Room No.9 感想

  • 2016.10.03 Monday
  • 19:16
Room No.9


ずっと友達でいたかった。

成人向け密室監禁BLアドベンチャーゲーム。
名作「NO,THANK YOU!!!」を出したparadeさん期待の二作目。
ミドルプライスながら手を抜いたところは一切なかったのに驚きました。
確かにノーサンに比べれば短いのかもしれませんが、内容は非常に濃いです。

このまま新作が出ないのではないかと心配してたので、
継続していく意志があるらしいことにはほっとしました。

シナリオが前作を担当された雨宮さんではないため
クォリティが心配だったのですが、杞憂でした。
このクォリティを保てるのであればシナリオは他の方でも
一向に構わないので、今後に期待しております。

しかしそれにしてもスチルの凝り具合はすさまじいです。
差分を入れて2000枚ってどういうこと……
もうちょっと手を抜いていいんだよ……と思いますが、
恐らくそうした妥協ができないからこそ、
こうした丁寧な仕上がりになるのでしょうね。

相変わらずシステムは非常に親切で、プレイスタイルを細かく設定できます。
攻略は簡単で、総当りしていけばそのうちフルコンプできる。
シーン鑑賞ではチャートもありますし、イージーモードもついています。

以下ネタバレ感想。
自然界で生き延びる掟は実は弱肉強食ではなく、
個体の環境への適応力であると思い出させてくれるような話でした。
それにしても、プレイヤーは運営側と同じ視点で物語を
俯瞰して眺める羽目になるのが、なかなか意地悪な趣向ですね……。

序盤にとても印象的な場面があります。
ひょっとして体験版にも収録されてるのかな。
何者かによる誘拐監禁に気づいたとき、二人はぴんと糸の張った緊張感が漂う中、
なんとかして平静を保とうとします。いつ崩れてもおかしくない薄氷を踏む思いで、
お互いにどうにか平静さと日常をたぐり寄せようとする。

平穏の皮を被ったどこか緊迫した空気が流れるのですが、
どうにか日常を取り戻して気がまぎれたと思えた次の瞬間に
隣室から怒声が響き、空気が凍りつく、というあのシーン。

あの瞬間に大地と誠ニは、自分たちの置かれた状況が
まぎれもなく現実のものであり、そして実験から逃れられないことを痛感します。
それを空気感で描いたところに、表現者としての技量を感じました。

最初は他人のことを気にする余裕があった大地と誠ニですが、
日が進むにつれ課題は過酷になり、他人については話題に
上ることすらなくなるのもリアルでした。
「嫌だ。考えたくない」という大地のモノローグがすごく頷けてしまった……。
どのみち考えたところで大地にも誠ニにもどうしてやることもできず、
ストレスが更に貯まるだけなので、考えないほうがいいとは思う。

また、9を逆さにした6号室の二人組が脱出に成功したらしいことも
示唆的ですね。2号室がこの部屋に住んでしまっているところも、
B/Cルートを暗示していて、こうした伏線が丁寧でした。

この作品では、大地にとっても誠ニにとっても神聖な二人の結びつきが、
外から無理やり歪められてしまう悲劇が描かれます。

彼らにとっての「友情」はとても大切な、かけがえのないものだった。
かけがえのない、を辞書で引くと「他に代わるものがない」という意味があります。
それだけ二人にとっての「友情」は、唯一のものだった。

初回エンドはノーヒントでFでした。慎重に慎重に、まるで綱渡りのように
進めていったので、Fエンドに到達できてすごくほっとしました。
お互いに大切にしてきた「友情」を、壊さずに済んで良かった。
同時に、もうこれでプレイを終わりにしたくなった。

途中、大地が「もし美香と来ていたら」と考える場面があります。
この状況は「人は緊迫した状況でどこまで絆を保てるか」
観察するための実験施設であるように感じられました。
観察となればさまざまなサンプルが欲しくなるものです。
作中で他の参加者になったであろうと思しき人たちが
合コンで会ったっぽい軽めの男女グループ、家族連れ、そして同性の親友同士(主人公)。
当然、恋人同士のサンプルもどこかで取っていたと思いますが……
ここまで用意周到だと、美香が心を移したのも
組織のなんらかの計らいによるものではないかとすら邪推してしまった。

つまり、始めから、沖縄に来るのは無二の親友同士である大地と誠ニを狙ったのではないかと。

最も簡単に出られるのが誰かを犠牲にすること、というのも
またエグいルールですね。特に家族連れが外に出るには……と思うと
ほんともうこれ以上考えたくない……。

共通ルートからの分岐を見るに、お互いが同じぐらいの痛みを
抱えなければならず、そのバランスが崩れると友情も崩壊するさまが、
友情とはなにかを思わせて、興味深く感じました。


route 1

大地の心が折れてしまうルート。
長期的なストレスによる離人感、そして感情鈍麻によって
失感情症にまで発展しているように思われます。恐らくは二人とも。
感情鈍麻に陥ってるから痛みを覚えず、痛みが分からないから
他人に共感することも難しくなる。

大地は感情を失ったことを「自分(の素質)のせい」と受け止めてしまいます。
本当はぜんぶなにもかも組織(環境)のせいなのに。
虐待された子どもが親になると、子どもに虐待をする可能性が高まるといいます。
大地は誠ニのおかげでそうなるまいと前向きに生きてきたのに、
精神負荷によって自分のラベリングを貼り替え、歪められたように思いました。
大地はずっと、誠ニを傷つけながら、傷つく誠ニを見ながら、
実のところ大地自身が一番傷ついてしまったのかもしれない。
あまりに辛くて、感情を失ってしまうほどに。

大地の底抜けの明るさの裏には隠れた自己否定感と無価値感があって、
それが彼女と簡単に寝ては捨てられるというサイクルに表れていると
誠ニに指摘される場面がありました。
彼は自分の価値をあまり高く置いてないから、自分を求める女の子を
過剰に評価して、すぐに好きになってしまう。
それでも今まで身を落とさずにやってこれたのは、
大地には誠ニという防波堤があったからだった。
大地にとって希望であり、憧れであり、尊敬する誠ニを、
みずからの手で穢すことで大地の心が折れてしまう、というのがすごく悲しかった。

植え付けられた嗜虐性のままに友情が快楽へと置き換わっていくさまがグロテスクでした。
あれほど誠ニを尊敬していたのに、恐らくは尊敬していたからこそ、
それが反転してしまったときの影響も大きかった。
解放されても二人の心はずっとあの部屋にいるときのまま。
絶望に飲み込まれてしまったエンディングのようにも感じられます。



route 2

こちらは誠ニの心が砕け散ってしまうルート。
誠ニが尽くすタイプだというのは納得感がありました。
彼は、本当の絆しか欲しくないのかもしれない。
友達がいないのも(知り合いはたくさんいて、しかも嫌われてるわけでもなさそうなのに)、
誠ニはたぶん、本物の友達しかいらないと思ってるからなのかなあと思います。

彼はどんなときも大地の心を思いやり、なんでも引き受けようとします。
そして誠ニは精神的な負荷を抱えきれなくなってしまう。
壊れた誠ニの心を目の当たりにして、大地が特に抵抗しないのも辛いし、
結局そこでやめてしまう誠ニもまた辛い。
死を選んでしまうときって、視野が極端に狭くなっていたり、
白か黒かの両極端でしか考えられなくなったりしているときに起こりがちです。
大地が弱いからこそ誠ニに支えてもらっていたわけで、
支えがなければもろともに崩れ落ちるしかない。
Bエンドでキャッチコピーが出てくるのも辛かった。

Cエンドのほうは、いずれポイントが尽きるときは来るわけで……。
砕けた誠ニの心をつなぎ合わせることもできず、支えることもできず、
ならば共に堕ちていく道を選ぶのは、それが大地の友情なのだと思いました。
たとえ破滅しかないと分かっていても。


route 3

E/Fエンドへと向かう浴室のシーンが特に好きです。
親に捨てられても、それでも泣くことはなかった大地が、
誠ニとの友情のために一線を越えて嗚咽する場面では、泣いてしまいました。

あの大地の行為は、誠ニが助けを求める方法すら知らない大地を
放っておけずに、夜のコンビニで手を差し伸べたときと同じものだった。
明確に欲を孕んだ行為でありながら、それでもあれは友情によるものなのが、胸に迫りました。

友として苦しむ誠ニを放っておけず、だけど手を差し伸べると
一線を越えることにつながるというパラドックス。

それでも手を差し伸べずにはいられなくて、だけど助ける手段が
お互いの関係を壊しかねない、どちらも望まないものしかなくて。
嫌悪感と後悔と自責の念に苦しむ大地が哀れで悲しかったです。

誠ニは、大地が自分を助けようとしたのだと悟ったであろうことも相まって、
哀しくも、その友情がとても美しい場面だと思いました。
自分はプレイしていて、「もうちょっとうまく助けてやれれば」と
考えてしまったのですが、フルコンプして見るとあれがベストの解決策だったという……。

それでもその後の選択を失敗するとEエンドに向かってしまうのが
なんともいえない。誠ニは、大地に親友として承認される自信も、
そして大地を親友として信頼する自信もなくなってしまったのかもしれない。

二人は脱出した後に、「友だち」をやり直さなければならない、というのが
人の感情の変遷として秀逸だと思いました。
大地と誠ニはあの瞬間に「友だち」をやらなければならなかった。
脱出に成功した直後、そして別れる前にやらなければならなかった。
そうでないと離れている間、一人になって起こった出来事を反芻しているときの
恐怖感と疑念を払拭できない。次にお互いの顔を見た瞬間に、親友の存在と
地獄のような10日間の記憶が紐付くことを恐れてしまう。
10日間の記憶によって歪んだ自分と、歪んでしまった関係性を
目の当たりにするのではないか、自分は変わったのではないか、
親友に失望されたのではないか、
そして親友は自分が考えていたような人間ではなかったのではないかという恐怖。
でも一度「友だち」をやっておくことで、「あ、戻れた」という実感を得られます。
なんだ戻れたじゃん、戻れるじゃん、友情は変わらないんだ、という安堵感と承認を、
お互いに確認しあわなければならなかった。
なによりも優先して、二人の関係性を回復しなければならないぐらい、
「友情」は危うい土台の上に立っていたのだと感じました。
この友情の再構築と確認を怠ると、二人は取り戻しかけた「友情」を
決定的に失うのが象徴的です。

なんにせよ、とても楽しかったです。
恋愛エンドがなかったのも味わい深い。

ノーサンは、ハルが蜘蛛の糸を愛でた末に地獄へ帰っていくような物語でした。
ハルは、蜘蛛の糸から脱出できると信じるには絶望を見すぎてしまっていた。

対するルムナンは、蜘蛛の糸から二人で脱出するために
分かち合い譲り合うような話でした。
奪い合えばたやすく切れてしまうのが蜘蛛の糸です。
人との絆を築くのは難しくも壊すのは一瞬で、その中でも
絆を守り切る道もあるというエンディングは、
救いがあるものではないかなと感じました。
コメント
ご無沙汰してます。螺旋の檻以来の新作BLゲーム!二人ともホントに良い子で実験の非道さが際立ちますが、気になるのは他の部屋の被験者たち。大人なら、どんな結末も自分で選んだものですが、親子連れは耐えられない。ケッチャムの鬼畜小説を思い出してしまいます。
  • nobara
  • 2016/10/06 10:03 AM
こんにちは、お久しぶりです!
どちらも相手を心から思いやっていて、見ていて胸が痛かったです。
確かに、他の部屋の被験者のその後は気になります。
いろいろ考えてしまいますね……。
  • 大樹@管理人
  • 2016/10/08 11:57 AM
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