡の国のアリスの第5章毛糸と水、
魔法使いさんルートは第6章ハンプティ・ダンプティに相当すると思われます。
魔法使いさんがハンプティダンプティって、言い得て妙でもあり、なんだか哀しいですね。
余裕ある態度とは裏腹の存在の危うさがハンプティダンプティ感あって……。
「ジャバウォックの詩」というナンセンスな詩を解説するシーンはそのまま
ほかの婚約者の過去を解き明かす場面に相当すると思います。
そして百合花が魔法使いさんのもとを去ると魔法使いさんは……。
ともあれ、良いかたちで魔法使いさんを救ってあげられてよかったです。

さて、恐らく有栖百合花(リアル)が救済した順番は、

アリス(主人格)>魔法使い>白雪>かぐやorグレーテル>シンデレラor赤ずきん

上記の通り。プレイヤーはちょうど救済順を逆転している状態ですね。
なにせ鏡の国なので。
救済順は、恐らくそれぞれの人格が陥っている、
人格崩壊の危険に至る緊急性によるものと思います。
最も弱い主人格を先に救わないと他の人格に押しつぶされて消滅する可能性が高いですし
魔法使いさんは好きな人を殺すという辛い役割を引き受けています。
辛い記憶を引き受けた白雪は夢の中で夢を見ている、
つまり深層意識のさらに奥深くにいるので
早く引っ張りあげないとそのまま起きてこないかもしれません。
有栖百合花(リアル)はアリステアにその辛い記憶を思い出した上で
立ち直ってほしいと思っていることが伺えます。

魔法使いさんも、シンデレラ/赤ずきんルートでは朗らかで明るく、
生き生きしていますし、人格のブレも少ないように見受けられます。
百合花(ヒロイン)を応援したり、励ましたりするだけでなく
赤ずきんルートでの魔法使いさんはノリツッコミまでします。
頑張る百合花(ヒロイン)を励まし、頭を撫で、褒めてくれる。
お助けキャラとしてベテランになってきているのですね。

私は全キャラで魔法使いさんが一番好きなのですが、その理由は
魔法使いさんのシンデレラ共通ルートでの登場シーン。

シンデレラルートで、黒猫がシンデレラに噛み付いたときに、

「あ、いたいた!」
「よしよし。勝手にいなくならないでよ」


とこのように声をかけ、
魔法使いさんは黒猫を「大事そうに抱え」るのです。
そして、黒猫はペットかと問うシンデレラさんに

「いや、僕の猫じゃないよ。この子は僕の友達なのさ」

と、こう言ったのがきっかけで好きになりました。
たぶんこのシーン、わざと黒猫をけしかけたのだと思いますが。

つまりこの時点で、魔法使いと黒猫ちゃんは「友達」であると明言されています。
加えて魔法使いさんにとって黒猫ちゃんは大切な存在であると匂わせてもいる。
この辺りの伏線回収は丁寧で、好感をもちました。

さて、かぐや/グレーテルルートでは魔法使いさんの人格にまだブレがあります。
一人称が「俺」「僕」「私」と変化し、百合花(ヒロイン)を「あんた」と呼んでみたり。
口調も荒くなったり丁寧になったり。
しかし、「次、頑張ってこい!」と激励するところもあり。
寸劇もやってくれます。
まだ自分をしっかり保つところまでいかないものの精神が安定しつつある感じですね。

また、白雪ルートで魔法使いさんは黒猫ちゃんに
「慰めてくれるの? 君は良い子だね」と言っていて
こうしたちょっとしたところに魔法使いさんの想いが見えるとニヤニヤします。
魔法使いさんは人格が定まってないぶん、
心の内を表現するのが苦手なのでしょうね。

有栖百合花(リアル)の不気味さが明らかになる魔法使いルート。

残酷な役割を魔法使いさんに強いるわけで、痛みに鈍感ですべての記憶をもち、
アリステアに取って代わる可能性を秘めた唯一の人格である魔法使いさんを
みずからの身体を差し出すことで早々に支配下に置き、
かといって不満を抱えたあげくにアリステアの精神世界で病んで暴走しないよう
百合花(ヒロイン)を放って魔法使いさんのメンタルケアまでしておく、という
有栖百合花(リアル)が恐い。

いや、恐いどころか、正直言って気色が悪い。

猟師さんが何故ことあるごとに
「あいつはまともじゃない」「はっきり言って頭がおかしい」と言ってたのか
納得いきました。有栖百合花(リアル)は確かに頭がおかしいです。

有栖百合花(リアル)にとってはどの人格であろうが
アリステア:シンデレラ、アリステア:赤ずきん、アリステア:かぐや、
アリステア:グレーテル、アリステア:白雪、アリステア:魔法使い
アリステア:アリス であるわけで、当然、選べるわけがないのは理解できます。
ここまで手を変え品を変えアリステアに尽くしまくるのは、
有栖百合花(リアル)が、コンプレックスだった外見を
アリステアに認められ、救われた恩義を感じた末の恋心によることが描写されています。

エンディングでの魔法使いさんの提案は、魔法使いさんが百合花(ヒロイン)に
心を開いたと解釈しました。
百合花(ヒロイン)が勝てば願い事なんて自明の理で、
その提案をした時点で受け入れても良い、という気持ちになったと見ました。
絶対に嫌だと思ってるか、心が傾いていない状態ならば
わざわざそんなことを言う必要はないわけですし。

恐らくシンデレラルート時点でまだ勝負の決着はついていないものの、
そう言って両想いでありながら追いかけっこをしている関係性は
非常に可愛らしく、本人たちも楽しんでいるわけで。
「猫を被る」という魔法使いさんの在り方にふさわしい百合花(ヒロイン)を
用意しているあたり、気が利いていていいなと感じます。

魔法使いさんは魔法使いルートを見れば分かる通り、百合花(ヒロイン)に
好意をもっている。しかし、魔法使いさんには意地があるわけです。
それは、有栖百合花(リアル)と体の結びつきがある、という意地です。
他の人格よりも明らかにアドバンテージがある。
クイーン(駒)を背負う以上、有栖百合花(リアル)の影とわかっている
百合花(ヒロイン)に惹かれながらも、素直になれない。
そもそも魔法使いの役割を果たすだけなら、
月夜の手品も添い寝で外套をかけることも喫茶店への短いデートも
まったくもって必要ありません。
ほかのキャラと結婚してほしいのに自分の株上げてどうするよ。
しかも、有栖百合花(リアル)にアリステアの名を呼ばれたことで
魔法使いさんは拗ねてもいます。

さらに、自身がないから自信もない、と作中で描かれている。
魔法使いさんには、自分がない存在である自分を、
有栖百合花(リアル)が好きになる理由はない、と考えているのです。
しかし立ち絵では、魔法使いさんは左耳にピアスをしています。
左耳のピアスは「守る者」「勇気と誇り」という意味をもちます。
つまり、魔法使いさんは男らしい存在でありたいと願っている、と読めます。
他でもない、有栖百合花(リアル)のために。
だけど自信がない。自身がないから。そのため、臆病になる。

有栖百合花(リアル)に存在を忘れられるぐらいならばと、
約束を交わした通り「クイーン」という駒の役割を果たしているものの、
不満がないわけじゃない。作中で描かれている通り、我慢しているだけです。
好きな人に失恋して初めて痛みを知り、好きな人の影を殺し続けることで
魔法使いさんという人格に痛みを覚えさせながらも、
ちゃっかり女王:有栖百合花(リアル)の影を派遣して心を絡めとり、
魔法使いさんをアメとムチで支配下に置く姿には恐怖を覚えました。こわい。

最後に、プロモーションは公式設定と確定しましたので
それぞれのルートのエンディングで百合花(ヒロイン)がどの駒に昇格したのか
予想を書いてみようと思います。

シンデレラ:ナイト(借金問題から恋人を救う騎士)
赤ずきん:ビショップ(罪を犯したと思い込む恋人に赦しを与えるもの)
かぐや:ルーク(死へ向かう恋人へ突進し、力技で救済。死を阻む砦)
グレーテル:クイーン(魔女から伴侶へ)
白雪:クイーン(My Prince,You are my most fair)
魔法使い:ステイルメイト

作中でわざわざ訳文を書いているので完全に蛇足ですが、
My Fairだと有名なのはマイ・フェア・レディで、
そのマイ・フェア・レディは童謡の「ロンドン橋落ちた」から来ています。
Fairを辞書で調べると、Fairは古語であり、
「Beautiful(美しい)」という意味があることが分かりました。
直訳すると、王子さま、あなたは私の最も美しい人、といったところでしょうか。
だらだら書いておいて何ですが本当に蛇足でしたね。
5番めの項目で確認できます。

乙女ゲームでは萌えのために物語性が犠牲にされますが、
この作品では物語のために萌えが犠牲にされており、
なんとも挑戦的な作品であることは間違いありません。

なんだかんだと書きましたが、エピローグ編が楽しみ。
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