灰の森 感想

  • 2018.07.17 Tuesday
  • 22:32
茶番nu

こちらはWEB拍手リクエストボックスよりおすすめいただきました。ありがとうございます!

18禁BLファンタジーADV。
人体実験を行う謎の地下研究施設から実験体五人が逃亡を図ります。

攻略順はナバト→ヒューリ→デミテラ→バハン。

イラストは世界観によく合っていて、キャラに愛着が湧きました。
異形同士が紡ぐ絆をテーマにしたシナリオは、ときに各キャラクターの在り方や
価値観がぶつかり合い、あるいは折り合いながら歩んでいく道筋が描かれています。
グッドエンドも良いですが、バッドエンドにも力が入っていて、
それぞれの運命が交錯していくさまに心を動かされました。

以下ネタバレ感想。
ナバト
気質からして最も人間から遠いナバト。
全体的に同族ゆえの気安さと安心感がありました。
人喰いを理解するにも最初にプレイすると良いルートかもしれません。

人喰いの在り方として、「人が好きだからこそ喰らってしまう」というのは
どこか示唆的だなと思いました。人喰いは相性の良い人間に巡り合わなければ
灰の木になって消える運命という儚さにも思うところがあります。

一緒にいたいという気持ちが高じて好きな人との同一化を望むようになり、
やがてそれは人間になりたいという願いに変化していき、最終的には
好きだった人間の身体を乗っ取ってしまい再び孤独になる、という在り方が切ない。

ナバトはカイゼルを助けてはくれるけど、甘やかしはしないのも性格が出ててよかったです。
これはみずから依り代を見つけるのが宿命である人喰いらしい気質なのかもしれません。

イシュニダを愛するがゆえに人間の敵となってしまった『彼女』と、
人間を愛するがゆえに人喰いの敵となることを選ぶカイゼル、という対比も印象的。
また、バッドエンドで強すぎる執着がゆえに、自分の名よりナバトの名を覚えてしまって
ナバトと名乗るカイゼルも、イシュニダももとは『彼女』の名だったのでは、と暗に示していて
興味深かったです。

好きなのに壊してしまう、そうした人喰いらしさを強く感じるルートでした。
ロイと孤独を慰め合うエンディングもまた良し。


ヒューリ

愛したものは憎んでいた異形であり仇だった、というドラマティックな
ヒューリルート。実際に大切な家族を人喰いに喰われてしまった人が
攻略対象になるのはとても良かったと思います。

好きだから壊してしまう人喰いであるカイゼルが、ヒューリのために
憎まれ役を買って出るのは頷けるものがあります。
憎しみの矛先を自分に向けて怒りを煽ることでしか、ヒューリの心を壊さない方法が
わからない、そうした不器用さも物悲しくて良いです。

人喰いとしての運命を無意識的に選んでしまうと、ヒューリが復讐を果たし、
復讐を果たして憎悪を昇華したその後に愛する、というのも切ない。

人間としての運命を選ぶと、ヒューリの心に一層迫る展開になるのも好きです。
生きていると自分の選択が思わぬ結果を生むこともあって、悪者がいればいいのに
それもいなくて、ただただ自分の選択の結果を直視するしかなくて、
苦しむヒューリの姿が心に残りました。
楽な道を提示するカイゼルはヒューリを思いやってのことなのですが、
好きだから壊してしまう人喰いにとって、執着した相手に壊される、というのは
ある意味で最大の愛情表現なのかもしれません。

あとヒューリルートではディニとノーダスを助けてあげられるのが嬉しい。


デミテラ

人間らしい感情の変化と葛藤が際立ったヒューリルートに対して、
デミテラは一癖ある人なので、デミテラを信じる気持ちを
試されるような場面が多かったです。

デミテラは足が弱いことでかなり屈折した気持ちを抱いていて、
そうした心情の表現が地に足の着いたものだったと思います。
人当たりが良さそうで最も強く線を引いてるのもデミテラだったりしますし。

目的のために人喰いを利用しようとするデミテラが、
カイゼルに傾倒していくのが伺えました。
施設側の事情が一気に明らかになるので、真相ルートっぽいですね。

デミテラルートではロイを喰らわずに共存できて、読後感が爽やかでした。

大切なものを救うために大切なものを利用しなければならない、
そうした苦悩が描かれて見応えがあります。

ネリはある意味でデミテラにとって己の無力さの象徴でもあって、
だからこそ救いたいという気持ちもひときわ強いのだろうなと思います。
まあ、異なる事情であったとしても、姉の子であればデミテラは最善を尽くしそうですが。

バッドエンドといい、「みずからの手で誰かを救うことへの執着」が
強く感じられたルートでした。
それはデミテラが、己の無力さを知っているからかもしれません。

施設が暴走したのは、もとは灰の森の暴走が理由だと考えると、
どちらも生存欲のために自分以外のものを喰い物にしようとする欲から
発祥しているわけであって、そうした描き方もバランスが取れていました。

お互いに動物である以上、生存競争が発生するのは仕方のないことなのかもしれないけど。


バハン

コージュとバハンのねじり曲がってどうにもならなくなってしまった関係が
物悲しさを誘いました。
コージュには文字通り恩を仇で返されてしまうのですが、
最初は弟を護るために悪ぶっていたものが、いつしか本当に
クズそのものな言動を取るようになってしまう、言動が人となりを決定づけるところが
またなんともいえない。
「弟のため」という理想はいつしか「保身のため」にすり替わり、
コージュは強きに媚びへつらい弱きを喰い物にするようになってしまいます。

生き延びたものの人の枠を外れた力を手に入れてしまったバハンと、
弟を見捨て保身に徹し最後まで卑小な人間でしかいられないコージュという
対比も印象的です。

バハンは怪物然とした見た目に苦悩するのですが、心優しく仲間想いで、
人間的な良心を持っています。
コージュは確かに人間的な見た目で周囲に警戒心を抱かせないけど、
恩を仇で返す鬼畜の所業を平然とやってのける。
それでも命令する側にはなれず、あくまでも子分でしかいられない卑小さが、
余計にバハンの力強さとの差を浮き彫りにしていました。

『怪物』の描き方が面白かったです。

バハンはとっても優しく、エンディングでは異形の二人がひっそりと
暮らしている様子が伺えて良かったです。
逆にカイゼルがバハンを喰らってしまうと、『怪物』として討伐されてしまう
エンディングは、人間とはなにを以て人間であるのかを示唆するようでした。

カイゼルがロイに戻るエンディングでは、『人間的な心』を封印して
『(道具としての)力』に徹するバハンと、
生きるために『ロイ』を封印して『カイゼル』になるロイと、
どちらもお互いにとって最も大切ななにかを差し出し合って共生する関係で、
情はなくても役割があり、希望はなくても絶望もないという、
退廃的な二人が興味深かったです。

たくさんのものを諦めてきたバハンの心情描写は切なく、
そのうえでなにを残すかを選ぶシナリオがとても良かった。

バハンルートではこの一文が印象的でした。

希望なんて持っていたら、叶わない現実に絶望してしまう。

異形でありながら人間に憧れ、人間になったカイゼルと、
人間でありながら人の手によって異形となったバハン。

対比が活きたルートでした。

総合的に見ても楽しかったです。
人間と異形、その狭間で振り子のように揺れるキャラクター達が魅力的な作品でした。
コメント
この作品、大大大好きです。取り上げて下さってありがとうございます。カイゼルがルートによって別人のように性格が変わるのも「人喰い」としての性なのでしょうか?バハンルートが一番切なくて心に迫りました。ナバトルートは同族ゆえに他のルートとは違う感じ。デミテラルートのグッドエンドは大団円という感じ。ヒューリルートが一番BLの王道らしい。自分はバハンルートのの二人がひっそり寄り添って暮らすエンドが一番好きです。作者様のブログも好きです。ロイとカイゼルはどちらも男前です!
  • nobara
  • 2018/07/18 4:50 PM
楽しんでいただけてなによりです!カイゼルの印象がキャラによって変わるのは、攻略対象の影響かもしれません。「人間になりたい」という気持ちが強いからか、無意識的に真似ている部分もあるのかもしれない、と思いました。それぞれのエンディングも雰囲気が違ってとても良かったですね!私もバハンルートの静かなエンディングはお気に入りです。ロイも魅力的なキャラでした…!
  • 大樹@管理人
  • 2018/07/18 11:32 PM
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