悠久のティアブレイド -Lost Chronicle- ヤジュル 感想

  • 2017.02.25 Saturday
  • 03:12
悠久のティアブレイド -Lost Chronicle- - PS Vita


ヤジュルルートの感想です。

彼のルートは濃かったです。
なによりヤジュルとイヴの心理描写が非常に丁寧で、好感が持てました。
ヤジュルルートをプレイできただけでも買ったかいはあった。

シュド&アタルヴァとはまた異なる展開で面白かったです。

以下ネタバレ感想。
ヤジュルという名も元ネタはヤジュル・ヴェーダとして、
ヴェーダ集のひとつなのですよね。
これはヤジュルもまた道具のひとつであることの示唆、
そして黒ヤジュル・ヴェーダ、白ヤジュル・ヴェーダとあるのが
ヤジュルの二面性を表していて面白い。

ヤジュルルートは、シュド&アタルヴァルートで彼の正体を知った上でのプレイでしたので
序盤のほのぼの展開は見ていて切ないものがありました。
ユニオンの暗部が描かれるのも良かった。
ところでヤジュルのくれたナイフってどこかで伏線回収がされるのでしょうか。

ヤジュルは序盤の「嘘ぉ!?」「ドジにも程があるでしょ!?」が好きです。
脳内ボイスコレクションに思わず保存。
そして、ルート終了後になぜこの台詞が好きなのかと考えてみて、理由が分かりました。

楽しそうなんですよ。ヤジュルが。

この台詞だけ取ってみても分かるのですが、このツッコミの基盤となる感情に、
憂いのようなものが見られない。
中の人も生き生きと演じてらして、それが余計に後半のヤジュルとの対比、
そしてヤジュルの人生が落とす影を浮かび上がらせるように思いました。

アタルヴァの「滅びたのはこいつのせいかもな」に思わず真顔になったのも良い思い出。
(しかもアタルヴァはこれを二回も言う)

テントでの会話でも、どう考えても演技をする上で、敢えて二人を
起こしてまでする必要のあった会話とも思えず。
単純にヤジュルが浮かれていたことが分かって和みました。
シュドの「真っ白なんだ!」の力の入れ具合よ……


続いてお風呂イベントについて。
このお風呂イベントは、ヤジュルのちゃっかり感の表れ、
そしてわくわく萌えイベントのひとつだろうとすごい軽く考えてました。

ですがルート終了後、このイベントが「兵器という道具を憩いのために使用する」ものだったことに
気づいておののきました。
軽く見ていたのはこちらのほうだった。

この一見してただの萌えイベントに見えたものこそが、ヤジュルというキャラクターの象徴でもあり、
彼にとって大きな意味を持つものだった。
その事実を悟って深く反省すると共に、制作者の愛を感じます。
このイベントでヤジュルは、「兵器だからって戦い以外に使っちゃいけないわけじゃない」と
いうようなことを言います。

ヤジュルにとって、兵器という道具を、殺し以外の用途に使うことが、
どれほどの意味を持っていたのか。

他の生き方を選ぶことは出来なかったヤジュル。
ヤジュルがこれを恐らく無意識にやっていたのが、彼の真の望みを
かいま見せているように思われて感慨深い。


丘の上でのイベントは、スチルが美しくてお気に入り。
ヤジュルがこうしたイベントを通して、「自分はこういう人間だったのか」
安堵したり落胆したりするさまがとても丁寧で好印象でした。

記憶のないヤジュルにとっては、自分の咄嗟の行動からしか、
自分という存在を知ることができない。

「自分は一体何者なのか」。
これはつまり、特定の状況に対してどんな行動を取るのか、
どんな気持ちを抱くのか、どんな価値観を持つのか、という意味でもあります。
それは結局のところ、他人を知ろうとするのとよく似ている。
自分を客観視しようと努めればなおさら。

ただ単にヤジュルが記憶を思い出したり他人から解説されたりするだけでなく、
一つ一つの出来事からヤジュルが自分を見ているのが伝わってくるしかけは
とても良かったと思います。
自分が何者であるのかを知るため、他者の存在を通して己を見ようとする。
ヤジュルのそうした振る舞いはとても説得力がありました。

どんなときも、彼はどこかで自分を俯瞰して眺めてるようにも見えて興味深い。
余談ですが、このイベントのイヴが「親交を深める」と言われて想定してるものって、
恐らくはおしゃべりとか、ちょっと進んでもせいぜいボール遊びとかだろうと思うと
微笑ましいですね。

イヴの言葉によって彼が「生きるのは良いこと」という認識を得るのも好感を抱きました。
そして約束を交わす流れも後になって光って、ヤジュルが生きる希望を
持てるようになる流れが自然だと感じます。

イヴの良いところは、彼女の選ぶ言葉が素朴なところです。
単純に可愛いというのはよく分かりますが、その愛らしさが、
言動にも表れているところが好きです。

「道具」としてではなく、「人」として誰かに求められている。
自分の生が、誰かにとって必要とされている。

この実感がなければ、恐らくヤジュルは「道具」の生き方から
逸脱するのが難しいだろうから。
彼が生きることを罪深く感じているままだと、生きる意欲そのものが減退して、
この先も虚無感を抱えたままになってしまいそうですし。


ところで、建設機械たちが人間であるはずの「侵入者」を襲撃し、
解体するために行動できたのは何故なんでしょうか。
最も納得のいく理由は、イヴの命令が「人を殺してはならない」という原則を
凌駕するため、というものです。
そう考えないとつじつまが合わないように感じられます。
となると、これはアイナさんがセーフティとして組み込んだのかもしれません。
その気遣いは仇になったわけですが。


ヤジュルがティアブレイドに嫌われてる演出もニヤニヤしました。
しかしここまで意志のようなものを感じさせるとなると、
ウェポンハンガーの武器たちのように、ティアブレイドにも
誰かの意志が宿ってそうな感じがしますね。
アイナのイヤリングが光る演出とか、伏線回収が待たれます。
意地悪なティアブレイドは可愛い。
まあ、ヤジュルが過去にやったことを思えば、これくらいの嫌がらせは仕方ない。
武器がやっと出てきたと思ったら最も冷静で合理的に考えられそうな騎士の槍、
というのにも納得。根負け感があるのもフフッてなりました。


墓地でのイベントは、なかなかえぐいですね。
これをヤジュルにやらせるという部分も含めて。

私はこのイベントで、ヤジュルはリアリストだという印象を受けました。

目的を達成するためならば手段を問わないというような。
もともとの生い立ちを考えれば、リアリストにしかなれないとは思いますが。

死の象徴である墓地の意味を知り、死者を弔う、というところから
それでは生きている自分は何者なのかとイヴが考え始める描写も素晴らしいです。
また、イヴがヤジュルを知り、ヤジュルとの恋をはぐくむ過程で、
まっさらなイヴが負の感情を学ぶ、という流れは拍手喝采したい。
こうした感情を知らないと、ヤジュルという人も理解できないからです。

そのために、ユーザーの抱くであろう疑問に細かく答えながら、
煉瓦を積み重ねるが如く順番に積み立てていくシナリオ展開はとても好きです。


戦闘後に墓地に戻ってきてヤジュルと話すイベント。
恐らくはときめいたり和んだりするイベントであるはずなのですが、
このイベントを見たとき、とても悲しい気持ちになりました。
ヤジュルの語る夢の無邪気さが切なかった。

自分は、記憶喪失後に表に出る人格は、その人物本来の人格だと考えています。
作品としても、ヤジュルの本来の性格は序盤のヤジュルであることが確定している。

だからこそ、ヤジュルが楽しげに語る夢が、そんな夢を無邪気に笑って言えてしまうところが、
すごく胸が痛かった。
きっと「己の過去を知るヤジュル」にとっては、語るどころか、
そんな夢を想像することすら馬鹿馬鹿しくなるような夢です。
それぐらい、彼にとって遠くにあった夢。
あまりに遠すぎて、望もうとしただけで虚しさに襲われ、
信じようとするたびに却って傷ついてしまいそうな夢。

そうした夢を抱く心や、明るさや優しさを心の奥深くに押し込めていないと
生きてこられなかった、という事実が、ヤジュルの過去の悲しさを物語るようでした。


そういえば、ナノマシンで記憶のオーバーフローはどうあっても起きるものであるようですね。
自分がちょっと勘違いしてたのかもしれない。


ヤジュルが己の過去を知った後のシナリオ展開は盛り上がりました。

丘の上でのイヴと兵士のやり取りで、彼女が「人を殺す重み」を体感する流れも
ヤジュルに向ける気持ちへの変遷と相まって絶妙です。
個人的には、あの一件は「殺人」ではなく「事故」だと思う。


それだけでなく、過去イヴの怒りを自分のものとする一連の流れは高く評価したいです。
イヴは出生の特異さもあって過去イヴと同期できるからこそ、
彼女がヤジュルへの愛を捨てきれない気持ちに説得力が生まれる。

ところでイヴに限らず、気をつけないと他人の怒りをいつのまにか自分の怒りと
勘違いすることは、生きているとままあります。

これは「自分」と「他人」の区別がついていない状態でもあります。
いわゆる「自他区分」というものですね。
ここでイヴが、自他区分から過去イヴと明確に自己分化する展開は心地良い驚きでした。
それによって、イヴが過去イヴとは別の存在であると、はっきり線を引けたのも大きい。

だからこそ、イヴにとってのヤジュルの存在を再定義できる。
その上で、ヤジュルとの関係をどうしていきたいか、ということを考えられる。

イヴが一度は、過去イヴの怒りを自分のものとしたのが彼女の心の動きを
自然なものにしていたと思います。
イヴは文字通り、身体全体で過去イヴの怒りを感じた。
記憶によって過去イヴの絶望をも体感した。

それでも、イヴが自分の生きた時間、長くはあっても起伏のないものだったけど、
けれども確かにイヴがイヴとして生きて、感じたことを大切にしていくのが
とても良かったです。イヴの成長をはっきりと感じました。
イヴが最後までシュドへの友情を忘れなかったのも、とても好感触でした。

余談ですが、このヤジュルとの対決で、最初はバッドエンドまっしぐらでした。
いや、ヤジュルならどうにかするのかな?と思って……つい……。

話を戻します。


さて、次はヤジュルについて。
道具として望まれながらも人として生きることを許され、
人として生きながらも籠の鳥、という矛盾を抱えていたアタルヴァ。
そんなアタルヴァとは異なり、ヤジュルは人でありながら
道具として生きることになります。
己の肉体を徐々に機械化していくところが象徴的です。
考えてみれば今までの攻略対象は全員、何者かに生き方を規定されてるんですね……。
過去のシュドも、(恐らくは戦争の人手不足により)最初から整備班として
配属されるために生み出されたわけで……。
そもそも擬似人類は生き方を規定されて生まれてくる存在だったはず。
シュドはその後みずからの意志で人として生きることを選択した、という違いはありますが。
シュドという名の元ネタがヴェーダ集に名を連ねたものではないのは、
恐らくは彼が自分で人として生きることを決意し、実行してるからかもしれない。

ヤジュル対ギル&アイナ戦は良かった。アイナが格好良かったし、
専用立ち絵が用意されていたのが熱かった。
個人的には、ヤジュル対ギル&アイナ戦で死んでいる時点で、ヤジュルの人生は
そこで終了したものだとしてもいいと思っています。
それはそれで決着がついたわけですし、なにより戦時中でした。
庇ったがゆえとはいえ、ギルが騎士団長である以上、油断があったことは間違いない。

だからウェポンハンガーでの会話で、先代様がその辺りを認識した発言をしたのは
とても好ましく感じました。
だって神殿騎士団だって敵国だろうと人を殺してる点では変わらないわけですし。
その敵の一人一人にだって仲間や恋人や家族がいて、
例えいなかったとしても、生きた過去があったんだから。


ヤジュルは、過去イヴを「大嫌い」だと言います。
この、「大嫌い」という感情が生まれたことそのものが、
過去イヴがヤジュルの心を大きく揺さぶった、という意味でもある。
彼が真の意味で心を抑えられたのなら、もっと無機的になるはずだからです。
だけどそうではなく、「大嫌い」となると、これは一種の執着だと感じます。

その理由が、「なにも知らないから」というのに、思わず笑ってしまった。
いや馬鹿にしてるのではなく、微笑ましいという意味で。

なぜなら「なにも知らないくせに」というのは、
「知ってほしい」という気持ちの裏返しだからです。

だって、例えばアルカディアがヤジュルの過去を知ったとして、彼は心を動かすでしょうか?
「そうですか」で終了しそうじゃないですか?
侮蔑すらなく、真面目になにも感じなさそうな印象を受けます。
恐らく「鳥が飛んだ」みたいに、事象として認識した、というだけで終わる。
(アルカディアに人間的感情や共感がない、という前提として)

アルカディアに自身の過去を語って、なにかしらの感情を引き出そうとする愚かさを、
ヤジュルなら分かるはず。
なにが言いたいかと言うと、相手が「理解/共感してくれるだろう」という期待がなければ
最初から知ってほしい、理解してほしいとすら考えないものです。

だから、ヤジュルのそうした痛ましい過去を、過去イヴなら
共感してくれるのではないか、という期待があるからこそ、
「なにも知らないくせに」という言葉が飛び出す。
では過去イヴがヤジュルの過去を知ったらどうなるのか、ということにつながるためです。

ヤジュルのために心を動かす、というのはヤジュルを「人」としてだけでなく、
ヤジュルの痛みを自分のものとして考えられる人である必要があります。
それは他ならぬ、ヤジュルを「(自分と同じ)意志のある人間」として
見ていることの証拠でもあり。
ヤジュルがイヴへの愛を抱くにあたり、とても納得ができました。

ヤジュルとイヴの立場が逆転して、イヴが明確に
主体性をもって行動するのも良い。心から応援したくなりました。

ヤジュルは過去を手に入れるために、すべての人類の未来を奪ったといえます。
それはさながら、世界への復讐のようです。
人間であるヤジュルが、道具として存在することしか許さなかった世界への。
なのに、その生き様をなによりも深く知るのが
人類を滅ぼすために生み出されたアルカディア、というのもなんともいえない。

道具として名も残せずに使い捨てられるのが嫌で、
人として生きた証を刻みつけたかったのに、
それを知るのは人ではない、という皮肉。


イヴは、ヤジュルの――いや、彼だけでなく、「戦争」という人の罪から生み出された存在です。
さながら、汚泥から生まれる蓮のように。
この辺りは煩悩即菩提を感じさせます。
つまり、イヴが負の感情を学んだことからして、人間の負の側面から
愛が生み出されるという、作品としてのメッセージのようにも思われました。

国同士の戦争である以上、そもそもの戦争責任を施政者でもない
実行部隊の一人であるヤジュルが、全てを背負うべきではないですし、
背負いきれるものでもないと思います。

ヤジュルにとって、絶望的で人類を呪って生み出された過去。

でもそこから、この世の罪を知らぬものである純真無垢なイヴが生まれ、
ヤジュルに愛を抱くという図は美しい。
イヴを生み出したものが人間ではないところも含めて。
これは人の罪も、やがてなにか価値あるものを生み出すという暗喩のようにも見える。

そのイヴが、無知なままではなく、人間として愛を知り、
負の感情を知り、学びを得て自我を確立し、
裏切られてもなお愛を与えるというのは、愛の本質に迫るものがあると思う。
創世記モチーフで考えるとなると、ヤジュルは知恵の実を与える蛇ポジションでしょうか。
この場合、己の過去を知るヤジュルが蛇、記憶のないヤジュルがアダムですね。
知恵の実は善悪の知識を与えるものであります。


その後の最終決戦も良かったです。
過去イヴの抱いた憎悪との対峙は、ヤジュルが過去ではなく、
未来に向けて歩み出したときに立ちはだかる壁として象徴的です。
ヤジュルだけでなく、イヴも過去イヴの怒りに耐えて自我を保つ、というのが良いですね。

しかも、図らずもここで夢を叶えた上に、世界を救う英雄になるのも憎い。

ヤジュルとしては過去を精算しただけ、という感覚かもしれません。
でもヤジュルは一度死んで生を受け、更にもう一度再構成されるので、
もう三千年前のヤジュルとは似て非なる存在だと認識しました。
死んで生まれ直すところも、一貫してテーマとなっている「再生」を思わせます。
これはアタルヴァルートでも顕著でしたね。

余談ですが、ウェポンハンガーでの会話で、意識体なのに
騎士同士で殴れるところに妙な感慨を覚えました。

ところで一周目では悲劇エンドを迎えてしまったのですが、
自分はこの悲劇エンドもとても好きです。
これはこれで美しさがある。
「どこまで勝手な奴なんだ」という台詞も、
中の人の演技も素晴らしくて胸を衝かれる。
過去の罪と、それが生み出した憎悪の中に宿る愛と共に生きる。
姿形は違えど、ヤジュルとイヴらしい愛のかたちだと感じました。

考えてみれば、ヤジュルは自分が一因となって生み出した世界を、
目にしないままなのですね。
あれほど世界に爪痕を残そう、過去を残そうと足掻いたのに
それによって苦しむ人をほとんど見ずに済んだのは、
ヤジュルにとって大きな救いだと思いました。

とはいえ、浄化された世界でもかつての面影はかいま見えるわけで、
ヤジュルは時折、自分の罪を思い出さずにはいられないでしょうが。

ハッピーエンドではみんなが生き生きしてて良かったです。
アタルヴァと幼女の会話には和んだ。

続いてはいよいよロウです。
かなり期待してたので、満足いく仕上がりになってるといいなあ。
コメント
コメントする








    

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< June 2017 >>

応援中

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

乙女ゲーム「白魔女と運命の恋」

全年齢乙女ゲーム「ミッドナイト・ライブラリ」

全年齢乙女ゲーム「ミッドナイト・ライブラリ」

全年齢乙女ゲーム「ミッドナイト・ライブラリ」

18禁BLゲーム「NO,THANK YOU!!!」応援バナーキャンペーン実施中!

無現堂


RECOMMEND

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM