オーディンスフィア レイヴスラシル ワルキューレ編 感想

  • 2016.07.20 Wednesday
  • 00:37
オーディンスフィア レイヴスラシル


北欧神話をモチーフにした2DアクションADVゲーム。
2007年発売の名作「オーディンスフィア」のリ・クリエイト作品です。
つまりリメイクなのですが、システムなどが一新されています。
シナリオは変わらないので、PS2版オーディンスフィアを知らなくてもなんの問題もありませんでした。

特筆すべきは、なんといっても息を飲むほど美しいグラフィック。
美麗でファンタジックな世界観は、ただ歩いてるだけでも楽しいです。
ちょっとした仕草にキャラの育ちを感じられる細かさも好き。

また、シナリオの妙も光ります。
簡潔明瞭でありながらすべてのセリフに無駄がなく、
シェイクスピアを思わせるような古風で洗練された言い回しが世界観によく合っています。

ドラマパートではフルアニメーションで話が展開されていくため、
テキスト送りはできないのですが、この辺りは好みでしょう。

主人公は五人。
このうち、誇り高きワルキューレであり、魔王の治める国ラグナネイブルの
妹姫グウェンドリンの物語であるワルキューレ編の感想です。
まだ話の全容が見えていないので、他の主人公の物語も大事にプレイしていきたい。

アクションも爽快感があってなかなか良いです。
ブラインディングからのアイシクルウェイブをよく使ってました。
ブリザードもなかなか便利です。
無事にグウェンドリンのスキルコンプしました。

非の打ちどころのない作品ではあるものの、敢えて難を挙げるとすれば
同じステージや同じボス、同じ敵を何度も倒すことになるくらいでしょうか。
とはいっても、同じ敵なので攻略法が分かってるということでもありますし
温く感じるなら難易度を上げれば良い気もします。

余談ですが、ボス戦でアイテムを使おうとして間違えて卵を置いてしまい、
このゲームでは卵を床に置くとひよこが孵るので、ボスと戦いながら
ひよこを育ててにわとりにしたという離れ業を経験しました。
にわとりは鶏肉にして美味しくいただきました。
この世界では卵もビンもえらい頑丈で、剣でどれだけぶん殴っても、
槍で突きまくっても割れませんので問題ないのですが。
さらには羊が植物扱いなのにはびっくりしました。
なにを言ってるか分からないかもしれませんが、この世界では
羊はバロメッツの種を植えて実が成ると羊になって走りだすので、
走りだす前に仕留めることになります。ラム肉のタルタルステーキ興味あるけど
現実世界では匂いがありそうだな。ラム肉好きだけど。

また、火の洞窟であろうと雪山であろうと敵国の城であろうと普通に料理人が現われて
料理を食べることで経験値を上げるのが面白い。
メニューがやたら豊富なのもいい。ただ、深夜にプレイするとお腹が空いて困る。

以下ネタバレ感想
グウェンドリン

誇りと愛についての物語。

魔王の治める国ラグナネイブルは、誇りこそを最も尊ぶ国です。

ワルキューレ編では序盤に、モブワルキューレが「自分はまだ戦える」
「誇りを失って一生を男に従って生きていきたくない」
とグウェンドリンに
窮状を訴えるセリフがあります。このときグウェンドリンは同情を寄せながらも
それはこの国に生まれた以上は仕方がないことだと、胸中で独白します。
ラグナネイブルでは戦う力を失ったワルキューレは無理やり結婚させられ、
世継ぎを生むことを義務付けられている。

父王からの愛に飢えているグウェンドリン。
よく見れば父王オーダインはグウェンドリンを彼なりに愛しているようなのですが、
(多少の命令違反は目を瞑ったり、コルネリウス編では一応チャンスをあげたり)
しかしオーダインはいざというときに家族の命や想いや心よりも、
自身の誇り、王としての誇りを守り優先する選択をします。
それもまた愛といえばそうなのかもしれませんが、
それはグウェンドリンの望む愛のかたちではなかった。

相手が望まぬ愛を自分の都合で無理やり押し付けるのは、暴力と変わりません。
相手を愛しているからといって、自身の気持ちを押し付けたり、
相手を変えたりしようとする免罪符にはならない。

それでは結局のところ、人を愛するとはどういうことなのか?

愛について考えさせられる秀逸なシナリオでした。
父王オーダインは、相手にも誇りがあることを理解していなかったのか、
あるいは相手の誇りよりも、王である自身の誇りが凌駕すると考えていたのか。
自分の誇りを守るために相手の誇りを叩き潰してもよいとする生き方には
物語として明確に否を突きつけていることが好感触でした。

いずれにせよ、オーダインは心の中で愛していても、彼は家族が窮地に陥ったとき
家族と王の誇りを天秤にかけると、王としての誇りを守ることを選び、
保身に走ってなにもしません。
その姿勢を臣下に利用されていると分かっていてもなお。
彼は自身の誇りを守るために他のすべてを犠牲にします。生涯唯一の愛でさえも。

ところで、私はオズワルドさんを勝手に無口クール系だと思い込んでいたのですが
意外にも情熱的で、愚直なまでのまっすぐなアプローチに心ときめきました。

グウェンドリンは父の愛を得るため、あるいは父の心を思いやるがゆえに
人としての父オーダインの大切なものを護ろうとして、
皮肉なことに王としての父オーダインに叛逆することになります。
それは愛が、誇りへ反旗を翻した構図でもあり。

父王オーダインの気持ちを汲んで叛逆の汚名まで被ったグウェンドリンの愛に対して、
オーダインはまたも自身の、王としての誇りで以って断罪するというかたちで報います。
そして、それこそ戦利品かなにかのように、オズワルドとの取引材料として利用する。

オズワルドとグウェンドリンのやり取りは、およそものの数分にも満たない短いものです。
その邂逅時にグウェンドリンの心を奪うに足る言葉を投げかけたオズワルド。
彼の真摯な愛がグウェンドリンに伝わったと感じられてお気に入りの場面です。

誇りあるワルキューレであるグウェンドリン。
彼女にとって、否、すべてのワルキューレにとって戦士としての誇りを失い、
世継ぎを生む道具としての結婚は屈辱的なものです。
しかし父王オーダインを始めとしたラグナネイブルの男は、
自身の誇りのため、世継ぎのためならば相手の誇りを潰しても良しとする。
自身の誇りを守ることにはやっきになるにも関わらず。

だけどオズワルドは、グウェンドリン自身も気づかなかった、彼女が心の奥底で最も望む言葉をかけます。
「君は物じゃない」
すなわち彼女を尊重し、人間としての尊厳を守る言葉を。
このシーンのグウェンドリンの反応は一見、父王オーダインが罰として
グウェンドリンにかけると言った、「目覚めたときに最初に目にした男に心を奪われる」という
魔法によるものと見せかけられるのがうまいですね。
ドラゴンと戦ってまで結婚の許しを得たのに、オズワルドはグウェンドリンの
意志を無視するような真似はしなかったのが好ましく感じました。
あくまでもグウェンドリンの気持ちを思いやる、オズワルドのその振る舞いに
グウェンドリンは人に大切にされること、尊重されることとはどういうことなのかを知る。

オズワルドはグウェンドリンへの愛の証だと信じて試練に立ち向かうものの、
はたから見るとグウェンドリンという餌につられて父王オーダインや
炎の国の王オニキスにまで利用されているさまが心に響きました。

たぶん、オズワルドにとってはグウェンドリンの愛を得るために、
本人と向き合うよりも、ドラゴンと戦うほうが分かりやすく感じるのかもしれませんが。
妙な小細工をしない、愚直で不器用でまっすぐなオズワルドの愛に
グウェンドリンは心を揺さぶられます。

グウェンドリンが父王オーダインの求めるティトレルの指環を手に入れるなり
手のひらを返す父王の姿に、オズワルドがグウェンドリンへの愛を利用されたのだと
グウェンドリンが悟り、父のもとを去るシーンも好きです。
父から求めていた愛を手に入れても、オズワルドからの愛の前には色あせて見えてしまう。

グウェンドリンが最も大切にするもの、グウェンドリンの誇りを
尊重してくれたオズワルドにグウェンドリンが惹かれるのは説得力があって
心ときめきました。また、自分の好きな冥界行のエピソードもあっておいしい。

オズワルドは、短いテキストの中でも気持ちのやさしい男であることが
分かるように描かれていてとても良かった。
誤解からオズワルドが失恋の痛みに打ち沈む場面があるのですが、
それでもグウェンドリンの心を思いやれるのがオズワルドの得難いところです。
傷ついたときに自分の心の痛みしか見えず、相手を逆恨みする人はたくさんいます。

父王オーダインはグウェンドリンをいかに褒めても、
まるで物の価値を検分するかのような言い方しかしません。
たぶん最大限に褒めてるつもりなのだとは思います。
極めつけは、グウェンドリンが少しでも意にそぐわない言動を取ると、
「追放された娘が王と取引しようというのか」と
心のどこかで「許してやっている」と、グウェンドリンを格下と見なしていた気持ちが
露呈してしまうありさま。

自身の誇りだけを優先するがゆえにすべての愛を失い続けてきた父王オーダインが、
ついには父としての尊厳を守るために選択の余地がなくなるラストは、
因果応報感があって良かったです。
元はといえば彼がオズワルドの、グウェンドリンへの愛を利用したところから
始まっているので、自業自得という感想しかありませんが。

オズワルドとグウェンドリンの想いが通じ合うラストはロマンチックでした。
愛とは相手を慈しみ、相手の誇りを尊重すること。
愛と誇りは対立するものではなく、共存するもの。
そんな答えを提示したシナリオが美しかった。
オズワルド編も楽しみです。
コメント
こんにちは、大樹さん。感想が増えててとてもうれしかったです!
しかもオースフィ!!オースフィじゃないですか!!
雪山のボスが2体出たときに、回復アイテムがなく、戦闘中に羊の種を植えて凌いだのを思い出します(笑)

オーディンスフィアはVITA版で初めてプレイしたのですが、私は感想を言葉にして表現することが野暮ではないのか、あるいは、言葉にすることで陳腐なものだと自分で貶めやしないかと――まさに汚してしまう責任をとれない、怖いと思ってしまったことを思い出しました。私の言葉を目にする機会のある方がオーディンスフィアを神聖視していたのもあるのですが……。
プレイしてそのまま考えることなく、発露した感情以上のものを言葉にする自信がなかったのも確かで、大樹さんの感想はとても面白かったです。

ものの数分の邂逅で愛を示す言葉を、尊厳を守ろうとする意志を示したから、惹かれたというのはまさにその通りですね。
私もあの二人がなぜ惹かれあったのかということがあの短い間でそうなることに不自然さがないところがとても好きだなあと思っています。
父から求めていた愛を得られたのに、色あせて見えてしまうっていうところは、ああ、そうか、なるほどしっくりくるなあと思いました。私などはもっと単純に、そこで王に褒められようが当然という振る舞いをされようが、グウェンドリンはもう既にラグナネイブルのもとにいるわけではないが、最後の義理を果たしにいった(果たさずにはおれなかった)くらいの気持ちで見ていました。
父としての尊厳を守るために選択の余地がなくなるラストというコメントも少し笑ってしまいました。本当にそうですね。第三者からすると、オーダインの取った行動がもっと違うものなら、グウェンドリンを失うこともなく、覇権を握ることも夢ではなかったのだろうに……とまでいくと、実際難しいと思いながらも(なぜならグウェンドリンは捨て身で愛を示してくれたオズワルドだから、たった一人の人間だからこそ、あそこまで頑張れたと思うので)ありえなくもなかったのにね、みたいな感じで……。
オーダインのした仕打ち(もの扱い)をみれば、妥当で、そりゃだれもいなくなるわ、部下には裏切られるわ、国も滅びかけるわなとか(ぶっちゃけすぎですね)

ところで、ここから個人的な問題も踏まえての感想になるのですが、大樹さんの意見をお聞きしたいなあと思ったので、もしよかったら聞いてください。
「それはグウェンドリンの望む愛のかたちではなかった。
相手が望まぬ愛を自分の都合で無理やり押し付けるのは、暴力と変わりません。」
についてはオーダインが自分の愛の形をグウェンドリンに押し付けることを言ったとおもうのですが、私はこれを見て微妙に衝撃を受けました。なんだか……身動きが取れない話だなあと……。
この理屈でいうと、グウェンドリンはオーダインを愛ゆえに変えられないからです。それが暴力になるから。(実際にグウェンドリンはオーダインを変えようとすることはありませんでした。)しかし暴力にならなくても、オーダインが変わる方が幸せなのかはわかりませんでした。オーダインにとって、愛よりも誇りを選ぶことは正しいことなのに。私が感じたのは、愛を惜しいと思う気持ちはあれども、誇りに殉死する気持ちこそ正義で、守るべきルールだという思いはおそらく、オーダインにとって、強がりではなく、真実だと思ったのです。(あ、その……考え方が大幅にずれていても、私という人間がそう捉えたと仮定して想像してください……)

では、オーダインは(最適解として)どうすべきだったのだと大樹さんは思いますか?
オーダインの行動はオーダインしか決められないので、これは完全に私的な質問なのですが……。→
  • シロウ
  • 2016/07/20 4:50 PM
→補足すると、それがラグナネイブルに根付いた価値観でもあるくらいで、オーダインは自分の望む形の愛(個人の情を捨ててでも、国を大きくすることで、国および個人を守ることがオーダインにとっての情になりうる)を与えることは、「オーダイン自身が望んでいる」と「オーダインが思っている」限り、正しいことです。
それがオーダインにとって結果守るべき愛を失おうが、失い続けないといけないし、失うことを平気に思おうとすれば、それなりに愛を知ってる(だが見ないふりをする)オーダインからすると、道具であると思う方が楽なはずです。自分を自分で変えること(つまり、娘を思いやって、娘の求める愛を与える親に変わること)が国を弱くすることだと信じていれば――揺るがぬ魔王たらんとすれば――思いやりを持つに持てない。
ただ、私は、そんなオーダインが、ベルベットについては、揺らいだのにもかかわらず、揺らげなかったことが引っかかりました。
結局優先順位を変えられないことについて嘆くそぶりさえ見せられずに、ただ、グウェンドリンに感謝しているのだろうさまは、息苦しそうで、そういう、自分を曲げないことによってこうむるしんどさから逃れられない人を見ると、どう在ることが幸せなのかわからなくなりました。逃れる気がないのか、逃れたくないのかなんて、感じ方の違いで、結果は同じなんでしょうが……。それに、幸せのあり方や、今が幸せかどうかを決めるのは本人以外の誰もできないのですが、物語を通してみて、自分に置き換えると、やっぱりわからないなあと思ってしまって。

私は、自分らしく、自分が思うように生きることこそが幸せなのだと教育されてきました。だから、オーダインのような生き方は幸せでなくてはならないはずなんです。それなのに、どうして彼はしんどそうに見えるのでしょうか。それとも、そういうふうに見えるのはオーダインの状態がどうあれ、私自身が持つ、愛を大切にすべきだという思いこみがオーダインを歪めてしまっているから?
自分らしくあることと相手を思いやって、自分を変えることが両立できるというのは、オーダインのような場合でも可能なんでしょうか。

こうやって私が大樹さんに聞くことで、その答えをずばり我がものにしようと考える責任を押し付けようとする意図ではないので、気軽に応えていただけたらなあと思います。……ま、まあそもそも、自分が答えを明確に出せなかった問いについて考えていただくのも、ただ甘えているだけで気が引けるのですが、私はそれでも、大樹さんの出した答えを聞いてみたいと思ったので、時間があるときにでもお返事いただけたら幸いです。

追伸
自覚があっても矯正まで至ってないのですが、へたな乙女ゲーム(失礼)よりも読みにくい文章ですみません……。答える上でわかりにくいところがありましたら、伝えていただけると助かります。
  • シロウ
  • 2016/07/20 4:51 PM
初めまして。数年前からこちらにちょこちょこっとお邪魔しては、感想を読ませて頂いている者です。
大樹さんの感想はいつも洗練されていて秀逸というか…。
すみません、上手く文章に出来ないのですが、語彙が貧弱の自分ではなかなか出てこない表現をなされるので、いつも読んでいるとついつい引き込まれてしまいます。長文素敵!
余談や他作品の引用、比較を含め、ああ分かる!と納得したり、逆になるほど!と目から鱗が出たりする事も多々ありまして、未プレイや未読作品を購入する際の、参考にもさせて頂いております。

そんな中、今日は懐かしい作品の感想を発見!
『オーディンスフィア』
リ・クリエイト作品ですから新しいともいえるのですが、自分はPS2時代に購入して何度かプレイしてまして。
年月が経ってる分、多少思い出補正がかかってるかも知れないんですけど、とても大好きな作品の一つなので、大樹さんがどう感じられるかなーとワクワクして、ワクワクして…あれ、勝手に指が現在進行形でコメントを…。普段はひっそり読んでるのにそれだけで終われなかった(笑)

是非、バッドエンドやED後の隠し要素も含め、すべてプレイして頂きたいなと。
終焉までの感想、楽しみにしております。
うーん、自分も久々にプレイしたくなってきました。vita版買おうかなー。
  • yuko
  • 2016/08/01 9:47 PM
★シロウさんへ

コメントを書いて投稿したのですが、長すぎてブログにまで引かれてしまいました。
別記事を上げますので、そちらをご参照ください。
  • 大樹@管理人
  • 2016/08/02 12:42 PM
★yukoさんへ

初めまして! いつもブログに遊びに来てくださって、ありがとうございます。
もったいないお言葉をいただき、恐縮です。
当ブログが、yukoさんにとって役に立っているのであれば、私もうれしく思います。
なにか気付きにつながっていればいいなと私も書きながら考えているので、コメントをありがたく拝見いたしました。
他作品購入時にも、参考資料のひとつにしてもらえれば幸いです。

PS2時代にプレイされたのですね!
オーディンスフィアはVITA版でシステムが変わっていると聞きます。
新曲もたくさんあるようですし、気が向かれたらプレイされてみるのもいいかもしれません。

隠し要素はこれからプレイする予定なのですが、バッドエンドはすべて見たと思います。
また感想記事を上げますので、暇つぶしにでも読んでくだされば光栄です。
  • 大樹@管理人
  • 2016/08/02 12:59 PM
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