Papers, Please 感想

  • 2016.12.20 Tuesday
  • 02:59


おめでとう。

10月度勤労抽選により貴方を入国審査官に命ずる。
即座配属のため、至急グレスティン国境検問所の入国管理省に赴くように。
貴方とその家族には、東グレスティンの8等級の住居が割り当てられる。


アルストツカに栄光あれ。


ここは、共産主義国アルストツカ。
隣国コレチアとの6年間の戦争がついに終わり、国境の町グレスティンの半分を正当に取り戻し、
晴れて国交を再開することに。
あなたの仕事は入国審査官としてアルストツカへの入国者を審査することです。
仕事を探している移民や観光客の中に潜む密輸業者、スパイ、テロリストたちを見極める必要があります。
入国希望者のパスポートをはじめとする数々の書類をもとに、
入国を認めるか、拒否するかを判断しなければなりません。

===

入国審査官体験アドベンチャーゲーム。
結構前から気になっていたのですがようやくプレイできました。
インディーズゲームでも有名な作品で、数々の賞を総なめにしているのでご存知の方も多いかと。
日本語版があり、翻訳も違和感はそれほどありません。
現在9ヶ国語に翻訳されているだけあり、シンプルでありながら奥深く、
必要最小限のテキストで繰り広げられるドラマがあります。
また、作業自体にも中毒性があり、気づけば延々とプレイしてしまう。

舞台は架空の共産国家アルストツカ。
主人公は入国審査官として国境に配属されます。

ゲーム内容は、簡単に言うと間違い探しです。
入国希望者の用意してきた書類を審査し、問題があるかどうか調べて判子を押します。

やることは八割がたこれだけなのですが、この判子ひとつに多くのドラマがあるのが醍醐味。
そして、主人公の給料は歩合制で、悲しくなるぐらい薄給です。もちろん残業代なんて出ません。
その中で主人公は家族(妻、息子、義母、叔父)を養っていかなければなりません。
最初の一周目〜三周目ぐらいは攻略を見ずに最後までプレイすることを断然おすすめ。

自分はSteamでPC版を購入しましたが、PLAYISMやiPad版もある様子。
紹介記事もたくさんあるので気になる方はぐぐってみるといい感じ。

興味がある方は、最初はネタバレも攻略も一切見ずにプレイされることを強く推奨します。

エンディングは全部で20種類。
期間中に主人公が取った行動によって分岐します。

オープニングテーマが癖になるくらい好きで延々と聞いてられる。
ゲームの雰囲気は共産国家らしさがとても出ており、どことなく緊張感があります。
共産国家なので当然ですが、人権などという上等なものはありません。

以下ネタバレ感想。
一周目では普通に金が足りなくなって、負債を抱える羽目に陥る
エンディング1(いわゆるバッドエンド)でした。

二周目ではあまりの困窮ぶりに、つい不審人物から大金を受け取ってしまい、
近隣住民に通報されるというTHE・共産国家なリアル感あふれるエンディング4。

ここまでは割と簡単に見られるので、三周目でも攻略を見ずにもうちょっと頑張りました。

三周目になると書類をさばくのにも慣れてはくるのですが、どうにも生きるのに精一杯で、
息子が誕生日に欲しがっていたクレヨンも買ってやれないまま
天涯孤独の姪はお金がなくて実質見殺し、更に息子と義母を病で死なせてしまうことに。
しかし食い扶持が減って正直ほっとしてしまいそこで罪悪感を覚えるという、
なんともいえない迫真性のある気持ちを味わえます。
お金大好きだよ。お金大事。

それでもどうにか頑張って、三周目では妻と一緒にオブリスタンへの逃亡に
成功してエンディング16を迎えました。
なお、叔父は生きていたのですが逃亡費用が足りず安否不明……。
一周目と二周目では鍵となるあの人を告発してしまったのですが、
三周目でつい見逃したところまさかの展開になって驚きました。
こういう流れってすごく好きだなあと思います。
キャラとしてはこの人も一二を争うくらい好き。

殺伐とした雰囲気の中でもほのかな温かみを感じられて、
人の情や、思いやりというものが際立つのが良いですね。
ただ人を容赦なく追い詰めるだけじゃなくて、追い詰められた先に
それでも失ってはいけないものがあるのではないかと思わせてくれるような。
この作品では完璧な善人もいなければ完璧な悪人もいない。
それこそが、人間という生き物をよく表しているように思います。

善意でしてあげたことに対して恩を仇で返されることもあれば、
期待していたような感謝をもらえなかったり、かと思えば意外なところで
人間の温かさに触れられたりと、展開が読めないのが面白かった。



以下はキャラ別の感想。


手当を融通してくれる警備兵

爆発物を見た時の対応がすんごいドライで笑ってしまった。
歩合制だから死活問題だもんね……。強かに生きてる感じが好きです。
彼の手当のおかげで助かった部分は大きい。


児童連続殺人犯に復讐しようとする父

写真のJuliaの愛らしさがまた切ない。
あれを見ながら書類をさばいて考える時間が用意されている仕掛けもうまい。
正直手伝ってやりたいのはやまやまですし、気持ちは痛いほどよく分かるけど、
一体どの選択が正しいのか。
復讐によって殺しに手を染めることになる父を思うと、
軽率に手助けしてしまっていいものか悩ましくもあり……。
あと、主人公も家族のためのパスポートと金を用意しなくちゃいけない段階で
場合によっては罰金に悩まされる、というのも容赦なくて好きです。
このイベントは成功したところで、特に報奨金が用意されてないのも良いですね。
プレイヤーの良心に強く訴えかけるイベントだと思いました。


謎の組織

最初のうち暗号文はガン無視してたのですが、後で攻略を見ながらプレイしました。
結果、なんだかんだと便宜を図ってやったのに、破滅した挙句の果てに
紙切れ一枚だけで済ませられるエンディング9と10やエンディング17(たぶん)の無常感が
なんともいえない。わずかな救いがあるといえばそうなのかもしれないけど、
真偽は確かめられないし、結局は体よく利用されて使い捨てられただけというか……。


Sergiu(セルジュ)
顔なじみの感じの良い警備員。
最初のうちは狙撃のコツが掴めず早々に死なせてしまってたのですが、
救出できることが後で判明。死亡状態でElisaと交わす会話も
物悲しくて良いですね。彼のために同じ日を何度かやり直しました。
Elisaとのイベントはほのぼのして良いのに、直後のあの展開は
鬼かよ……と呻いた。ひでえよ。生存のために頑張って狙撃しました。
下手だから5回ぐらい同じ日をぐるぐるやり直した気はするけどその甲斐はあった。


息子の絵

何度見てももらえるとにこにこしてしまう。
あれを見ながら仕事を頑張る感がいい。




見殺しにすると後味悪いので、救出できて嬉しかったです。
一言も喋らないどころか顔グラすらないけど、
やっぱり一緒にオブリスタンに逃亡したい。


アンテグリアから亡命してきたおばさん

希望をもって入国してきたのに新聞で知らされる末路が印象的だった。


スタッフロールが流れるエンディング18とエンディング20は感慨深い。
あの打って変わった明るい音楽も良い。
特にエンディング18は家族全員の逃亡に成功しただけでなく、
病気の息子のための薬も買った上で逃亡できたので感無量です。
最初はお金がギリギリで薬なしで逃亡したのですが、あのままだと
死ぬ可能性が高いのでやり直して薬と共に逃亡しました。



食べ物は少量買って分け合えばいけるだろ、ということで自分の中でセーフ判定にしました。

エンディング20は、やばそうな組織に関わらなければ
普通に暮らしていけるのにちょっと笑った。
だけど5等級の家って家賃がお高いので、よほど敏腕じゃないと
なんかあったときに恐いから8〜7等級で我慢してたほうが無難だと思う。

長く暗いトンネルの先にちらちらと光を見せてくるような感覚を味わえる点が、
このゲームをプレイする醍醐味だと感じます。

また、選択の重要性が強く活かされているところが大好きです。
ほんのちょっとした選択が運命を大きく変えることにカタルシスを感じる。
だからこそアドベンチャーゲームをプレイしているようなものですが、
多くはないテキストで「Papers, Please」が見せる運命の数奇さにも惹かれました。

生活は決して楽ではなく、苦労しているのはみんな同じなんだけど、
ここまで追い詰められてどこまで人としての心を保てるのか、
理想(良心)と現実(家族の生活、あるいは保身)を天秤にかけねばならない展開に
非常にハラハラさせられつつも、胸に迫るものがある作品でした。

興味があれば是非。

アルストツカに栄光あれ。
コメント
御無沙汰しております。まだ冷戦とか鉄のカーテンという言葉がリアルで存在していた80年代の共産圏の雰囲気が見事に表現されているのですね。そして共産圏なのに家賃、暖房費、薬代は自己責任!給料も完全歩合制とブラック企業並。ポエミーな標語や表彰状が大好きなのも、ブラック企業っぽい。薄給で義母や叔父まで養えない!共産圏なら男女平等で奥さんにもバリバリ働いてもらい、年寄りには食材の余りでピクルスや酒を作らせ物々交換してもらいたいです。資本主義国より金銭にシビアにならざるを得ない皮肉よ!
  • nobara
  • 2016/12/24 10:57 PM
ご無沙汰しております!確かにブラック企業と社会主義/共産主義は相通じるものがありますね。ポエミーな標語(笑)連帯感を高めるための装置として有効なのでしょうね。そういえば、両者はどちらとも大言壮語な物言いを好みますし。
掲げる理想は立派そのものなのに、人間世界の現実を無視しているため、理念に無理やり従わせるためには必要な措置なのかもしれません。
  • 大樹@管理人
  • 2016/12/27 8:50 PM
明けましておめでとうございます。今年も心に刺さる、深い考察の記事を楽しみにしております。毎週金曜日のNHKドキュメント72時間で今夜は「成田 聖夜の入国審査場」を放映するそうで、こちらのゲームを思い出してしまいました。平和な時代でも、色々なドラマがあるんですね。あとやはりNHK深夜の「ねぽりんはほりん」というパペット番組にはまっております。2次元しか愛せない女たちの回は身につまされました。
  • nobara
  • 2017/01/13 11:53 AM
明けましておめでとうございます。もったいないお言葉をいただき、ありがとうございます。期待に応えられるよう頑張ります!
入国審査を始め、空港に関するドキュメンタリーなどは面白いですよね。普段見られない仕事をかいま見られて。
NHKは興味深い番組がいろいろありますね〜。
  • 大樹@管理人
  • 2017/01/13 9:04 PM
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