SWEET CLOWN 〜午前三時のオカシな道化師〜 日之世 感想

  • 2015.11.02 Monday
  • 21:26
PSVita SWEET CLOWN 〜午前三時のオカシな道化師〜


日之世くんの感想です。
久瀬くんの感想もあります。ネタバレです。

ただの言い訳でしかないのですが、実のところ、
最近どうにも調子が悪くてきちんと回想イベントを見て考証できておらず、
(久瀬くんが哀れな目に遭うのを見ると私もMPを著しく消費するため)
前回の久瀬くんの感想が中途半端だったかな、と感じ
補足の意味でこっちでもやろうと思います。

三人攻略した時点で未プレイの方に言えることは、
このゲームは暗いということでしょうか。
そのへんは、公式サイトを見れば分かるかと思いますが……。
また、キャラゲー的要素がかなり強いです。
つまり、キャラに興味をもてればとてもおもしろいですが
キャラに興味をそそられない場合、恐らく退屈に感じると思います。
それぞれ生き方、価値観、好き嫌い、生育環境など
かなり細かく設定されており、深愛&歪愛ともに、
キャラの人生や本質がかなり深く紐付けられています。

つまり、キャラが病むなどの変化には相応の根拠があります。
歪愛エンドも、各人物の特質を踏まえた内容です。
唐突に明後日の方向へと病むようなことはありません。

そのため、キャラとの交流で相手の話をいかにちゃんと聞けるかが
このゲームを楽しむコツかもしれません。
相手がどのような願いをもっていて、どのような生き方をしたいのか。
それを踏まえた上でゲームをプレイすると良いと思います。
また、主人公の柘榴ちゃんへの感情移入は、正直、危険なので
やめたほうがいいと思います。彼女のスーパーネガティブモードスイッチが
入った時点で「ハイハイまた始まったわこの子」と
生温く心の距離を置いたほうが良いでしょう。
もうコオロギが鳴くのも雨が降るのもぜんぶ自分のせいだと思ってる感じなので。
コオロギが鳴くのはコオロギの都合ですし、雨が降るのは自然現象です。
というわけで、あまり柘榴ちゃんの自責に心を寄り添わせる必要はないかと思います。
感受性の鋭い方は引きずられる恐れがあるので気をつけてください。

他人の言動にこちらが責任を取る必要は一切ありませんし、
不機嫌な人のご機嫌を取る必要もありません。それは相手の都合です。
こちらは、相手の機嫌が良くなるまで放っといて、違うことをすればいいだけです。
むろん、不当な攻撃をされたら自分の身を守るために怒る必要はありますが。

他にも、願いに伴う代償といったテーマが好きなら楽しめるかもしれません。

以下ネタバレ感想。
自分で蒼馬くんの感想を読み返した限り、だいたい合ってるような気も
しなくもないのですが、読み返して補足できそうなことを記しておきます。

密原が「ありのままの自分を見せて愛し愛されること」、
蒼馬くんが「他人を愛するとはどういうことか」と対になっている話、と
書いたのですが、これどっちも
「ありのままの自分を見せて愛し愛されること」という
テーマでいいような気もしてきました。

※下記の内容は本編ですべて確認しました。

蒼馬くんの本当の望みは、「一緒に生きたい」です。
誠丞と二人で過ごしているときから蒼馬くんはそう思っています。
そして、柘榴ちゃんとの交流を通し(「過去の弟、今の弟」)、蒼馬くんの中に
道化師に与えられた役割ではなく、彼の意志により、初めて願いが芽生えます。
それが柘榴ちゃんを笑顔にすること。柘榴ちゃんが笑顔になれるようなことを一緒にすること。
柘榴ちゃんに穏やかな顔でいてほしい。
これこそが蒼馬くんの望みで、彼はそのために柘榴ちゃんと共に外に出ることを願い、
息巻いて行動を起こすのです。

続いて、「穏やかな彼女の寝顔に改める決意」では、
柘榴ちゃんが生を捨てたら笑顔が見られなくなる、という
想いを切々と語ります。
さらに柘榴ちゃんを求める恋心も芽生えつつあり、弟でいることを辛く感じている。

そして、このような恋心、相手を幸福にしたいという“欲”を覚えたことで
実際にはそれが叶わない現実を前に苦悩し、
蒼馬くんは「人形のままでいたい」「姉を守る弟でいたい」と望むのですね。

深愛エンドでは、蒼馬くんはその望みを叶え、ナルコレプシーを患う
柘榴ちゃんを護り、そばにいて支えます。
二人で共に生き、柘榴ちゃんを笑顔にしながら。

一方、それを踏まえて歪愛エンドを見ると、
柘榴ちゃんははっきりと、蒼馬くんの気持ちを無視すること、
蒼馬くんがどう想おうと蒼馬くんの傍にいたい、という“欲”を宣言し、
蒼馬くんに文字通り『弟という人形』でいることを望む。

歪愛グッドで蒼馬くんは柘榴ちゃんの望み通り、
閉鎖された空間で『弟という人形』を楽しくやるわけです。
柘榴ちゃんを笑顔にしたいという、久瀬蒼馬が初めて抱いた願いは
歪んだかたちで叶いました。

二人で外に出て、柘榴ちゃんが笑顔になることを一緒にする、という願いを犠牲にして。

だからこそ、歪愛グッドは柘榴ちゃんの一方通行な愛欲エンドといえます。
幸福そうに見えて、やっていることは蒼馬くんの願いを無視している。

蒼馬くんが菓子人形ではなく、人間として意志を示すために抱いた、
柘榴ちゃんを笑顔にして、幸福にして、
柘榴ちゃんが笑顔になれることを一緒にする、という願い。

それを柘榴ちゃん自身が踏み潰し、無視するエンド。
改めて歪愛ルートはなんともグロテスクですね。
ちなみに歪愛バッドでも蒼馬くんの「自分の記憶を消してほしい」という願いを
無視していますので、歪愛ルートで柘榴ちゃんは徹底して己の欲を貫いている。

弟への罪滅ぼし、弟にしたかったことを
弟のかたちをした菓子人形で果たす柘榴ちゃん。

深愛ルートで柘榴ちゃんは相手を想う気持ちを第一としますが、
歪愛ルートは柘榴ちゃんの愛欲を優先し、相手の意志を殺している。
だからこそ、歪愛ルートは欲望度が上がることで突入するのですね。

===

日之世武尊
SWEET CLOWN 〜午前三時のオカシな道化師〜 (2015年7月発売予定) 応援中![日之世武尊(CV:柿原徹也)]

日之世さんは、好奇心を刺激される人ですね。別名メンヘラホイホイ。
次の手が分からないため、日之世さんは読めなかった。
ちなみに、その意味だと古橋さんは割と思考が読みやすいです。
次こう来るだろうな、というのがそのまま来るというか。
既に良い人感がすごくただよってるので今から攻略が楽しみです。
他のキャラも、密原を含めて割と分かりやすいのですが、
日之世さんは次の手が見えないからこそ、
日之世さんをもっと知りたい、という気持ちを刺激されて、
自分の中の本命である真井さんと張る勢いでした。
正直に言うとほぼ同列にまで繰り上がりました。予想外にも。

さて、日之世さんは情熱の人です。
これは自分の希望的観測ではなく、本編でそう断言されています。
「古橋マリスくん。控えめな容姿の内に情熱を秘めたキミにはラムレーズンのアイスを」
はいこれ。これです。確定です。テストに出ます。
というわけで日之世さんは情熱の人です。
なので彼は両想いになってから豹変したのではなく、
もとから情熱的に相手を想う人だったのです。
それを表に出さなかっただけで。
情熱的であるがゆえに、過去の出来事がどうしても許せず、
消えぬ怒りの炎となってずっと日之世さんを苛んでいた。

私は日之世さんのように身の内に情熱を秘めた人が好きですし、
予想以上に日之世ルートが情熱的な恋愛ルートで
テンションが上がりました。
惹かれ合っては距離を縮め、お互いの存在に情熱を煽られるほど
制御できぬ恋情に怖くなって、近づくことをためらってしまう。
そんな切ない恋心が存分に堪能できてとても良かった。

日之世さんルートのテーマは「人魚姫」と「悪意」。
人魚姫のお話の儚さそのままに、王子様に切なく恋い焦がれる様子が描かれます。
ところで日之世さんルートを担当したのはメインライターの方ではないようですね。
すごく繊細な描写や言いまわしをされる方で、恋愛イベントといい、
萌えの感性がぴったり合うなと思いました。
密原ルートの「白雪姫」もそうで、他作品でも同様の傾向が見られますが、
オーダーを出しやすくするためか外注ライターが担当したルートは
シェイクスピアだの、分かりやすいテーマを設定するケースが多いように感じます。
ひとまず話を戻しまして。

さて、どことなく死に惹かれる様子を見せながらも
日之世さんルート序盤「世界のリセット」にて、
「自己犠牲なんて気持ち悪い、反吐が出ますね」
吐き捨てられる柘榴ちゃん。はい、ここも大切な部分なので覚えておきましょう。
人間味がないだのなんだのボロカスに言い捨てられ、
図星を指されて柘榴ちゃんがムキになり、日之世の挑戦を受けることで
二人の恋は始まっていきます。

しかし見ていて、柘榴ちゃんには自覚がまったくないのに、
ここまでされたら普通は惚れるだろと思わずにはいられないのが面白かった。
相手へ恋い焦がれるあまり、好き避けをしてしまう柘榴ちゃんがまた愛らしくて。
それに悩む日之世さんも可愛いので心ときめくものがありました。

恐らく日之世さん相手に幾千万の言葉を尽くして愛を語っても
彼の心を動かすことはできないでしょうが、
柘榴ちゃんのたった一度の自喰は万の愛の言葉を超える威力がある、という事実が
とてもロマンチックで、この作品でしかできない愛情表現で、お気に入りです。

特に、真井さん相手に牽制したり嫉妬したりするイベントが多めなのも
すごい萌えます。あの、人畜無害代表の真井さん相手に……
普段はそっけないのに不意に恋を想わせる描写が秀逸でした。

というかですね、日之世さんがメンヘラホイホイになるのは
普段、褒め言葉を出し惜しみするせいなんですよ。間違いなく。
まあ兄妹であまりにベタベタしてんのも正直言って気持ち悪いのですが。
で、そんなそっけなさMAXなのに、いきなり優しくするじゃないですか?
もう優しくしないならしないで徹底すりゃいいのに、
日之世さんの秘めるやさしさや情熱が、ふとした瞬間にかいま見えるので
そんな彼の心が欲しいと思って夢中になってしまう気持ちがよく分かります。
妹の八尋ちゃんも、ネコの埋葬で褒められたことをきっかけに
愛を歪ませてしまうところからして、普段は「偉いね」的褒め言葉が
皆無だったと推察されます。
良く言えば、日之世さんは言葉に重みがある人だともいえるでしょう。
しかし、日之世さんも自分自身を認めて、歩調を合わせて
ほしかっただろうとも想えるのですれ違いが切ないですね。

その日之世さんからもう一度「偉いね」を引き出したくて
妹が埋葬に執着するようになったさまを見ると、日之世さんが
日頃からこまめにケアして、まあ、「偉いね」を大盤振る舞いしていれば
避けられた事態だったようにも思いますが、しかし
言葉に重みがあるのは日之世さんの誠実さと責任感の表れでもある。
自分のせいで心からの笑顔ではなく、貼り付けた笑顔しか浮かべなかった
柘榴ちゃんを見て、もとに戻す責任を感じるところからも
そうした気質は見受けられます。ちなみに、このシーンすごい萌えた。
正直に打ち明けると日之世ルートで萌えなかったシーンなどないのですが
ここで突然の日之世さんマイベストシーンランキングです。

1位:両想いになるシーン
2位:自喰の効果を確かめるシーン
3位:真井さんへの牽制

あと日之世さんの「はーい」がめちゃくちゃ可愛くて
脳内のボイスコレクションに登録済みです。

日之世さんは、大事なものを守る、という愛し方をする人です。
しかしそれゆえに彼は守りたかったものを失い、
やり場のない怒りを抱える羽目に陥ります。
怒りは別の感情を内包していることが多いため、
この場合の日之世さんは、妹を救えずに失った哀しみと、
妹に向き合えなかった自責の念と、道化師にしてやられた悔しさなどでしょう。
そうした感情によって生まれた怒りを誰にもぶつけられず、
ましてや自分に向けることもできず(妹の願いを無にする行為です)、
仕方なくケンカを吹っかけてきたチンピラどもをボコるというかたちで
八つ当たりをしてストレス発散をするわけです。
本編で描かれている通り、日之世さんは自分からケンカを売ることは
ほぼなく、相手から攻撃(口撃)された瞬間に全力で殴り返す形式です。
妹への憤りもあるとは思いますが、日之世さんは悪魔の悪意に対する憤怒を
持て余していたのだろうと感じました。
よりにもよって、失ったのは身を挺してまで守りたかった人ですから。
日之世さんからしたらやりきれないでしょう。

救いのない物語に安心感を覚えると語った日之世さん。
自己犠牲によってハッピーエンドを迎えるということが、
虫酸が走るぐらい受け入れられなかった、という意味だと解釈できます。

深愛ルートでは「欠陥」を抱えた柘榴ちゃん(スイートクラウン)という毒を
日之世の毒が制し、やがて恋心へと発展する話。

他の攻略対象同様に、日之世さんの存在によって柘榴ちゃんは生きる希望を取り戻し、
共に生きることを望み、『他人ではない関係』を求めるさまが描かれます。
二人で一緒ならいい、一緒にお墓に入ろう、という約束を交わす二人。

「貴方と共に生きたい」
一緒に世界を見て、精一杯生きたい。

この作品でお墓は安らぎをもたらす、癒しの場としての役割を果たします。
つまり寄り添い合って、二人で生きていくためにマリス(悪意)を
『二人の愛の力』で処理し、未来に向かって歩んでいく。

これは日之世さんの、
「馬鹿馬鹿しい。僕は過去に縛られ続けるなんて絶対にお断りですけどね」
このセリフを受けているからです。
自己犠牲が反吐が出るほど嫌い、謝られるのも嫌い、過去に縛られるのもお断りな日之世さん。
その日之世さんを愛し、日之世さんに好かれたいと思うのであれば、
自分を尊重し、自然体で過ごし、未来を思って生きていく、というのが最適解です。
自分の愛欲を優先するのではなく、
本当に目の前にいる日之世さんを愛しているのであれば。

日之世さんの過去を踏まえ、日之世さんがどのようなことに傷ついたのかを
真に心を開いて理解したのであれば、彼の望みは自ずと見えてきます。
深愛グッドでは、いかにも日之世さんらしいやり取りが微笑ましかったです。
子どもが嫌いではない、というのは日之世さんらしい気がします。

これまでお互いに本音で何でも言い合えた柘榴ちゃんと日之世さん。
それが『楽』だったから、お互いを大切に想うようになり……という
経緯を見る限り、日之世さんはごまかしや建前を嫌う人だということが伺えます。
そのぶん、子どもは、少なくとも大人より正直ですからね。年齢にもよりますが。

深愛バッドでは、あと一歩日之世さんを信じる気持ちが足りないがために
道化師との話に出た永遠の嘘の中に囚われてしまう。
このエンディング、個人的に心に突き刺さって辛かった。
自分もまた、このエンドに幸福を感じるだろうなと思うので。

歪愛ルートでも「毒を以て毒を制する」話ですが、
この場合は柘榴ちゃんの愛欲という名の毒が、
日之世さんの毒を制するさまが描かれます。

日之世さんは一緒なら悪魔でも構わないなど、歪んだ欲を
柘榴ちゃんから向けられることに喜びを覚えてもいました。

全ての物語に都合良く救いがあるわけではない。
日之世さんは自己犠牲によって救われることを望んでいません。
だから、自己犠牲の結末に救いがないことに、安心感を覚えるわけです。
良かった。自己犠牲によって皆が不幸になっている。
よって、自己犠牲は間違っていたのだ。そう実感できるから。

さてそんな彼が、自己犠牲によってハッピーエンドを迎えたら……?
これが歪愛エンドの肝でしょう。

歪愛ルートで柘榴ちゃんが幸福であるがゆえに恐怖を覚え、
自喰を繰り返すうちに生存欲や人としての倫理観を失っていきます。
柘榴ちゃんの生存欲を取り戻すために力を尽くした
日之世さんの気持ちを、柘榴ちゃんはまったく理解していません。
だって柘榴ちゃんは日之世さんではなく、自分を愛する日之世さんが好きだから。
日之世さんが『自分を愛する人』が好きだと言われることに
嫌悪感を覚えるシーンがあるのですが、歪愛ルートだと
お互いの愛欲を前に目が眩んでいる状態ですので気づきません。

自分は、この、歪愛ルートで一見して『二人の愛の力』で
乗り越えていると見せかけていながら、実際的には
どこまでも女王様とオフレンダでしかない皮肉に頭を抱えました。

具体的には、セリフが長いので引用は控えますが、
日之世さんが道化師をなじるシーン。
相手を愛するならば大切にするべきだ、というこの、一連の、セリフ。

実のところ柘榴ちゃんにそのままブーメランとして投げ返せることに
日之世さんは奇跡的に気付かずに済みます。

果たして愛する人を閉じ込め、異形の存在にすることが、
生殺与奪を柘榴ちゃんが一方的に握ることが、
相手を尊重し、大切にしている、といえるのか。

捧げているのは実のところ日之世さんだけで、
柘榴ちゃんはなにも捧げていない、という事実。

また、道化師と交わした、人魚姫の魔女は悪者か否かという会話が、
このルートを解釈する一助になるでしょう。
愛ゆえに、人魚姫は王子を殺せず、泡となって消える運命を受け入れる。

歪愛グッドでは、あれほど水を忌避していた日之世さんを
よりにもよって人魚にしてしまう趣味の悪さにゾクゾクしました。
永遠の嘘も、突き通せば真実になる。
柘榴ちゃんは人魚姫ではなく魔女であり、それでは人魚姫は誰なのか……と
いったことが一瞬だけ暗示されますが、日之世さんはその真実から
柘榴ちゃんの愛を信じるがゆえに目をそらす。
もしも気づいてしまえば、日之世さんがいる場所が二人の愛の巣ではなく
女王様による日之世さんの墓であることに気づいたらすべてが終わります。
もう引き返すことはできない以上、気づかないほうが幸せといえます。

妹に、愛ゆえに埋葬されることを心から嫌がっていた日之世さん。
それなのに日之世さんは気づかぬうちにお墓に閉じ込められてしまうのです。
なぜなら愛しているから。

人と絆を結ぶには、愛だけでは足りません。
愛を免罪符にすれば相手を支配していいわけではない。
相手への理解と尊重する心。これがなければただの独善的な愛欲に過ぎない。

埋葬されることが嫌で、海に落ちたときには安堵すらしたのに。
それほど埋葬されることが嫌だったのに。
柘榴ちゃんは日之世さんではなく、日之世さんを愛する自分を優先するがゆえに
妹さんとまったく同じことをしていることに気づかない日之世さん。
恋人ではなく、その実、女王様にすべてを捧げるオフレンダでしかない。
愛欲ゆえに両者の支配的関係に気づかない。
誰かを救うための善意などない。そんな言葉を裏付けるような、皮肉な結末でした。

一方の歪愛バッド。
いつもいつも歪愛バッドに到達するのにものすごく苦労するので、
これは本来、愛欲が高まったらほぼ気づかない、ということなのでしょうね。
土壇場で再び自己犠牲を選んでしまう柘榴ちゃんに、
日之世さんは柘榴ちゃんが、日之世さんをまったく理解しておらず、
自己犠牲を選んだ結果、日之世さんがどう感じるのかなど
毛ほども興味をもっていない、ぶっちゃけどうでもいいと思っている事実に
気がついてしまいます。柘榴ちゃんの死を見て日之世さんが傷つくとか、
考慮してすらいません。日之世さんは妹のときと同じミスを繰り返したくない、
また『相手を守る』という愛し方ゆえに、同じく自己犠牲を選ぶ。
なのに、柘榴ちゃんは何故か怒り出す。
自分だって同じことをしようとしたのに、怒った挙句、
日之世さんに死を赦さず、愛欲で支配しようとします。
すべてを諦めた日之世さんは、みずから棺桶に足を踏み入れる。
この、最期のモノローグが切なくて悲しくて、
いかにも人魚姫を想わせる儚さで胸が張り裂けそうでした。

愛するがゆえに、王子様へ自分のすべてを捧げた人魚姫。
たとえ王子様(女王様)が自分の想いに一切気づいていなかったとしても。
それでも。愛しているから。

柘榴ちゃんは、妹の八尋ちゃんとまったく同じことを日之世さんに
強いている事実を認識しないまま。
日之世さんは泡となって消えることもできないまま、
ずっとそこにただよい続けるのだと思うと、もう……
自分こそが王子様だと信じていた日之世さんが、
その実、愛を乞う人魚姫であり、反吐が出るほど嫌だった自己犠牲に
すべてを捧げ、それでも残った恋情のひとかけらを忘れられないさまに、
胸が苦しくなりました。

道化師のセリフに、片想いは一方通行、というものがあります。
これもまた長いので引用は控えておきますが、そのセリフを改めて考えると、
歪愛バッドでの日之世さんの想いはやがて消えていくものと推測できてしまい。
日之世さんは、一人でお墓に入るのはお断りだと言っていたのに。
柘榴ちゃんは愛欲のため、そうした日之世さんの言葉を
ぜんぶ忘れてしまう、というか、考慮しなくなるのです。
もうなんでもいいから日之世さん幸せになろ……

以下、前回は掲載しなかった名前の由来の予想。

マリス
マリスは本編に出た通り、もとはラテン語の「malicious」から来ている
悪意、恨みという意味で、法律用語ですが、それはつづりが「malice」である場合です。
「Maris」というつづりなら、「海」という意味になります。
また、ステラ・マリスは聖母マリアを表します。
アヴェ・マリス・ステラ (ラテン語原題:Ave Maris Stella)は聖マリアを称える聖歌で、
「めでたし、海の星」という意味です。「海の星」はカトリックで伝統的に聖母マリアを指します。

===以下抜粋===
めでたし、海の星
いと優しき神の御母
かくて、常に乙女なる
祝福された天の扉

めでたしの言葉を
ガブリエルの口より受け
我らに平和を与えたまえ
エヴァの名を変えられて
===ここまで====

罪の果実を口にして楽園を追われたエヴァ。
これを、罪なる願いによって武尊くんとの幸せな時間から追われ、
わが身を省みず願いを口にしたことで、彼女は
聖母マリア(母なる愛の象徴)になった、と読めそうですね。
ガブリエルは受胎告知など、「神の言葉を伝える」天使ですが……
実際には……。

妹の八尋ちゃんは日之世さんのために無償の愛を捧げる聖母であり、
無自覚の悪意によって日之世さんを縛り付ける存在でもあり……
といったダブルミーニングかと思われます。

Wikipedia情報です。詳細はこちら。

ネージュ
フランス語でネージュは「雪」の意味です。
雪は美しく見えますが、実際は大気中のホコリやら塵やらの固まりで
有害物質がたくさん含まれています。
また、八尋はそのままだと、八度尋ねる、でしょうか。
8は聖数で、八百万の神、という表現から「すごくたくさん」という意味合いがあります。
歎異抄には八十億劫の重罪を滅すべし、などいう記述もあり。
末広がりなどから縁起の良い数字でもありますが、
一方で西洋で8は不吉な数でもあります。
八本足のタコは悪魔の使い、悪魔の魚(Devil fish)と呼ばれ、嫌われているとか。

===

悪意とは、他人を害する意志、という意味です。
独善的な愛欲によって愛が相手にとって悪意へ変わる。
その恐ろしさをまざまざと描いた日之世さんルートでした。
コメント
コメントする








    

calendar

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>

応援中

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」 乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM