Aくんと祭のむこう 感想

  • 2017.09.30 Saturday
  • 00:59


こちらはリクエストボックスよりおすすめいただきました。ありがとうございます!

ブロマンスホラーファンタジーノベル。BLではありません。
選択肢はなく、一本道で進みます。

いわゆる立ち絵というものはないのですが、イラストはところどころに
挿入されて、そのイラストが雰囲気に合っていてとても良かったです。
テキストも読みやすいです。BGMの選曲センスも良いですね。
なにより単純にシナリオが面白かった。
全体的な構成としてもよくまとまっており、伏線の回収も丁寧でした。

四章はラストの引きと演出が非常に良かったです。
エンディング間際は怖くてハラハラしましたし、読後感も爽やかでした。
どの章も面白いので甲乙つけがたいのですが、
やはり五章と六章はインパクトがあります。

ちゃんとホラーもやっていますが、幻想ファンタジーでもあって、
そのさじ加減も、シリアスとほのぼの、そして切なさとの緩急が
効いていて読みやすいです。

この作品は断然ネタバレなしでプレイされることを推奨します。

以下ネタバレ感想。
「祭り」の雰囲気とさまざまな怪異のキャラクターが魅力的でした。
特に雛(ひよこ)屋さんはいい味出してる。
カラーひよこが出てくると急にファンシーになって気持ちが和みました。

エンディングはとても切なかったけど、同時にタイトルに沿う内容にもなっていて、
物語のまとめ方として美しさがありました。

怪異の謎を一部であれ解き明かしてしまうことは、同時に
怪異に近しくなること、という提示は考えれば理に適っていました。

文化祭週間中は、新が結構フランクに逢魔が時の世界に出入りできるのも、
伏線の回収とエンディングも合わせると、切なくも納得できるものでもありました。



逢坂 新

主人公らしかったです。イラスト見ると、想像より大人しそうな外見でした。
新は誰も傷つけることができなくて、正確には誰かを傷つけてまで
自分を優先することのできない優しさと人間性が、
あの結末につながったのは皮肉でもあります。

ある意味で、人間的であるということは自己のために他者を切り捨てられる精神を
指しているのかもしれない。それを象徴するのがあの丸眼鏡でもあり。
彼はあの女の子を怪異ではなく完全に友だち、仲間として見てしまっていて、
誰かのために自分を省みず手を差し伸べられることは英雄的な行いであるからこそ、
どこか非人間的でもあり、だからこそあのエンディングにならざるを得なかったのだなと思いました。

そして、始のことを考えれば、すっぱり切り捨てるしかないのも理解できます。

四章で、「怪異に親しむほどに怪異に近づく」と丁寧に提示されたからこそ、
新が人間であることを望みながらも、人間的な情ゆえに自分の行く末を選んだ結末を
受け入れやすくなる土壌が整ったと思いました。

非常に切ないですが、ある意味で生まれてからこれまで新を人間たらしめていたのは
母ではなく兄の始であったわけで、その始に命を返す流れは、物悲しくも美しさがありました。



千隼

ほのぼのとしていて良い話でした。
黒うさぎさんがその後の章でちょこちょこ出てきて可愛い。

分かたれてしまったものが再びめぐり逢う二章は今後の展開を暗示してもいて、
新が女の子に執着するがゆえに、ついに同じものになるのは、
永遠に二人でお祭りを楽しめるようになる事実をも表します。
だからこそ、女の子にとってはある意味で救いでもあるのかもしれないと思いました。

彼女は寂しさから人に害を及ぼす怪異になりつつあったので、
新の選択は始だけでなく女の子を救えたのかもしれません。





彼は良い奴ですね。いじめられた子は遼を恨んではいないと思います。
まさか死人が出るとは思わなかったのでびっくりしました。
自分のやったことが返ってきただけなので、自業自得ではあります。
究極に利己的な丸眼鏡が、自身の寂しさを紛らわすために誰かを飲み込む
同じように利己的な怪異に命を奪われたのは興味深く感じました。

考えてみればここで先輩が新のために後始末をしてくれたのも感慨深い。

この章は「護れなかった後悔」を強く示唆する章でもあります。
同時に「誰かを護りたいと思う気持ち」と、
「生きるために他の誰かを蹴落とすことは肯定されるべきか」という問いも
投げかけていて、終章を考えるとなんともいえない。



吉田

エンディング間際が怖かったです。
これで助かった、と安心したところでおもむろに明らかになる真相に
ハラハラしました。吉田が怪異に魅了されていくさまが丁寧に描かれています。
吉田には司がいて、だからこそ彼は土壇場で彼岸に行かずに済んだけど、
考えてみれば新には司のように、此岸へつなぎとめてくれる誰かがいません。
それを思うと、吉田に司がいたのは、得難い奇跡だったのだなと思いました。




お祭りではしゃぐ仁の姿は胸が痛い。
人生を通して、仁が最も楽しいと感じた瞬間が彼岸にあるお祭りに行ったときだとしたら、
いくら止めても彼が此岸にいられないのは仕方ないのかもしれません。

「そういう環境で生まれ育てば、そういう匂いが染みつく。
 その匂いでよってくるのは、そういう出来事ばっかりだ」


とても哀しい台詞なのですが、非常に心に残っています。
「そういう匂い」は、異なる匂いを持つ誰かや環境によって中和するしかないので、
吉田にとっての司のような人が仁にも必要だったのですが、
仁が理解者としたのは同じ匂いを持つ新だった、というのがなんともいえません。

考えてみれば新の大事な人はみんな彼岸にいて、お互いの理解者で友人たちの中でも
最も近しかった仁ですら彼岸へと駆けて行ってしまうのが切ない。
新を此岸に強く引き止めるものがいない。

仁が最期の最期で嘘を吐いて、新が激昂するも、速攻で忘れてしまうのは
因果を感じさせました。ぎりぎりで新を引き止めたのが先輩であることも切ないし、
しかも彼岸へ行くことを強く拒絶した新が、最終的に新が此岸にいることを強く望んだ
唯一の人のために彼岸に行ってしまうのは因果であり、とてつもない皮肉ですね。

仁が成り代わりの怪異と入れ替わるように彼岸に行ってしまうのが切なかったです。
そして仁が、「仁愛」という「他人に対する優しさや思いやり」といった意味を持つ
名の彼が、「鬼」になってしまうのは象徴的でした。

それでも、思えば仁はなんだかんだ新に始を救う時間をくれた存在でもあるため、
ひねくれたかたちで優しさを見せたともいえます。

彼があれだけ彼岸にあるお祭りに行くことにこだわったのは、
どう考えても「遊園地に行く」と行って置き去りにした母と妹の影響が
強い気がしました。仁を置いていったのは最後の親心だったのかもしれませんが、
此岸ではない彼岸を「楽しい場所」と結びつけた挙句、置き去りにしたのは
間接的に死へと誘導しているのと変わりないように思いました。


先輩

彼は自分の在り方を失った後も、誰かを護ることを自分に課していたのだと思うと
ぐっとくるものがあります。

人形のように愛される状況を強いられた彼が、初めてみずから選び、
生きがいを見い出したものが「誰かを護る」「世話をする」ことというのは
理解できました。つまりは、主体性を発揮できる状況だから。
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