悠久のティアブレイド -Lost Chronicle- シュド 感想

  • 2017.02.18 Saturday
  • 18:46
悠久のティアブレイド -Lost Chronicle- - PS Vita


乙女SFファンタジーADVゲーム。全体的に完成度が非常に高いです。
立ち絵やスチル、背景、UIなどのグラフィック関連はどれも美しい。
肝心要の人型兵器ティアブレイドのデザインが格好良いのも素晴らしい。
音楽も良いです。

なにより特筆すべきなのはシナリオ。
ボーイ・ミーツ・ガールの基本、創世記などのモチーフ、
加えて物語としての面白さもありつつ、乙女的な萌え部分をしっかり抑えています。
SFファンタジーとしての理屈付けもよく出来ていて、
目立つ論理的な破綻がなかったところが好印象でした。
説明は簡潔明瞭で、誰にでも理解しやすいです。

クラークの三法則曰く「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」といいます。
アインシュタインが光子を実証するまでは、マクスウェルを始めとした多くの物理学者が
「光は電磁波の振動によるもの」「物質のみが量子力学の法則に従う」と考え、
「光が量子化される」という概念を受け入れるまで時間がかかったように。
ロボット工学三原則もちゃんと組み込まれていました。

こまごまとした説明は「ワード」に放り込んだのも良いですね。
難しすぎる説明文をだらだらと繰り広げたり、長い戦闘描写などで
物語のテンポが落ちることもなく、演出とのさじ加減がちょうど良かったです。
キャラクターも、メインキャラだけでなくモブキャラにも人間味があって好感触でした。
カーマインが格好良い。

主人公も可愛いです。純粋無垢ですが、単なる良い子ちゃんではなく、
人としての感情表現がちゃんと示されていて、
共感できるのも好ましく思いました。

もう一点、AIを搭載していない無機的な機械たちと
心が通うような描写があるのも好きです。
なにげに人外との絆の描写が多いように思えます。

余談ですが、無機的な機械との絆という意味では
「戦闘妖精・雪風」がお薦めです。

以下ネタバレ感想。
イヴ
主人公のイヴがとっても可愛いので声が欲しかったです。
ネオスフィア内で穏やかな日常を過ごし、信頼関係と恋心を
育んでいくのもとても良かったと思います。
だからこそ中盤以降の展開が輝く。

そして、【死】を知らないイヴが、序盤で【死】に触れる展開はとても良かった。
イヴの感情変化に説得力がありました。
その後も、【死】がイヴの運命を変えていく流れは引きつけられました。
彼女の「みんなわたしの【し】が必要なんだ」は胸が痛かった。
過去のイヴが、嫌というほど死に触れているのも皮肉ですね。
死ぬほど【死】に焦がれていたのについに果たされず、
【死】を望まなくなったら揃って【し】を求められるようになるのが、
運命の因果を感じさせました。

そして物語の結末として、【再生】が【死】を超える、というのも
感じ入るものがありました。
単純な【死】の否定ではないところが好ましいです。
生と死を【繰り返す】ことによって、衰退からの再生を謳ったのは、
生と死、両方の肯定でもあったと思います。
再生によって未来を拓く、そうしたメッセージ性にも好印象を抱きました。

過去を知る前にも、居住地での様子で、シュドとは感覚的な部分で
理解しあえるようなのでお似合いだと思いました。
いろいろ手伝いたいイヴに、シュドが「君は自由行動で」と言ったときは
思わず笑ってしまった。かわいい。

彼女がロウに捕まったときに見せる激情は痛々しい。
しかし納得感もありました。頭に来て当然だと思います。
あの悲痛な叫びの後に、過去のイヴの記憶を見せられるのも悲しい。
希望を叫んだイヴの存在の不確かさと、
絶望に沈んだイヴの対比が胸に迫りました。

また、イヴについては、人をその人たらしめているものは何なのか?
ということを考えさせられました。

「細胞記憶」という言葉があります。
臓器移植の記憶転移といった事例や、セントラルドグマの流れなど
細胞記憶については未解明な部分が多いですが、
細胞に記憶は蓄積されるのではないか、という考えは昔からありました。

※ちなみに近年、神経細胞は単一で記憶の保持が可能であることが明らかになっています。ソース

過去イヴで記憶のオーバーフローが起こったのは、
良かれと思ってクレイドルが行った拘束による強いストレスによって
コルチゾールの分泌量が増幅し、それによって海馬が萎縮してしまったのが
原因と推察できます。
海馬の刺激には知的活動に加え軽い運動が有効ですので、墓を作ってる間に
過去イヴが正気を保てたのは運動してたおかげでもあるのですね。
しかし一箇所でひたすら拘束となると、脳への刺激が著しく低下してしまいます。
けれどもナノマシンによって身体機能は回復されてしまう。
描写からすると、身体機能が回復しても海馬は萎縮したままのように思えます。
とりあえず生きてはいる、という状態です。
ナノマシンがこのサイクルをより悪化させてしまったように思いました。

今回、本編でイヴが移されたのは【脳幹】であるとされています。
脳幹は生命活動を司る部位で、移されたのがそこだけとなると、
過去イヴを構成する要素は限りなく低い状態だったと考えられる。
細胞記憶に、イヴの人格を構成する記憶があったとしても、なかったとしても。
ニュアンスからしても、記憶が保持される大脳皮質を始め、海馬も
移植されなかったはずです。たぶん。本文からはそういう印象を受けました。

となると、イヴはもはや、過去イヴを元にした新たな生命体と
考えたほうが自然だと思います。

それにしても脳移植手術とアンドロイド素体の生成が
クレイドルだけで可能となると、シュドの病気ぐらい
治せるんじゃねえかという気がしてならないですね。
突っ込むだけ野暮ではありますし、大気汚染が原因である以上、
根本的な解決にならないのは確かですが。

「オリジナル素体の自分がこうだった」と言われても、
イヴにはイヴの人生があった。
ささやかな喜びや幸福があった。そして落胆や悲しみもあったはず。
それがただただ揺りかごでまどろむようなものだったとしても。
でも、そうして生きてきたイヴを全否定されるような展開は
辛いですし、イヴが激高するのも無理はないと思います。

しかし、捕まったときにはナノマシンで攻撃すりゃあ良かったのでは、と思ってしまった。
イヴが動揺してて、咄嗟に力を使うことが出来なかったという解釈は
充分に可能ではあるのですが。彼女は性格的にも戦闘向きじゃないですし。

作品中で描かれる機械同士の連携には心ときめくものがありました。
AIも含めて。

創世記モチーフを考えると、ティアブレイドは【イヴ】が
【アダム】を選ぶ物語でもあるといえそうです。

悲劇エンドは悲惨でした。
あの状態になっても生きなければならないのがより厳しいですね。
イヴはいつまで正気を保てるのか……。
なまじ人間と同じように感情を持つのがより悲惨です。
ネオスフィアでクレイドルに護られて、善意にだけ触れていきてきた
イヴが、果たして耐えられるのかと思うと……。
さまざまな偏見や悪意から護られてきたのは過去イヴも同様ではあるので、
やがて待っているのは過去イヴと同じ末路ではないのかと考えてしまう。
心に突き刺さるエンディングでした。


シュド
序盤、結果的に弟を置き去りにしてしまったので
安否が気になってましたが生きてたようで安心しました。
陽動がうまくいってなにより。

よく考えれば見た目通りの存在であるとは限らないので、
もろもろの裏設定は意外性があって驚かされました。
ちゃんと伏線を張っていた丁寧さも含めて非常にポイント高い。
赤ちゃん工場のようなものを想定していたのですが、
新鮮味があってとても良かったです。

性格も、まっすぐで義理人情に厚く、決断力もあるところが好きです。
特に襲撃されたときの判断が早いのが良いですね。
「生きたい」という気持ちが、足かせになってしまうのも辛い。
あの流れでは、「生きたい」と考えるのが人情だと思いますよ。
しかしそのせいでシュドが挫折を味わうのは、物語全体のテーマ性とも
合致していて燃える流れでした。

……とはいえ白状すると、自分はシュドが病気になったとき、
「治療ポッドに放り込めばいいじゃん」と咄嗟に考えてしまって
うまく物語に没入できなかったのが反省点です。
地上の浄化と引き換えにするものが明らかになったときも、
「弟とシュドだけとりあえず治療ポッドに放り込めばいいのでは」と
思ってしまい……メインヒーローにはなれねえなとつくづく思いました。
いえ、この先メインヒーローになる予定は別にないのですが。
大人になると心が汚れてしまって嫌ですね。

選択には結果が伴います。
「地上の浄化」という壮大な目的を成し遂げる。
しかしそのために、見返りになにが必要となるかについて
誰も触れなかったのは……、たぶん考えたくなかったのかなあと思いました。
無意識のうちに考えるのを避けたといいますか。
だって対価を考えると、どう考えてもただじゃ済まない感じですから。
シュドとアタルヴァは、「古代人はすごい」という無邪気な認識が
まだ残ってたのかもしれないけれど。

不幸だと思ったものが、後になってことごとく役に立つのは
シュドの面白いところですね。

脳幹があるイヴと、脳だけが生体コンピュータであるシュドという、
お互いが持たないものを持つ者同士が出逢って恋に落ちる流れは
どこか美しさがあって好きです。

【死】よりも辛いこと。
それが、半身を失うこと、つまるところ【孤独】という展開も
シンプルでありながら感じ入るものがありました。
かつてイヴに生きる目的を与えられたシュドが、
生きる目的をイヴに返すことといい、シュドとイヴは【対】であることが
強調されていたように思います。

いや、本来はロウなのかもしれませんが……ロウルートをやってないので
まだ分からないけど、過去イヴがあの道を選んだのは、どう見ても
恋愛感情ではなく同情によるもののように見えてしまうので……。
その後も、ロウを望んだのは、ロウの人柄が恋しいという感じには見えず……。

終盤の展開で特に熱かったのは、なんといってもロウが襲ってきたときに、
それを阻むようにフォウの武器が突き刺さるシーン。
非常に盛り上がりました。それにショックを受けるロウも良かった。


クレイドル
「食事にケチをつけるくらいです。手土産の一つくらい〜」には笑いました。
気持ちは分からんでもない。
クレイドルについては後で詳細が語られるのかもしれませんが、
ネオスフィアの管理AIに「クレイドル」と名づけたのは
やはりアイナさんなのでしょうか。
なんというか、彼女がネオスフィアの人たち、そして指導者の二人を
管理することをどのように考えていたかが垣間見えてフフッてなります。
その意味で、アイナさんは本編でほんとにいろいろと先を見越して
しかけを入れていたのが、親心を感じさせました。
クレイドルが矛盾する命令にショートする描写は胸が痛んだ。
あそこでシュドたちが、「裏切った」と怒るのが、クレイドルを
機械ではなく仲間だと感じていたなによりの証拠だと感じられました。


他のキャラについてはそれぞれの感想で。
コメント
コメントする








    

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>

応援中

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

全年齢乙女ゲーム「ミッドナイト・ライブラリ」

全年齢乙女ゲーム「ミッドナイト・ライブラリ」

全年齢乙女ゲーム「ミッドナイト・ライブラリ」

18禁BLゲーム「NO,THANK YOU!!!」応援バナーキャンペーン実施中!


RECOMMEND

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM